米Googleがエンタープライズ市場攻略を加速している。その象徴がクラウド事業トップに就任したDiane Greene氏だ。米VMwareを創業し、同社のCEO(最高経営責任者)として企業に「仮想化」を根付かせたGreene氏は、Goolgeを「エンタープライズITベンダー」に変えようと目論む。
Greene氏がGoogleのクラウド事業を統括するSenior Vice Presidentに就任したのは2015年12月のこと。Googleの親会社である米Alphabetは、Greene氏が起業したスタートアップの米Bebopを3億8000万ドルで買収し、Greene氏にクラウド事業をゆだねた。
1998年にVMwareを創業し、同社のCEOを2008年まで務めたGreene氏は「エンタープライズITビジネスを知り尽くした人物」だ。またGreene氏は2012年からGoogleの取締役も務めており、Googleの社内事情も熟知する。
これまでは「(Google創業者の)Larry Page氏にエンタープライズビジネスについてアドバイスしてきた」というGreene氏。助言役から実行役へと役割を変えたGreene氏(写真1、2)が、Googleのクラウド事業をどう導くのか。詳しく話を聞いた。
まずはGoogleのクラウド事業を率いることになった経緯を教えてください。
私はGoogleの取締役として、「クラウド事業のトップとして誰が適任か」などをアドバイスして来ましたが、まさか私自身がその任につくとは思っていませんでした。
直近まで私が経営していたBebopは、企業にとって使いやすいパブリッククラウドの開発を目指していました。Googleのクラウド事業のチームと話をする中で、私たちのチームと彼らのチームが一緒になることが、Googleの優れたテクノロジーを企業顧客に届ける上で最良の選択肢になると考えるようになり、Googleに参加することを決断しました。
エンタープライズでの実績が知られていない
Googleのクラウドインフラストラクチャーである「Google Cloud Platform」の上では、業務アプリケーションのSaaS(Software as a Services)である「Google Apps」が稼働しており、Google Appsを数多くの企業顧客が活用しています。つまりGoogleのクラウドは、エンタープライズ市場での実績を既に挙げているわけですが、多くの人々がその事実自体を知りません。
Googleにおける私のミッションは、企業顧客に対してGoogleのクラウドのメリットを正しく伝えることであり、システムインテグレーターなどのパートナーと協力して、企業顧客へのサポートを今まで以上に強化することです。特にGoogleとパートナーが一体になってサポートを提供する体制を整えることが、最も重要だと考えています。
かつてのGoogleのクラウドサービスは、最新技術が盛り込まれている一方、一般企業にとっては斬新すぎて、多くのユーザー企業が「Googleは未来に住んでいる」といった感想を抱いていたのが実情でした。
そうですね。顧客は「今」を生きています。そして多くの顧客がGoogleに対して「その技術はクールなんだろうけれども、私が今抱えている課題を解決できるの?」という疑問を抱いていたと感じています。
私は「顧客の今の課題」を解決することを愛しています。これからは、今までのやり方を変えなくても、Googleの最新技術によって顧客の今の課題を解決できるということを、顧客に対して示していきます。
既存システムは「そのまま」Googleのクラウドへ
特に重要なのが、顧客がオンプレミス(従来の企業のデータセンター)で稼働している既存のシステムを、そのままGoogleのクラウドに移行できるようにすることです。そのために企業顧客に対して、適切なサポートやシステムインテグレーションのサービスを提供して行きます。
顧客がGoogleのクラウドにシステムを移行するだけで、情報システムの運用コストを削減したり、セキュリティを強化したりできる。そのようなシンプルなソリューションを提供することが、我々の目指すところです。
Google Cloud Platformのリージョンを増やすのも、企業顧客を意識した取り組みです(関連記事:「Google Cloud Platform」東京リージョン、16年下期に開設へ)。多くの企業顧客が、自国にあるリージョンで情報システムを運用したいと考えています。そういった要望にも答えていきます。
エンタープライズ市場を攻略する上では、パートナー戦略の強化が不可欠です。
パートナー企業のリクルーティングや、Google Cloud Platformに詳しい「認定エンジニア」の育成などを強化していきます。VMware時代の経験から、日本市場におけるシステムインテグレーターの重要性についても熟知しています。顧客にプラットフォームの価値を提供していく上では、パートナーの協力が欠かせません。東京で再び多くのパートナーに会えることを、楽しみにしています。
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