自身も「自宅投資」で数千万円の譲渡益を得たという不動産コンサルタントの沖有人氏。住宅ローン減税などの税制優遇があり、低利の住宅ローンが組める自宅を投資対象にすることで、有利に資産運用を図る方法だ。ただ問題はどうやって値上がりする物件を選び、どういうタイミングで売るか。今回はまず、どうやって物件を選ぶかについて解説する。

 自宅が欲しい人は物件検索マニアになりやすい。気に行った物件が見つかるまで毎日同じウェブサイトを見たり、いろんなサイトを見て回ったりする。物件を見ることに多大な時間をかけるのは、高い買い物なので納得感が必要なのだろうと思う。今回はそういう人に、どうやって良い物件を選ぶか、解決策を提示しよう。

 相続税対策としての「タワーマンション節税」はここ2年で有名になったが、私たちはこの言葉の商標登録を取っている。タワーマンション節税におけるいい物件は、簡単に言うとコスパがいい物件である。これまでの購入顧客は平均1割以上の含み益を出している。この含み益を出す方法として我々は「ロボット仲介」を使っている。

 結局、どんなに物件検索サイトをつぶさに見ても高いか安いか正確には分からないし、すべてのサイトをタイムリーに見に行く時間は十分に取れない。人力で調べるには時間の限界がある。不動産業者にやってもらうにしても、その物件が全ての中の最適解であることを誰も保証してはくれない。結果としてコスパのいい物件を取りこぼすことに変わりはない。最近はマンション価格が高くなってきて、含み損を抱える可能性があるからこそ、賢く選ばないといけない時代なのである。

対極としてロボット仲介を活用

 人力の対極としてのロボット仲介では、多数の物件検索サイトを検索ロボットが見に行く。そして毎日の新着物件全件を網羅する。これを社内では「ハイパーロボサーチ」と呼んでいる。グーグルが使っている技術と基本的に同じである。グーグルはサイトのリンクなどをたどって、次から次へとインターネット上のサイトを網羅していく。それを人間がやるのは大変だから、検索ロボットが勝手に情報を収集する。

 ロボット仲介では、収集した全件に対して、次に「ビッグデータ査定」を行う。査定を正確に行うにはデータ収集と査定ロジックが高度であることが求められる。この査定結果は、「住まいサーフィン」上で無料公開している。

 マンション名で検索し、号室を入れるだけで、答えが瞬時に出てくるので、手軽なツールとなっている。不動産業者の利用が目立つようになったので、1人が使える1日の利用件数を制限したほどだ。

 ちなみに同様の査定をうたう会社が増えてきたが、その正確性は同一物件で検証してみると分かる。ネット上にはその検証結果を書いている人もいる。誤差の大きな査定結果は信用を落とすだけだ。

 ハイパーロボサーチで全件取得して、ビッグデータ査定で全件査定すると、査定価格と売り出し価格の乖離が判明する。それが私たちが考える物件価格の割安度である。査定が5000万円に対して売り出し価格が4800万円なら4%割安と判定される。こうして割安度の順番にソートしたものが「コスパ物件リスト」である。ここまでの処理を毎日行い、リストを毎日出している。リストを使えばコスパのいい物件を簡単に特定することができるので、高値づかみする可能性は低いし、購入時から含み益を出す可能性が出てくる。

 注意をしておくが、ここで言う割安とは私たちの査定結果との比較であり、何らかの訳あり物件であることもあり得るし、査定が100%正確とは言い切れない。確実に含み益があることを保証するものではないものの、これまでの経験からして、目安とするに足る数字であり、物件を探す効率はかなりいいと考えている。

コスパ物件リストからコスパ順に電話する

 うちの社員の名前が一人歩きしたことがある。社員のFさんは毎日「コスパ物件リスト」を上から順に見て電話する人である。売り主側の仲介会社に電話し、「ご紹介可能ですか?」と尋ねる、これを業界用語で「物件確認」と言う。売り主の仲介会社も価格を安く設定できたことは認識していて、早く決めたいと思っているところに、必ず同じ人から最初に電話が掛かってくると「安めの価格の時だけ、なんでいつもあなたなんだ?」といぶかるという具合になる。不動産業者の間では、電話が掛かってくると、「またFさんに見つかっちゃった」と語りぐさになっていた。

 首都圏だけでも、新築と中古を合わせて年間に約20万件が新たに売り出される。その時点で、売り出し価格が査定価格よりも割安な物件は10~15%(2万~3万件)である。実際に成約している中古マンションは約4万件で、割安な住戸は早々に買い手が決まり、平均1カ月半ほどで成約に至っている。

 実際に、10%以上割安な物件は全体の1%で、年間2000件となり、毎日5件ほどになる。こうした物件は早ければその日のうちに広告からなくなる。だからこそ、誰よりも早く見つけて、誰よりも早く内覧に行き(通常翌日の朝一番)、買い付けを入れなければ買えない。

 「コスパ物件リスト」はタワーマンション節税向き以外の物件もすべて載っている。これまで私たちが仲介会社に電話していた物件はタワーマンション節税に適した物件に限られていた。今後はリストのすべてを「ロボット仲介」として自宅購入や不動産投資をしたい方に提供しようと考えている。

