サンフランシスコのダウンタウンに、テクノロジー好き向けの新名所がある。大手ディスカウントストアである米Targetが運営する家庭用IoT(Internet of Things)のショールーム「Target Open House」(写真1)だ。
「新」と言っても、実はこの場所は2015年夏にできていたそうである。情けないことに、先日ようやく足を踏み入れた。Target Open Houseは家庭用IoT製品を一堂に集めたショールームであり、実際に購入もできる。
IoTは今や耳にしない日はないほどに当たり前になっている。テクノロジーメディアには「こんな新製品が出ました」というニュースが日々出てくるし、どこかの展示会に行くと、そうしたIoT製品がデモされているので、手にとって試したりもできる。
とはいえ、個別の記事を読んだり展示会に行ったりするだけでは、「今、市場にどれだけのIoT製品があるのか」といったことや、「IoT製品で何ができるのか」といったことを概観したり、今のIoT製品市場の全体像を見わたしたりするのは、なかなか難しい。このTarget Open Houseを訪問すれば、完璧とは言わないが、「今の家庭用IoT製品市場がどうなっているのか分かった」という気分になれる。
ここに展示されている商品は、ざっと70~80点はあっただろうか。おなじみのスマートサーモスタットやスマート煙探知機、スマート電球から、ドアノブ、スピーカー、コーヒーメーカー、加湿器、体重計、体温計、なぜかバスケットボールや赤ちゃん服、ペットの餌やり器まで、本当にいろいろなものがある。ショールームを一巡りするだけで、知識がアップデートされる。
うれしいのはこうした商品がパッケージ(箱)に収まっていないことだ(写真2)。どの製品もデザインにはかなり力が入っているようで、形がとても美しかったり、面白かったり、意外だったりと、見ていて飽きない。中にはつい触ってみたくなるような新奇な素材を使ったものもある。ちょっと美術館のような雰囲気だ。
そして「IoTとはデザインである」と言ってもいいほど、このカテゴリーにおいてはデザインが重要になっていることが分かる。デザインが優れていることで、そのIoTの仕組みも同じように楽しくてよいと、アピールするものになるのだ。
もちろん、IoTそのものの仕組みもここでよく分かる。個々の製品だけでなく、IoTデバイスをまとめて操作できるタブレットのインタフェースがあったり、IoTのある生活はこういうものですというのを、スクリーンで分かりやすく見せてくれたりする。
IoTで生活のシーンがどう変わるかが分かる
何よりも、店の半分は透明のアクリルで作られたモデルハウスのようになっていて、ベッドルームやリビングルームが作られており、その中にまたIoT製品が配置されているのだ。こうやって見せてもらって、ようやくIoTも腑に落ちる感じがした。
Targetは、アメリカのディスカウントストアチェーンの中で、「値段は安いがおしゃれ」という位置付けを目指している。同社は、小売りにもイノベーションが必要だと、社外の起業家を社内に迎えて(このような形態は「アントレプレナー・イン・レジデンス」と呼ばれる)、優れた起業家のアイデアを取り込もうとしているそうだ。
それにしても気が付いたのは、ここにあった何十という製品はほとんど全てがスタートアップによって作られたものだということである。これから家電は、こういう小さな会社の個々の製品を自分で好きな風にコレクションして生活するようになるのだろうかと、店を後にして思った。
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