呉先生はそういう配偶者に「見せてはならないもの」を分別(ぶんべつ)しているのだろうが、AとBの区別は素人目では分からなかったが、専門医に任せよう。きっと呉先生なりの専門知識で選んでいるのだから。「香川教授、内田教授と配偶者に会うのだろう?その時には代理人
創作BL小説を書いています。 ヤフーブログから引っ越して参りました。
ヤフーブログ終了でライブドア様に引越しました。今日の夜中更新分からはこちらがメインです!
呉先生はそういう配偶者に「見せてはならないもの」を分別(ぶんべつ)しているのだろうが、AとBの区別は素人目では分からなかったが、専門医に任せよう。きっと呉先生なりの専門知識で選んでいるのだから。「香川教授、内田教授と配偶者に会うのだろう?その時には代理人
何しろサンタクロースが持っているような大きさの袋を花束のように抱えている。そしてその顔は無邪気で無垢な笑みを浮かべていて、とても綺麗だった。「その麻袋みたいな袋の中は、ドライブのお供ですか?」 彼が愛用しているフランスの老舗ブランドのカバンを買ったら付
「庶民的なお店ですよ?いやしくも教授職にいらっしゃる貴方にはそれなりの恰好でいて下さらないと困ります。スーツも今のブランドで良いです!というより今のブランドを死守してください!教授が量販店で売っているスーツを着ていたら医局員はそれ以下の物しか着ることが出
杉田弁護士も離婚問題を扱っているので証拠としてこういうモノも見慣れているに違いないのに驚いたような表情を浮かべている。「これはこれは、証拠としては完璧だね。動画と音声データも有るんだろう?」 彼がごくごく平静な表情で頷いている。呉先生もだが、最愛の人は
「例えば、京都に来ている政府要人とか国賓などが狙撃されるなどの重傷を負って一刻を争う事態の場合にウチの病院に搬送が間に合わないということにでもなれば事務局長も考えを改めるのではないか?」 絶妙に柔らかいお餅が出汁と絡み合ってとても美味しい。「ああ!なるほ
「呉先生の不定愁訴外来は予約制なのです。学会に出席するためとかで休診も有りますよね?また、的外れかも知れませんが先生の事務所に相談に来る人って勤め帰りとかが多そうですけれど?それにアポイントメントを取ってから来るのが一般的ではないでしょうか?」 世界一美
「祐樹、おはよう」 唇に味見をしていたと思しき塩味と出汁(だし)の香りのする唇が重なったなと思った瞬間に深い眠りから一気に覚醒した。「明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします」 親しき中にも礼儀ありだと思って挨拶をした。 「祐樹、明けまして
その向かいに腰かけている祐樹の前には薫り高いホットコーヒーが、そしてその隣に座っている呉先生にはアイスコーヒーを手際よく並べている。「さてと……」 冷コーなるモノを一口飲んだ杉田弁護士は居住まいを正した。「話を戻すが、精神科医としてのご意見を是非お伺い
明けましておめでとうございます。旧年中は拙ブログに遊びに来て頂いて、そしてコメントやポチまで下さって有難うございました。コメント返せないのですが、とてもとても励みになっています!!色々差し入れをしてくださった方も本当に本当に有難く思っています。今年も出来
「あぁ……っ!ゆ……祐樹……っ、とても……っ、悦……っ!祐樹の熱い……っ飛沫(しぶき)が……脳を……赤いマグマのように……っ、溶かしていく……っ、ようで……っ」 紅色に染まった口から甘い断末魔の声が聞こえたのと同時に祐樹の腹部に熱い真珠の放埓が勢いよく飛び
「分かりました。呉先生は?」 レイコーというモノを最愛の人は知っているらしくごくごく平静な表情だ。「俺はアイスコーヒー砂糖とミルク入りでお願いします。教授はそのゲイバーのレジェンドなんですね。凄いです!!だったら、一度ご一緒しませんか?」 呉先生は怖いモ
「え……っ?そのう……」 紅色の唇から銀の糸が滴っている様子もとても綺麗だったが濡れた眼差しが困惑に揺れている。「交わりの……形を変えるのは……普通なのか……?」 いったん蠱惑的な花園から退くことにした。名残は惜しいものの、世界で一番大切な彼に誤解を与え
「すみません。どこかでお会いしましたっけ?不定愁訴外来の呉と申します。どうか宜しくお願いいたします」 呉先生の外見は可憐な野のスミレといった風情なのは本当だが、怒らせたら非常に怖い。だから祐樹も内心で思っているだけで口に出したことはない。ただ、杉田弁護士