 そこで選ばれた物件のうち、条件にあったものを顧客ニーズに即してリスト出力する。顧客ニーズは、「文京区の沿線指定で60~80㎡・6000万~8000万円・築20年以内」といった具合になる。あなたの条件設定に応じて、ロボットが代行してコスパのいい物件をネット上から探してくれるという訳だ。

 たとえ売り出し価格が高い物件であっても、「この価格まで下げてくれれば買いますよ」という指し値を設定して買い付けの書面を提出すれば損をすることはない。こうした推奨買い付け価格は売り主の希望条件とビッグデータ査定で算出された価格の間で絶妙に決めることが求められる。この辺は売り主側の仲介担当からうまく聞き出す「ヒューマン仲介」のテクニックになる。

 先日大阪で相続税対策のセミナーを開いたら、「お礼が言いたい」と私に話しかけてきた人がいた。その方は私の本を読み、住まいサーフィンの会員になり、横浜のタワーマンションを購入していた。関西に転勤となり、売却したら2000万円の譲渡所得が得られたと言う。こうした方は確かに多い。

80%以上の会員が「購入価格以上になった」と回答

 この方以外にも、中古マンションの自宅売買で800万円の譲渡所得を得た方や、新築マンションの自宅の含み益で1500万円という方もいた。私自身も自宅投資を繰り返し使って資産形成している。3000万円の譲渡所得控除を使えば、売却益3000万円が無税となる。そしてこの制度は2年経過すればまた使うことが可能である。自宅を住み替えてわらしべ長者になることができるわけだ。

 住まいサーフィンの会員にアンケート調査をしてみたところ、80%以上の人が購入価格以上になっていると回答した。18万人の会員のうち、仮に10万人が購入していれば、8万人以上が含み益を出していると思われ、その経済効果は1人500万円として4000億円にのぼる。これは不動産ビッグデータの可能性でもある。
住まいサーフィンアンケート調査結果「現在価値を購入時と比較したら」
住まいサーフィンアンケート調査結果「現在価値を購入時と比較したら」

含み益を出すには、7つの法則を守ること

 ここで含み益を出すためには、7つの法則を守る必要がある。割安に買うのはその1つである。7つの法則の詳細は拙著に譲るとして、まとめると「いつ?」「どんな物件を?」「いくらで?」買うかに尽きる。

 「いつ?」のうち買い時は、自宅の場合、子供の入学などがあるので、あまり自由には選べない。売り時は顧客や会員には随時伝えている。

 「どんな物件を?」は物件ごとに住まいサーフィン上で「儲かる確率」として算出している。住まいサーフィンでは、新築については一定期間表示しているが、中古は伏せているので、これを住戸内覧時に提示している。

 5つの法則(都心寄り・駅近・大規模・タワー・ファミリータイプ)を満たすとこの確率は上がる。それだけ買いたい人が多く、値下がりしにくいからだ。値下がりしにくいとローンの残債は着々と減っていくので、含み益が出やすくなる。「いくらで?」は、前述したロボット仲介の「コスパ物件リスト」が担っている。

 売り出し物件は平均して10%高く価格設定されている。その結果、全体の10~15%しか査定価格を下回るものはない。実際、成約した物件を調べた結果、売り出し価格と成約価格の乖離率は6.4%となった。10%に達しないのは、乖離率があまりに高い、割高なものは成約に至らないことの表れである。

物件検索上の売り出し物件の査定結果分布
物件検索上の売り出し物件の査定結果分布
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コスパのいい物件は瞬間蒸発する

 顧客にとって「いい物件とは何か?」と問うとしたら、「自分が気に入った、コスパのいい物件」と答える人が最も一般的である。気に入るかどうかは内覧してみないと決まらないので、本人にしか分からない。しかし「コスパのいい物件選び」の部分はロボット仲介に任せることができるわけだ。

 査定よりも10%以上安い物件は、5000万円の物件なら500万円相当の含み益になるので大金である。こうした物件は毎日数件ほどなので狭き門だが、5%程度に条件を緩和すると、自分の希望に合う物件が見つかるかもしれない。

 それでも24時間以内にコスパのいい物件を見つけ、翌日には内見するくらいのスピード感がないと買えない。早い者勝ちの様相を呈しているからこそ、ロボット仲介を活用する必要があるのだ。

 今回は、自宅投資のキモになる物件選びについてまず解説した。次回は実践するための物件購入編としたい。物件購入編では、しておかなければならない事前準備、画期的な内覧方法、お宝物件に出会う方法、買い付け価格のさし方などを解説する。

経営課題の解決に役立つ、不動産の活用法を満載

 本コラムの著者、沖有人氏の最新刊『経営者の手取り収入を3倍にする不動産戦略』を発刊しました。これからの不動産を取り巻くメガトレンドを踏まえつつ、不動産固有の特徴や、それを生かした経営課題の解決法をやさしく解説しています。多額の減価償却の使い方、タワーマンション節税、相続税評価の下げ方、役員報酬の上げ方、そして手取り収入を増やすタックスマネジメントまで、著者が実績を上げている具体的な手法をまとめました。詳しくはこちらまで。

 また、沖氏は、不動産購入に関するセミナーを随時開催しています。ただし、業界関係者の参加はご遠慮いただきたいので、住まいサーフィンの会員に限定したり、当日は身分証明書などを必要とすることがあります。その点はご留意ください。

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