この記事は日経ビジネス電子版に『ファン経営で勝つ(2)(3)(5)(7)』(1月24日~26日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』1月31日号に掲載するものです。

インターネット産業での競争は年々激しくなり、生き残りをかけて各社がしのぎを削る。調査では、ネット編として4分野のNPSランキングを作成した。ECサイトの首位はヨドバシ・ドット・コム。楽天、アマゾンの2大サイトを上回った。

NPS、10分野のトップブランド
NPS、10分野のトップブランド
調査概要:2021年12月に調査会社マクロミルに依頼し、インターネット上で20歳以上の男女を対象にアンケートを実施。1万355人から回答を得た。10分野の商品・サービスについて、直近1年以内に利用したかどうかを確認したうえで、その商品・サービスについて「この商品・サービスを友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」と尋ねた。回答は「全く薦めない」の0点から「強く薦める」の10点まで11段階の選択式。「顧客推奨度(NPS)」の定義に基づき、10~9点を選んだ人を「推奨者」、6点以下を選んだ人を「批判者」とし、全体に占める推奨者の割合から批判者の割合を引いてNPSを算出した。スコアは四捨五入しているため、計算が合わない場合がある。
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 全国に276店舗ある焼き肉チェーン「焼肉きんぐ」のテーブルには、QRコードが貼ってある。スマートフォンで読み込むと画面にこんな質問が表示される。「あなたは当店のご利用を親しいご友人やご家族にどの程度すすめたいと思われますか?」

多いのは推奨者か批判者か

 これは「顧客推奨度(ネットプロモータースコア、NPS)」という調査で使われる質問だ。回答は週ごとに集計され、エリアマネジャーや店長に届く。

 焼肉きんぐを運営する物語コーポレーションは2018年からNPSを店舗運営の指針として取り入れた。NPSでは、友人らに薦めたい度合いを0~10点の11段階で聞く。10~9点を選んだ人を「推奨者」、7~8点を「中立者」、6点以下を「批判者」として分類。推奨者の割合から批判者の割合を引いた値がNPSとなる。

 商品やサービス、あるいはそれを提供する企業を消費者がブランドとして信頼し、愛着を持たなければ、友人らに薦めたいとまでは思わない。つまり、NPSのスコアの高さは「ブランドの支持者=ファン」の割合が高いことを示す。

<span class="fontBold">中立者と推奨者を合わせて「満足者」と定義。回答者全体に占める満足者の割合を「満足者充足率」として縦軸に、満足者に占める推奨者の割合を「推奨者充足率」として横軸に取る。  NPSが高まるにつれ、左下の低評価ゾーンから一般ゾーン、さらにロイヤルゾーン、高ロイヤルゾーンへと進む。リスクロイヤルゾーンは、NPSはプラスだがファンの少ない状態であり、顧客が競合に流れやすい。</span>
中立者と推奨者を合わせて「満足者」と定義。回答者全体に占める満足者の割合を「満足者充足率」として縦軸に、満足者に占める推奨者の割合を「推奨者充足率」として横軸に取る。  NPSが高まるにつれ、左下の低評価ゾーンから一般ゾーン、さらにロイヤルゾーン、高ロイヤルゾーンへと進む。リスクロイヤルゾーンは、NPSはプラスだがファンの少ない状態であり、顧客が競合に流れやすい。
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 競争の激しい分野ではどんなブランドがファンを獲得しているのか。取材班は消費者1万人を対象に、10分野を調べた。ランキングと一緒に掲載している「NPSマップ」は、スコアを5つのゾーンに分けて評価するもので、マクロミルが考案した。

 マップ上の青い点線より上のゾーンにあるブランドは、回答者のうち推奨者が2割を超えている。赤い点線より上のゾーンにあるブランドは、NPSがプラスであることを示す。プロットされる場所が右上に行くほど、回答者の信頼、愛着が強いブランドであることを示す。

 PART1ではネット関連の4分野を取り上げる。ランキング結果とともに、上位企業のファンづくりの取り組みを見ていこう。

1.ECサイト
ヨドバシ、品質を優先 自社で仕入れ・物流
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 今回の調査で対象としたECサイトは、企業から消費者に向けて商品を販売しているBtoCのサイトだ。

 NPSで見ると、アマゾンまでの上位6サイトは、利用者の高い支持を受けている。その中で、ヨドバシカメラ運営のヨドバシ・ドット・コムが首位に立った。

 ヨドバシ・ドット・コムの21年3月期の売上高はヨドバシ全体の約3割といい、2200億円程度とみられる。楽天市場は、出店者の売上高を含む流通総額が4.5兆円(20年12月期)、アマゾン日本事業の売上高は2.2兆円(同)だ。取り扱う物量が多いことだけが、利用者の支持につながるわけではない。

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