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職場において新入社員(ルーキー)は、即戦力にはほど遠くても、新鮮な風を運んでくれる一輪の花と言えます。
新年度が始まってほぼ1カ月。新人にとっては、ようやく周りの景色も見えて来た頃でしょうか。新人研修を終え、配属先が決まると、職場の会議に引っ張り出されます。
そこでよく見られるのが、20代の新人と50代の管理職の間での「世代間コンフリクト(葛藤)」です。
「50代部長」と「20代新人」が会議で激突
今回はこの“難問”について考えます。
今の50代は、かつて甲子園球場で「KKコンビ」と呼ばれて注目されたPL学園出身のプロ野球選手、桑田真澄氏や清原和博氏のプレーを見て育った世代。かつては彼らの世代が、その圧倒的パフォーマンスから「新人類」と呼ばれていました。
一方、今の若者に人気のプロ野球選手は、日本ハムの大谷翔平選手(22歳)でしょう。
大谷選手とKKコンビが同じグランドに立つことはありませんが、職場では「50代部長」と「20代新人」が同居します。経験豊富で影響力ある「50代部長」と、右も左もわからないルーキーの「20代新人」では、今の時点で力の差は歴然です。
両者は、とりわけ会議で衝突しがちです。そこにコンフリクトが生まれます。例えば以下のような感じです。
・「50代部長」:(新人に)会議でもっと発言してほしい
・「20代新人」:(自分が)なかなか会議で発言できない
「50代部長」としては、従来にない発想、斬新な意見、素朴な疑問を新人に期待します。一方、「20代新人」は、慣れない専門用語を理解するだけで精一杯です。
では、どうやって「20代新人」は、会議に参加していくべきなのでしょうか。
新人にのみ許される「質問」とは
新人が会議に参加するための秘訣は、こうです。
「発言」ではなく、特権を生かして「質問」から入る。
会議で、上司をも唸らせる「発言」ができれば大したものですが、新人にはハッキリ言って無理でしょう。そうではなく、自分たちにある特権を生かして「質問」をしましょう。特権というのは、入社1年目ならば見当違いな質問でも、許されてしまうことです。「まだ、入社して日が浅いからね」と周囲も大目に見てくれます。
とはいえ、実はここでの質問力で徐々に差が出てきます。その差とは、「50代部長」を考えさせ、唸らせる質問かどうかです。「毎回いい質問するね」などの感想を引き出せれば、大成功です。
では、どうやれば「50代部長」を唸らせる質問ができるのでしょうか。2つのステップでご紹介します。
・Step1:チャンスを逃さず「質問」をする
まず、臆せず質問しましょう。会議において、司会が「何か質問はありませんか」と聞くことがあります。このチャンスを絶対に逃さないようにしましょう。
ここで質問をするメリットは2つあります。1つは自分の存在を周囲に知ってもらう。2つ目は相手に強い印象を与えられる。「質問」をすることは、当たり前のことように感じますが、それが当たり前ではないのです。
私は自身が講師を務めるセミナーで、よく質問を募ります。その質問の数や内容で、参加者の理解度や感心の度合いを測るのですが、良い質問をする参加者には、強い好印象が残ります。質問は、アピールの場でもあるのです。ところが、この法則は、若いほど知られていません。
例えば、就職活動を控えた大学3年生向け講義でも、質問を募りますが、全く手が上がりません。つまり、アピール力を磨かなければいけない大学3年生に「質問」の重要性が刷り込まれていないのです。「質問サインが出たら、絶対に質問をしなければ出遅れるよ。何でも質問しなさい」と私は大声で伝えます。それでも次回の講義では、ぼちぼち質問が出る程度です。
理想と現実の差に注目
・Step2:何かを比較して、質問する
質問することに慣れたら、徐々に質問内容の「質」を高めていきます。どうやって高めていくのか。以下の公式を参考にしてみましょう。
ヒントは、「2つを比較」して、「何が、なぜ、どうしたら」という視点から質問を作ることです。
・2つを比べる
「50代部長」は、常に何かを比較して悩んでいます。たいていこの2つです。例えば「理想の目標」と「現状の実績」、また「目標とする競合他社」と「自社」。左側と右側には、現実には差があるので、これをどうやって埋めるのかを常に考えています。
・3つの質問展開例
そこで質問ですが、What(何が)、Why(なぜ)、How(どうしたら)から考えてみましょう。
まとめると以下のような展開になります。
What(何が):「あの、目標と実績に差があるとのことですが、一番大きい差は具体的に何でしょうか?」→問題を特定するための質問
Why(なぜ):「その大きい差が生まれてしまったのはなぜでしょうか。要因を教えてください」→問題の原因を探る質問
How(どうしたら):「では、その要因を解決するため、どうしたらいいのか。今までやってきたこと、これからやろうとすることを教えてください」→問題解決に向けた前向きな質問
これら3つの質問をするだけで、「50代部長」に、「あの新人、前向きだな」などの印象を残せるかもしれません。新人にとって、管理職は雲の上の存在です。それでも怯まず、果敢に“内角直球”で攻めてみましょう。いい質問は自分のためだけではなく、会社全体への貢献でもあるのです。

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