「お酒は鍛えて強くなった」と思っている人は要注意です。飲むと顔が赤くなるタイプの人は、もともとはアルコールに弱く、「鍛えて強くなった」としても、飲み続けることで病気に関するリスクが上がってしまうのです。あなたはどのタイプでしょうか?

飲み会で盛り上がるネタの定番は「健康診断」

 忘年会で確実に盛り上がる話のネタと言えば何でしょうか?

 若いころは「恋バナ」だったかもしれませんが、アラフィフともなると、鉄板は「健康診断の結果」です。

 尿酸値、γ-GTP、ALT、血糖値、コレステロール……。

 「オレのほうが数値が悪い!」などと不健康自慢が始まったりすることもあるでしょう。

 健康診断の結果と同じくらい盛り上がることウケアイなのが、お酒にまつわるウンチク・雑学のたぐいです。

 なかでも、よく話題に上るのが「お酒を飲んで顔が赤くなる人、ならない人の違いは何か?」について。それでは拙著『マンガでわかる酒好き医師が教える最高の飲み方』から、解説を引用しましょう。

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顔が赤くなるのは「アセトアルデヒド」が原因

 お酒を飲んで顔が赤くなる人は、お酒にあまり強くない人。お酒を飲んでも顔が赤くならないのは、お酒に強い人。そんなイメージがあると思います。

 赤くなるのは、体内でアルコールが代謝されるときにできる「アセトアルデヒド」の作用で、顔などの毛細血管が拡張されるからです。ただし、毛細血管への反応は個人差があるので、まれに顔が赤くならないけれどもお酒に弱い人もいるそうなので注意しましょう。

 さて、このアセトアルデヒドは人体にとって有害で、交感神経を刺激し、脈拍と血圧を上げます。これを分解する酵素を「アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)」というのですが、その酵素の活性によって、顔が赤くなる、ならないが決まるのです。

 酵素が活性化されている遺伝子のタイプ(NN型)の人は、お酒に強く、顔も赤くなりにくい。一方、この酵素が完全に失活しているタイプ(DD型)の人は、お酒がまったく飲めません。少しでも飲むとすぐ顔が赤くなります。その中間である不活性型(ND型)の人は、飲むと顔が赤くなるものの、まったく飲めないわけではないのです。

 日本人では、NN型の人は5割、ND型の人は4割、DD型の人は1割と言われています。それに対し、欧米やアフリカ系の人はほとんどの人がNN型です。

 つまり、日本人など黄色人種の人は、お酒に弱い人が意外と多く、宴席でも無理やり飲ませたりといった「アルハラ(アルコール・ハラスメント)」は絶対に避けなければなりません。DD型の人は、たった1杯でも急性アルコール中毒になってしまう恐れがあります。

 不活性型(ND型)の人は、お酒を飲むことによってアルコールの分解能力が高まり、次第にお酒に強くなってきます。ところが、それでもNN型の人に比べれば分解能力は低く、それだけアセトアルデヒドの毒性にさらされる時間が長いので、咽頭(いんとう)がんや食道がんなどのリスクが高くなるとも言われています。

 顔が赤くなるかならないかは、遺伝子のタイプによって決まり、しかもそれは病気のなりやすさにも影響します。自分のタイプを知り、それに合ったお酒の飲み方を取り入れたいものです。

葉石かおり著、浅部伸一監修『マンガでわかる 酒好き医師が教える最高の飲み方

 アセトアルデヒド脱水素酵素が活性化しているかどうかが、さまざまな病気に関係していることが分かってきました。

 実際に自分の遺伝子のタイプを知るためにはどうすればいいでしょうか。確実なのは「遺伝子検査」を受けることです。

 ただ、遺伝子検査を受けるには費用もかかるので、簡易的には「アルコールパッチテスト」を利用する手もあります。やり方は、脱脂綿に市販の消毒用アルコールを含ませ、上腕部の内側にテープで7分間固定し、はがした直後と10分後に、脱脂綿が当たっていた肌の色を確認します。

 肌の色が変化しないのがNN型、10分後に赤くなるのはND性型、直後に赤くなるのはDD型という判定になります。自分のタイプが知りたい方はぜひ試してみてください。

葉石かおり エッセイスト・酒ジャーナリスト

1966年東京都練馬区生まれ。日本大学文理学部独文学科卒業。ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経て現職に至る。全国の日本酒蔵、本格焼酎・泡盛蔵を巡り、各メディアにコラム、コメントを寄せる。「酒と料理のペアリング」を核に、講演、セミナー活動、酒肴のレシピ提案を行う。2015年に一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを設立。国内外にて世界に通用する酒のプロ、サケ・エキスパートの育成に励み、各地で日本酒イベントをプロデュースする。著書に『酒好き医師が教える最高の飲み方』『マンガでわかる酒好き医師が教える最高の飲み方』など多数。

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