「聡、それは嬉しいお言葉です。貴方の舌戯は最高ですからね。雄弁な舌だけではなくて、喉の素敵な締め付け具合も……。想像しただけで、もうこんなになってしまいました……」 最愛の人の薄紅色のしなやかな指が触れている個所に手を重ねた。祐樹のソコは現金な反応をみせ
コーヒーをトレーに載せた呉先生が祐樹と最愛の人を可憐な笑みで交互に見ている。「お二人っていつまで絶ってもラブラブなので羨ましいです!ウチは同居人とそれなりに仲良く暮らしていますけれど、夜中に玄関先までたどり着いて寝てしまっているところを見かけたら寝室ま
「良いですよ。何でも言ってください」 どうせロクなことは言わないだろうなと思ってしまう。外科医としての天稟(てんぴん)は祐樹が羨むほど持っている。その点は医局の中でも異論を唱える医師はいない。そしてその点は褒められている。まあ、内心やっかむ医師もいるだろう
「こうして祐樹と身体を密着させて呑むシャンパンは最高に美味しいな」 最愛の人が感に堪えたような言葉を紡いでいる。「それは全くもって同感ですね」 グラスが空になったのを見てシャンパンを注いだ。祐樹のグラスにもボトルを傾けた。早く呑みきってしまって両手で彼
「実はウチの医局員が不倫しているんじゃないかという疑念が完璧に晴れたんで、情報を解禁しても良いと思ったんだ。医局長判断で、な。もちろん医局員が不倫の当事者の場合だったらそんな呑気なことは出来ないんだが。黒木准教授が鍵の件の教授通達をしただろう?あれにも不
無事届きました!教授大好き♡様、しょうこ様、ゆき様いつもいつも感謝です!読みに来て頂いているだけで嬉しいのですが、過分なお心遣いありがとうございます。◇年末年始は公私ともに忙しいので、ブログ更新がまちまちになったり最悪、更新出来なかったりします。続きを楽
艶めいた声が祐樹の舌の動きで乱高下するのも最高にそそる。「私のためにピアノを弾いて下さった時、聴覚はもちろん曲を追っていましたが、視線はこの指とそして、大輪の薔薇のように綺麗な横顔を交互に遣っていましたね。目が二つしかないことを後悔しました。両方とも同
「貴女にもウチの医局で不倫をするような不埒者が居るのではないかを探って貰いましたよね?それと当時進行で不倫の現場を押さえるべく柏木先生や久米先生などとLINEグループで連絡を取り合っていました。で、お二人に援軍を頼んだので直ぐに駆けつけてくると思います」
食事を終えてエレベーターに二人して乗り込む。二人が宿泊しているフロアにはカードキーを所定の場所に翳(かざ)さない限りエレベーターが停まらない仕組みだ。「クレープシュゼットはいかがでしたか?」 最愛の人はネガティブなことを言わないという美点を持っている。食
黒木准教授は今の時間はきっと医局にいるだろう。しかも、今日は柏木先生と久米先生の武勇伝(?)を聞いているに違いない。当事者が香川外科の一員だったら教授執務室に駆けつけて来るだろうが、内田教授に監督責任があるのは明白で他科のことは病院用語で内政不干渉の原
「指輪を貴方が受け取って下さるかどうか内心ではドキドキしていましたよ?」 最愛の人が驚いたような光を眼差しに宿している。「そうなのか?私は祐樹のお母さまに二人の交際が認められたことに有頂天だった……。天にも昇る気持ちというのはああいう気持ちだろうな。塩を
「手や体を洗う石鹸ではなくて、お互い会わない、接近もしないという意味です。正確には接近禁止ですが」 怜悧で温和な声だけれども若干の苛立ちが混ざっていることは祐樹にだけは分かる。いや、祐樹よりもアメリカ時代に同じ病院に勉強のために来ていて、そして彼がウチの
「田中様、香川様お待たせ致しました。お席に案内致します」 祐樹達よりも先に来て椅子に座っていたカップルもいつの間にかレストランに入っている。「ここの料理は全てが美味しいですから、楽しみですね」 最愛の人に言ったのだけれども、案内してくれるスタッフが慎まし
救急救命室の凪の時間が長引いた時に柏木先生が熱心にスマホで入力していたなと思い出した。確か巨大掲示板で医師の専門知識を披露しているとか言っていた。杉田弁護士が見て(ROMっ)いるのと同じ掲示板なのだろうか?この騒動がある程度収まったら聞いてみよう。ウチの
