巧みなM&A(合併・買収)で成長を遂げてきた、ミネベアミツミ。貝沼由久会長CEO(最高経営責任者)は就任15年で約30件の買収を実行した。今期も最高益更新を見込む同社。貝沼会長が、4回にわたり経営論を語る。

 2009年4月に社長に就任しました。前年のリーマン・ショックを受けて業績はどん底でした。徐々にはい上がってきたところで11年の東日本大震災があり、主力工場を置くタイで洪水が起きました。なぜこんなに不幸なんだ、と毎日あまりよく眠れませんでした。どう逆転できるか、ずっと考えていると、ふと思ったことがあります。

経営とは修行か

 経営の経はお経の経で、そしてそれを営むのが経営だと。だから、経営というのは修行じゃないか、と思い立ちました。住職になった高校の同級生に話すと、「そうだよ。昔お経は葉っぱに書いて読みつなげた。お寺をどう永らえるかが経営で、経済の経もそういうところから来ている」と言われました。

 これには、後日談があります。調べてみると、経営という言葉の起源は全然、違う内容でした。でも、これは社会科学だから、私が本当だと思ったのでそれでよい。そうするとすべて合点がいきます。戦国武将も自分の家を永らえるために、経営していたということです。つまり成長しながらサステナブルなことをやっていました。ビジネスで言えば経済活動を通じて利益を上げて、それで成長します。だから私が考える経営の本質はサステナビリティーだ、となりました。

 そう考えると、一つの事業に集中するのは危ないという解にたどり着きます。極端な「選択と集中」をせずいくつか違う事業をやった方がよいです。学者は選択と集中とよく言いますが、個人の信念としてそれは間違いだと感じています。新型コロナウイルス禍では航空会社も旅客だけのところはダメージが大きかったが、貨物も手掛けていたところは影響を軽減できました。何かの時のための備えこそが、経営だと私は考えています。

 経営者の目的は株主価値の最大化で、その手段が経営であり、そしてその経営とはサステナビリティー。サステナビリティーとは、会社を潰さないことです。潰さないというと消極的に聞こえますが、世の中がどんどん変わる中で成長しないと潰れてしまいます。特に技術の世界は変化が激しいです。サステナブルであるということは、利益をどんどん大きくしていくことです。

 社長就任直後の09年5月、最初の決算発表で目指すべき会社像を説明しました。「エレクトロメカニクスソリューションズ」という言葉を商標登録し、それまで主体だったメカニクスにエレクトロニクスやソフトウエアを入れていく、という考えを示しました。その考えから非中核のモーター事業を継続する、という説明をして回ったら、外部からは「正直、がっかりした」と言われました。

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