319回 韓国戒厳令
12月3日の夜におこった韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領による「非常戒厳」の宣布。こんなことがおこるなんて想像すらしていなかった人が大半だろう。筆者もその一人である。まさか、現代の民主主義国家である韓国で軍事政権時代みたいなことがおこるとは。
いわゆる戒厳令とは戦時や事変など国家の存亡にかかわる事態がおこった際に発動されるもの。他国と戦争が始まったわけでもない(北朝鮮とは休戦中だが)、大規模な天災がおこったわけでもない、大規模なテロや暴動がおこり警察力では抑えられないような事態がおこったようでもないのに戒厳令が発動され、軍が動いているというのは異常な事態である。何でこんな事態がおこったのか、本当にわからなかった。
国会の過半数が野党で占められることになり、人事や予算が野党の反対で思い通りにいかなくなる事態が続き、またキム・ゴニ(金建希)大統領夫人に関する様々な疑惑が取りざたされ、ユン・ソンニョル政権は支持率が20%前後まで下がるというジリ貧状態に陥っていた。それを打破しようと、最大野党が北朝鮮の指示で国政や司法を麻痺させており、北朝鮮の共産勢力の脅威から韓国を守り、自由な憲法秩序を守るためと称して、軍隊を動かして野党を弾圧しようとした。非常に簡単にまとめるとこういうことのようだが、めちゃくちゃだなという感想しかでてこない。
韓国では大統領が戒厳令を宣布したとしても、国会議員の過半数が解除を求めた場合、大統領はこれを解除しなければならないということが憲法で定められている。4日未明、国会で戒厳令の解除を求める決議案が可決された(国会議員300人中190人が国会に集まり、その全員が決議案に賛成した)ことで無事解除されたわけだが、ユン大統領は軍隊を使って国会を封鎖して、これを阻止しようとしていた。そもそも、戒厳令にまつわる憲法で定められたことを守る気がなかったということだ。