「今年のクリスマスプレゼントのリクエストは難易度が高かったと思いますが、貴方は予想を遥かに凌駕した最高の贈り物をくださいましたね。私のプレゼントは頑張ったのですがやむを得ない事情で少し遅れてしまうのですが良いですか?」 最愛の人は澄んだ瞳に艶やかな光を宿
『まあ、田中先生が不倫現場を押さえたのだろう?山とかいう看護師は不倫が露見するとは思ってはいなかったと想像出来るがね。だから予(あらかじ)めご主人にバレた時に備えて予防策を考えていたとは思えないが、万が一ということがあるからね。DVでっち上げというのは、身
「そうですか。ではこれからもお健やかにお過ごしください」 さっさと寿司でも鉄板焼きでも食いに行け!という内心をおくびにも出さず、にこやかに告げた。デートを見られたのは若干痛いが、もともとピアノが得意で、座興で弾いてみただけという言い訳も成り立つ。それに西
『そうか、取締役などの役付きではないんだね。だったら、会社の顧問弁護士との接点はないと考えられるな。ま、法務部に居ない限りはという限定が付くが。法学部卒とかで友人や知人に弁護士が居たり、既に興信所を頼んでいてその紹介で弁護士に相談したりしていなかったらだ
「尤も、私はピアノを聴く専門なので、腕に覚えなどは皆無ですから嫉妬も皆無ですね。映画『アマデウス』に描かれた天才モーツァルトに憧れた末に殺してしまうサリエリのような気持ちにはなりませんね。あれは音楽に人生を賭けた人ゆえの嫉妬とか憧憬でしょうから。ただ、ピ
この機会にジャブ程度の探りを入れておこう。何をするにも情報の大切さは言うまでもない。上層部といっても、斎藤病院長は明らかに最愛の人を買っている。ガンになるのは現場のことを何も知らないで机上の空論ならぬ机上の計算しかしない事務局長一派だろう。当然ながら教
少し薄紅色に上気した頬に何だか恥ずかしそうな笑みを浮かべて店内の客に一礼している姿も新鮮な魅惑に満ちている。 それに……彼はピアノを弾けないと言っていたのに、祐樹の耳にも、そして更にクラシック音楽に慣れていると思しき客が惜しみない拍手を送っている腕前が
呉先生は優秀な精神科医だし、大学病院に入院するレベルの精神疾患の患者さんも数多く診てきたキャリアもある。そしてその後独立したブランチである不定愁訴外来では医師や看護師への不満を延々と聞き続けるという業務に勤(いそ)しんでいる。祐樹よりも呉先生との接触が多
「本日は無理というかワガママを聞いて頂いて本当に有難うございます」 無理とかワガママとは一体何のことだろうと思っていると最愛の人はスタッフさんに深々と頭を下げている。予約時に「満席です」とか言われたのを「どうしても店に行きたいのです」と返答した程度では丁
「それにしても、長岡先生専用の薬品保管室で少なくとも三回も密会というか性行為をして、長岡先生が気付かないと思っていたのでしょうかね?女性の勘というものは侮(あなど)れないというのに……」 呉先生は極めて愚痴を言いやすい人だ。優れた精神科医だからだろうか?全
「田中様・香川様お帰りなさいませ」 ロビーに鎮座していたのと同じ薔薇がふんだんにあしらわれたツリーがクラブラウンジの落ち着いた雰囲気に良く調和している。「お世話になります」 世間的には最も盛り上がるだろうクリスマスイブはあいにく仕事なので21日の今日と明
呉先生はフットワークも軽いし、祐樹や最愛の人に親身に接してくれるのでよほどの用事がない限り協力してくれるとは思っていた。しかし、何処(どこ)と具体的に聞かれると返事に窮してしまう。何しろ事態は流動的な上に主導権は内田教授が握っているのだから。そもそも柳田
予想していた以上の動画がずらっと並んでいた。音楽にはさほど興味はないが、名前を知っているピアニストも数人居た。自分の課題は「実際に演奏をしている姿を見てその動作を覚える」ことなのでピアニストが大きく映っている動画を再生してみた。もの悲しい抒情的な曲が再
「ちなみに呉先生はまだ病院内ですか?」 呉先生の不定愁訴外来は予約制だが、入院患者さんの愚痴を延々聞くという場合も多いと聞いている。予約がない場合は定時を過ぎている今は帰宅途中かもしれない。『はい。小さくて快適な私の城に居ます。先ほどまで患者さんがいらし
