「Why Japanese People!」という決めセリフで知られる芸人の厚切りジェイソン氏。実は米ゼネラル・エレクトリック(GE)などでの勤務経験があり、現在はITベンチャーの経営にも関わるビジネスマンだ。12年前、旭化成のインターンとして日本に1年間滞在、その後、独学で日本語を習得。今も毎日、日本語の勉強を欠かさないというジェイソンさんに、外国語の学び方について聞いた。
(聞き手は村上富美=本誌副編集長)
出世のための勉強では英語はできるようにならない
日本では管理職になるにはTOEICで700点以上、といったルールを定めている企業も多く、それを目標に多くのビジネスマンが英語を学んでいます。はたして、そのような勉強をしても、英語を話せるようになるのでしょうか。
厚切りジェイソンさん(以下、ジェイソン):それ、おかしいですよね。出世のために勉強するのですか。勉強のインセンティブにはなっても、最終的に、求めた結果にはならないと思いますよ。
実際に、TOEICの点はよくても話せない人という人も少なくありません。
ジェイソン:それはね、話そうと思っていないんです。
いえ、みんな話せるようになりたいとは思っていると思います。
ジェイソン:そうですか? 話せるようになりたいなら、そうなるように勉強すると思いますよ。決して、勉強をしている人を否定するつもりはないのですが。
話せるようにならないとまずい、と思っている人は間違いなく増えています。海外企業に買収されたり、海外に進出したりする日本企業も多いので。
ジェイソン:全員ができるようになる必要はないと思いますが、英語を話せることでチャンスは広がるでしょうね。勉強すると決めたら、やるしかないでしょう。
1日5分でいい。楽しめば続けられる
必要な人は覚悟を決めて、やればいいと。
ジェイソン:米国でゼネラル・エレクトリック(GE)に勤めていたとき、ロシア人や中国人、インド人と一緒に働いていましたが、何を言っているか分からないレベルの英語の人もいたんです。でも、その人がスキルを持っているから、誰も気にしませんでした。
だから、英語ができなくても、すごく優秀な人になるか、能力もあって英語も上手になることを目指すか、その人次第ではないですか。
ジェイソンさんも日本語を相当勉強されてこられたのですよね。
ジェイソン:10年間、1日5分でも、毎日欠かさず続けています。
10年勉強すれば、英語は話せるようになりますよ。自分が10年後、どうなりたいか、考えてみてください。
なるほど。10年間、毎日ですか。強い決意が必要ですね。
ジェイソン:強い決意はいらないよ。歯磨きするのに、決意する?
しません。
ジェイソン:ですよね。楽しく続ければいいんですよ。
勉強するときに、終わりを決めていませんか。TOEIC何点が目標だから、それが取れたら終わりとか、取れなかったら、悔しいからもうやめるとか。
ジェイソンさんはどうやって勉強を楽しんでいますか。
ジェイソン:漢字を勉強するとき、日本の人に勉強法を聞いたんです。そうしたら、同じ漢字を繰り返し、何度も書くと言われました。それはあまり楽しそうじゃないし、効率がよくないなと思ったんです。
それで、電車の中で、漢字の部首や意味を考えストーリーを作ったりしながら覚えます。書くのは1回。僕なりに面白おかしく考えてます。ネタの源にもなってるし。逆に、つまらない勉強をすると、英語が嫌いになると思う。
言い訳をする人は結局、話せない
英語を話せない日本人に向けて、まずは簡単な単語を使って、話してみるといい、とアドバイスする人もいます。
ジェイソン:話してみるのはいいと思います。
でも、単語を使っているだけでは、英語のニュアンスを理解するのは難しいでしょうね。つまり「お疲れ様」と言っているつもりでも「お前、疲れた顔しているな」と受け取られることもあるかもしれません。
難しいですね。
ジェイソン:3歳の娘がTV番組の「おさるのジョージ」が好きなんですが、日本語版で見ると、黄色い帽子のお兄さんが、少しイヤなヤツに見えるんです。でも、英語版だと何をやっても許す、気のいい人なんです。
ニュアンスが理解できれば、どちらが原作に近いか、分かるでしょう。
どうすれば、そのようになれますかね。
ジェイソン:場数です。日本で生まれた赤ちゃんは日本語が話せるようになるし、アメリカの赤ちゃんは英語が話せるようになります。なぜだと思います? 場数を踏むからですよ。
僕は、日本語の練習をするとき、できるだけ日常生活の中で日本語に触れるようにしました。今の時代、日本にいても、英文はたくさんあふれているし、インターネットで英語のラジオも聴くことができます。
もし1日10時間英語に触れたら、1年後にはかなり話せるようになりますよ。やらない人は言い訳をしているだけです。
ムダが嫌いだから芸人とIT企業の仕事を両立
ジェイソンさんは飛び級で大学に入ったくらい、優秀だったそうですね。
ジェイソン:テレビゲームが大好きで。早くゲームがしたいから、学校が終わると、迎えの車が来る前に、宿題を終わらせて提出していました。
優秀ですね。勉強が好きでしたか?
ジェイソン:嫌いでした。だから早く終わらせたかったのです。それなのに、先生が僕をほめるので、両親は怒っていました。「こんな勉強の仕方でほめられるから、勉強をしなくなる」と言って。
時間を有効に使ってはいますね。
ジェイソン:もともとムダはきらいなんです。だからGEに務めながら、修士号をとり、今もIT企業で働きながら、芸人として働いています。
確かにムダがないですね。
ジェイソン:どういう生き方をしたいか、なんですね。僕は、ある程度、お金を稼いだら後はゆっくりしたいと考えるほうなんです。そのために、今、何をやるべきか、考えます。
いわゆるアーリーリタイアメントという考え方ですね。何かやりたいことがあるんですか。
ジェイソン:娘が3人いるのですが、子どもとゆっくり過ごしたいと思います。
ちなみにお嬢さんたちとは日本語で話すのですか。
ジェイソン:英語です。娘たちは学校では日本語なので、家では英語です。日本語で話すと、英語で何というの?と確認するんです。だから、僕が出ているテレビ番組を見ると、娘たちが「パパ、日本語話せるんだ!」って驚くんですよ。
登録会員記事(月150本程度)が閲覧できるほか、会員限定の機能・サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。