「それは思いつかなかったです!!そういう使い方も出来るのですね!!今度大阪で待ち合わせて一緒にバーに行ったりフレンチでクレープシュゼットを味わったりします!!いやぁ、良いコトを聞きました!!有難うございます!!」 多少は酔っているのかテンションが高い呉先
先ほどから山看護師の馬鹿な発言で毒気を抜かれていたのかもしれない。少なくとも職場では祐樹の周囲に心の底から馬鹿だと思った人間は彼女しかいなかった。そして研修医時代というか最愛の人と会うまで時々行っていたゲイバー「グレイス」では「愛すべき馬鹿」は確かに居
というか、関さんが立ち去った瞬間から呉先生は可憐な見かけとは裏腹に豪快な感じで大笑いしている。ただ、このバーは適度な間隔で席が開いているので他のお客さんの迷惑になることはないが、イギリスの貴族の邸宅を模した空間よりも、学生時代にたまに柏木先生などと行っ
親身さが交じる声だった。祐樹としては激甚なストレスで胃に穴が開いて血を吐くまで山看護師の尋問を続けたい気分だったが。胃潰瘍の患者さんを救急救命室で診てきたが、胃に穴が開くほどだと激痛にのたうち回る羽目になる。山看護師と柳田先生の所業はその程度の罰を受け
「ちなみにどのような曲をお弾きになられるのでしょうか?」 関さんの答えは普通のお店なら一歩前進と捉えられるが、このホテルはゲストに嫌な思いをさせないとか、相手の気持ちをほぐすことにも重点を置いている。予約の電話でも例えば「私は〇〇と申しますが、お客様のお
「えっ!?そのう……、一応は入れています……けど……」 何だか急に歯切れが悪くなった。最愛の人も五秒ほど口を噤んでいた。そして祐樹としては情けないが突っ込むべきトコロが見いだせない。「先ほど柳田先生にブランド物のバックを貰ったりイタリアンを奢って貰ったり
確かに赤いベリー類のシャーベットにはブルーベリなども含まれているので呉先生の感想通りビタミンも豊富そうだ。スタッフが笑みを浮かべてシャンパンを注ぐと白い泡が細かく弾けている。「美味しそうですね。頂きます!」 呑むのではなくてスプーン状の物で掬っている感
何だか縋るような表情で聞かれた。「そうです。貴女のご主人と柳田先生の奥さんに支払わなければなりません。あとは、養育費をお嬢さん達に支払う必要がありますね。男の子と比較すると女の子にはお金が掛かるという統計結果も出ています。養育費はお子さんの権利ですから
◇注意◇小説には「鬼/滅/の刃」アニメ未到達の部分が含まれています。主要なネタバレではないですが、何が何でも知りたくない読者様はスルーお願い致します。ちょっとくらいなら良いよという読者様だけお読みください。この回を知らなくても話の筋は分かります。_____
もしかして初めて現実に向き合って恐怖心を覚えたのかも知れない。今までの彼女の供述(?)には何だか開き直りと自己陶酔の気持ちしかなかったような気がする。「更に申し上げれば、経歴というか成育歴やお育ちを気にするような家と縁組でも決まった場合、婚約者側が離婚
教授職にそこまでした場合は系列の病院に左遷されるのが病院の慣習だが、呉先生を惜しんだ斎藤病院長が仲裁に入って医局を出てブランチ設立を許されたと聞いている。「悔しそうではありましたが『医局の誉(ほま)れだ!素晴らしい成果で医局の長として誇らしく思う!』とか
「祐樹、山看護師には誠意が全く感じられないのだが?」 涼し気な切れ長の瞳に真剣な光を宿して、しかも廊下だというのに祐樹の腕を細く長い指が掴んでいる。二人きりなら大歓迎な動作と表情だが、人目(ひとめ)の有る此処(ここ)ではまずい。ただ、最愛の人も周りを気にして
森技官は九州に居るらしいので呉先生も時間に余裕があるだろう。ネクタイとスーツ姿の自分とは異なって白衣の下はソフトクリームの色のセーターを着ている呉先生は遠慮がちだ。「あのバーは、ドレスコードはそんなに重視されないので大丈夫ですよ。外国からの観光客と思し
「祐樹も当然察しているとは思うのだけれども、山看護師はあの(・・)画像とか動画が世間に流出されるのを恐れている。しかし、裁判所に傍聴に行った人や裁判記録を閲覧した人以外は分からないままだろう。その相違をわざとぼかした言い方というのがどうしても思いつかなくて
「身分制度が厳格だったフランスでも、平民が貴族に劣らないほどの財産を持っていて、令嬢に何かしらのマイナスの事情があれば結婚は許されたようですね。ベートーヴェンはオーストリアのウイーンに住んでいましたが、フランスよりも平民と貴族の結婚は緩やかだったみたいで
病院内は言うまでもなく走ることは禁止されている。患者さん、しかも点滴スタンドと共に歩いている人なども多いので当たり前だが。今二人がひっそりと会話をしている教授執務階は階下とは別世界のように静謐かつ豪華な空間だ。だから異なった意味で走る人間は居ない。と言
呉先生の勢いに呑まれてしまったのか曲選びまで口走ってしまったが、楽器と言えば学校の音楽の時間に演奏しただけで、森技官とか柏木先生のようなレッスンはしていない初心者だ。「しかし、全く経験がない私がピアノを演奏出来るようになるのでしょうか?しかもクリスマス
「あの薬品保管室は使用者の長岡先生の上司である私が最高責任者です。これが貴女の自宅を勝手に撮ったならば法的に問題はありますよ?しかし、道路などの公的な場所も実はカメラで撮っていますよね?責任者である私が許可した場所というのは、例えて言えば自宅に似ているの
「ウチの同居人はかなりの腕前だそうです。中学校の時その道の人なら誰でも知っているコンクールで生意気にも全国優勝していますよ、無駄に才能はあるみたいですね。といっても、ピアノが好きだとかは一切なくて、あ、教授はご存知かどうか分からないですが、同居人とお姉さ
「上を見たらキリがないと思います。それに、長岡先生は内科医としてのハードな仕事をする対価としての報酬を貰っているのです。彼女の奇跡的な投薬のお陰で一日二件の手術(オペ)で済んでいます。彼女が居なければ二件どころではなくなってしまうのが現状です」 長岡先生は
「クリスマスのプレゼントなのですが、今年は何を贈ろうかと思案に暮れていまして。品物よりも想い出に残るものが良いと祐樹が言っていたのです……」 祐樹がふと呟いた言葉はまるでナゾナゾのような気がする。プレゼントが物ではなくて記憶にのみ残る物というのが想像でき
「香川教授、お裾分けですわ」 長岡先生と彼女の個室で明日の打ち合わせが終わったタイミングで両手を使って抱えるほどの大きな箱を渡された。自分の「お裾分け」の概念を超えているような気がしたが、何事にも鷹揚な長岡先生らしい。「有難うございます。遠慮なく頂きます
「そうです。それに『ディナーの記念日』とバックを貰いました。長岡先生のようにエルメスではないですけれども……」 何だか悔しそうな感じも交じる誇らしそうな表情だった。長岡先生が数えきれないほどのバーキンを持っていることはナースの間で語り草になっているのは知
「で、いつ親密な関係になったのですか?」 山看護師は何故か誇らしそうな笑みを浮かべている。既婚なのにモテるとでも言いたいのだろうか?「親密というのは初デートでしょうか?それとも二人が結ばれた記念すべき日でしょうか?」 どうやらコトの重大さが全く分かってい
「でも!旦那さんが単身赴任している人もいますよね?そういう人は同居義務を果たしていないからって慰謝料を支払うなんて聞いたことはありません!!」 旧態依然のヒエラルキー制度が色濃く残る大学病院で教授職に言い返す看護師はそれほどいない。唯一認められているのは
「馬鹿は罪・無知は罪・前後の見境ないのも罪でしょう。予(あらかじ)め最悪の事態を考えていないのはもっと罪ですね」 森技官の言った通りだとしみじみ実感した。厚労省イチの切れ者として周りにそれほど馬鹿はいないハズだが……。それはそうと世間の風潮では容認の方向だ
体調が悪くてずっとパソコンにさわれません。(仕事では使う)発熱が続いていますが、マイコプラズマなどてはないようです。お医者様の許可が出たら小説再開致しますのでお待ち頂ければと思います。そして、ブログ休止でお見舞いが♡教授大好き♡様、しょうこ様、ゆき様あり
「でも!誰とは言えませんけれど、皆(みんな)不倫なんてしています!それでも慰謝料を取られたり離婚したりしていません!!」 ……小学生の言い訳かと思ってしまう。外科医としては気の長いタイプだと自己客観視している祐樹もあまり低俗な戯言(たわごと)を延々と言われる
「慰謝料って女が支払う必要はないですよね?男性が支払うモノでしょう、それって」 は?何を言っているのだと呆れてしまった。最愛の人は内田教授の椅子に座っていたが、馬鹿丸出しの山看護師の言葉を聞いて呆気に取られた表情で祐樹を見上げている。「いえ、二人はお互い
必死というか決死の表情で言っている柳田先生だったが、それは悪手(あくしゅ)だろうと思った。不倫を奥さんにバレるというのも最悪の事態だろうが、最愛の人は長岡先生がLINEで共有した画像を見て柳田先生だと判断し、内田教授と最低限の善後策を相談したに違いない。
「さて、二人共既婚者だったと記憶しているが?」 内田教授が怒りを内に秘めた低い声を出している。当事者にとって最悪の状況だ。「はい、その通りです」 柳田先生は悄然とした雰囲気だった。「陰謀だ!」とか「はめられた!」とか言っていたのは単に取り乱していただけな
政略結婚でも愛情が生まれることもあるだろうが、稀なような気がする。お互いを熱烈に愛し合う二人の関係は革命前のフランスの場合、愛人と呼ぶ方(ほう)がしっくり来るような気がした。ヨーロッパの王族の肖像画が多数残っている理由も相手側に「こういう容姿ですよ」と画
読者様はいかがお過ごしでしょうか?コメント頂いたり、にほんブログ村・人気ブログランキングポチしてくださったり読んでくださったりでとても嬉しいです。書いていて楽しいので続けていますが色々とお気遣い頂き有難うございます!私はいきなり寒くなったせいで発熱を伴う
祐樹は柳田医師を押さえつける役目をこなしながら当惑の眼差しを向けてくる最愛の人に「座っても大丈夫ですよ」という意味の目配せを送った。内田教授の椅子に最愛の人が茶道の所作のような滑らかな感じで腰かけている。「本来ならば、香川教授や田中先生の貴重なお時間を
慌てている天使のような風情で最愛の人も祐樹の括れをやや冷たい唇で挟んで舌全体を使って舐めてくれた。祐樹の屹立した楔の熱に唇の感触が心地よい。何だか同じ愛の動作をしていると、自分のモノを自らが口淫しているような錯覚を覚えて脳が焼ききれそうなほど良い。物理
「ちょっ!手を放せよっ!」 殺気立った凄い目で睨まれた。ただ、祐樹だってこの件で色々と動き回って時間をコイツらに割かれてしまったという気持ちが有るので睨み返すと怯んだような表情を浮かべて目を逸らしている点が間抜けだ。もともと目力(めぢから)には自信がある。
薄紅色に染まった手で瑞々しい双丘を開いて花園へと指をゆっくりと挿れている。二本の紅に染まった細い指が自らを慰めているような感じで抜き差しをしているのも良い意味で意外過ぎる眺めだった。最愛の人は祐樹が居ないと劣情を催さない人なのは知っている。だから自慰も
厚手のバスローブから匂い立つような素肌が見えている。身じろぎしたせいで露出度がわずかに上がって鎖骨の窪みが健康的な色香をふんだんに振りまいていた。その後もシャンパンやワイン以外は祐樹のナイフやフォークで最愛の人の唇へと運んで、最愛の人も祐樹に食べさせて
長岡先生の個室の廊下も人気(ひとけ)がないのを良いことに全力疾走した。後ろをチラリと振り返ると柏木先生と長岡先生も平気な顔で走っている。……最後尾の久米先生はどうやら走り方を思い出したようで、右足が動くと左手を振っている。程なくして薬品保管室に着いた。「
「キャンドルの炎がとても綺麗だな」 腕に抱えた大輪の百合の花束よりも綺麗な笑みを浮かべた最愛の人がため息混じりに言ってくれた。「どうぞ」 立ち上がって椅子を引いた。彼の昨夜の体調不良がまだ続いているのではないかと案じていたので、早く座って欲しい。「いや、
「女、いや女性の顔は何とか確認出来たな。この画像ではなくて静止画として残しておけないだろうか?」 柏木先生が長岡先生に向かって言っている。柏木先生が予想していた通りの立ちバックの体位で、女性がキスを強請る時に顔が一瞬見えた。ただ、その顔に見覚えはなかった
こんな目を惹くバッチをスーツのフラワーホールに付けていたら絶対に記憶に残っているハズだ。「今までは何となく気が引けて付ける気がしなかったが、祐樹とお揃いになったので心臓外科学会に二人で付けて行こうと思うのだが、どうだろう?」 最愛の人は胸に抱えている白
「そんなお金を出すのは嫌だと判断されたらお別れすることをお勧めします。その恋人さんも奥さんに慰謝料を支払わなければいけない立場なので、今までのようなデートは出来なくなるでしょうし、お子さんがいて、しかも離婚ということになれば養育費を恋人が支払う義務がある
何気なく聞いてみたら、彼には心当たりがあるような笑みで返された。「それは見てのお楽しみということにしよう。多分、祐樹も喜ぶだろうし、それを付けて外科医の前に出れば感心されると思う」 「付ける」ということはトロフィーとか記念の時計などではなさそうだ。時計
「単に相手にお金を遣いたくないからなのでは?言葉は無料(タダ)ですからね。それでいて相手をうっとりさせることが出来るので一石二鳥のような気がしますよ。あとは……私も利用したことがないですが、通りかかったことは有ります、ファッションホテル」 白々しくも真っ赤
天蓋付きのベッドの上で彼らしく几帳面に結ばれたバスローブの紐を解いた。シャワーを浴びたてのしっとりとした艶やかな素肌を露わにさせた。慎ましい桃色の粒がツンと尖っているのもとても綺麗だ。愛の行為が深まるとルビー色に染まっていく、その過程も大好きだ。いつも
「それは今後の久米先生の言動によりますね」 祐樹だって緑色の唐辛子のペーストは作りたくない。それに台所作業をしていたら最愛の人が絶対に「何を作っているのだ?」と聞いてくるだろう。彼に幻滅させることは絶対にしたくない。食べるためではなくて嫌がらせのために料
『それは嬉しいです。あの抗鬱剤は一晩ぐっすりと眠ることが出来ると思いますので、朝になったらきっと精神も回復していると思います。私の診立てが狂っている可能性も勿論あるので、明日の朝の教授が一時的な抑鬱(よくうつ)状態だったら、遠慮なく連絡下さいね』 朗らかで
最愛の人が淹れてくれた世界一美味なコーヒーを向かい合って飲んでいるだけで幸せな気分になる。時間が有れば、彼の仮説を聞いてみたいとは思ったが、あいにくそんな時間の余裕はなかった。ただ、あんな人通りの少ない場所なので、密会場所を鵜(う)の目鷹(たか)の目で探し
「では同じベッドで休むことにします。アドバイス有難うございます」 確かに最愛の人は祐樹の添い寝(?)で精神の安寧を取り戻していたなと思いつつ、呉先生の精神科医としての優れた資質に感心した。患者さんの気持ちに寄り添っている点と見事な投薬には舌を巻いてしまう
「困ったことですか?それは一体何ですか?あ、有難うございます。貴方のこのコーヒーの香りも何時もながら素晴らしいですね。味も最高ですし」 祐樹は食べ終わった松茸尽くしのランチの皿を片付けながら最愛の人に笑みを向けた。彼はくすぐったいような、そして誇らしげな
『はい?何でも仰って下さいね。田中先生も肉体的にも精神的にもお疲れでしょうし、私で役に立てるなら喜んで』 祐樹は疲れているのだろうか?もしも、手術に失敗していたら反省の念や自己嫌悪でいっぱいになって、この客室でどんよりと過ごしてしまうような気がする。最愛
向かいに座っている彼は納得したような、そして静謐な表情を浮かべている。「それには及ばない。LINEで何を書いてもそれは本人の自由だと思っている。要は薬品保管に駆けつけて証人になって貰えるだけで良いから個人的にはスルーしたい。祐樹の考えはどうなのだろう?」
「それはどうだろう?反社会性パーソナリティ障害、個人的には違うと思うな……」 お茶を一滴残らずお湯吞に入れてくれた最愛の人はお箸を取り上げる所作も水が流れるように綺麗だった。祐樹もコンビニなど無料で貰えるお箸などとはまるで別物のようなモノを取り上げて笑み
「省庁縦断で行うという大掛かりなインバウンド効果は個人的にむしろ良いことだとは思っています。しかし、国際公開手術は思いっきりパクリですよね。そういう良いトコ取りというか模倣は個人的に好きではないということです。ま、同居人が仕事として真剣に取り組んでいるの
「今にして思えば蛇よりもその教師の方(ほう)がより嫌いだった女子が多かったのでしょうね……。私の小学校の教卓には児童の机と同じように仕切りというか抽斗(ひきだし)部分の引き口がない仕組みでして、給食前にその教師は潔癖症なのか給食を食べ終わったらその中に常備し
何が起こったのか祐樹の居る場所からは死角になっていて分からないが、また何かやらかしたのだろう……。久米先生が祐樹の視界に入るように身体を動かしたと同時に椅子の背もたれに額(ひたい)を勢い良くぶつけて「痛(いた)っ!」と言っていた。おそらく礼をしようとして頭
「そんなことはお安い御用です。教会の牧師さんとか司祭さんの前で誓ったわけではないですけれども、二人きりで誓約しましたよね?『病める時も健やかなる時も』とか『死が二人を分かつと(・)も(・)』ずっと一緒だと。貴方が眠りの国に入るまで一緒に居ますよ」 最愛の人が
日本では医師が処方箋を書かないと手に入らない程度のことは知っている。ドラックストアで売っているならば呉先生が購入して封筒に入れたということも考えられるが、日本と同様の場合はどうやって入手したのだろうかと気になった。「いや、抑鬱(よくうつ)剤はアルコールと
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呉先生はそういう配偶者に「見せてはならないもの」を分別(ぶんべつ)しているのだろうが、AとBの区別は素人目では分からなかったが、専門医に任せよう。きっと呉先生なりの専門知識で選んでいるのだから。「香川教授、内田教授と配偶者に会うのだろう?その時には代理人
何しろサンタクロースが持っているような大きさの袋を花束のように抱えている。そしてその顔は無邪気で無垢な笑みを浮かべていて、とても綺麗だった。「その麻袋みたいな袋の中は、ドライブのお供ですか?」 彼が愛用しているフランスの老舗ブランドのカバンを買ったら付
「庶民的なお店ですよ?いやしくも教授職にいらっしゃる貴方にはそれなりの恰好でいて下さらないと困ります。スーツも今のブランドで良いです!というより今のブランドを死守してください!教授が量販店で売っているスーツを着ていたら医局員はそれ以下の物しか着ることが出
杉田弁護士も離婚問題を扱っているので証拠としてこういうモノも見慣れているに違いないのに驚いたような表情を浮かべている。「これはこれは、証拠としては完璧だね。動画と音声データも有るんだろう?」 彼がごくごく平静な表情で頷いている。呉先生もだが、最愛の人は
「例えば、京都に来ている政府要人とか国賓などが狙撃されるなどの重傷を負って一刻を争う事態の場合にウチの病院に搬送が間に合わないということにでもなれば事務局長も考えを改めるのではないか?」 絶妙に柔らかいお餅が出汁と絡み合ってとても美味しい。「ああ!なるほ
「呉先生の不定愁訴外来は予約制なのです。学会に出席するためとかで休診も有りますよね?また、的外れかも知れませんが先生の事務所に相談に来る人って勤め帰りとかが多そうですけれど?それにアポイントメントを取ってから来るのが一般的ではないでしょうか?」 世界一美
「祐樹、おはよう」 唇に味見をしていたと思しき塩味と出汁(だし)の香りのする唇が重なったなと思った瞬間に深い眠りから一気に覚醒した。「明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします」 親しき中にも礼儀ありだと思って挨拶をした。 「祐樹、明けまして
その向かいに腰かけている祐樹の前には薫り高いホットコーヒーが、そしてその隣に座っている呉先生にはアイスコーヒーを手際よく並べている。「さてと……」 冷コーなるモノを一口飲んだ杉田弁護士は居住まいを正した。「話を戻すが、精神科医としてのご意見を是非お伺い
明けましておめでとうございます。旧年中は拙ブログに遊びに来て頂いて、そしてコメントやポチまで下さって有難うございました。コメント返せないのですが、とてもとても励みになっています!!色々差し入れをしてくださった方も本当に本当に有難く思っています。今年も出来
「あぁ……っ!ゆ……祐樹……っ、とても……っ、悦……っ!祐樹の熱い……っ飛沫(しぶき)が……脳を……赤いマグマのように……っ、溶かしていく……っ、ようで……っ」 紅色に染まった口から甘い断末魔の声が聞こえたのと同時に祐樹の腹部に熱い真珠の放埓が勢いよく飛び
「分かりました。呉先生は?」 レイコーというモノを最愛の人は知っているらしくごくごく平静な表情だ。「俺はアイスコーヒー砂糖とミルク入りでお願いします。教授はそのゲイバーのレジェンドなんですね。凄いです!!だったら、一度ご一緒しませんか?」 呉先生は怖いモ
「え……っ?そのう……」 紅色の唇から銀の糸が滴っている様子もとても綺麗だったが濡れた眼差しが困惑に揺れている。「交わりの……形を変えるのは……普通なのか……?」 いったん蠱惑的な花園から退くことにした。名残は惜しいものの、世界で一番大切な彼に誤解を与え
「すみません。どこかでお会いしましたっけ?不定愁訴外来の呉と申します。どうか宜しくお願いいたします」 呉先生の外見は可憐な野のスミレといった風情なのは本当だが、怒らせたら非常に怖い。だから祐樹も内心で思っているだけで口に出したことはない。ただ、杉田弁護士
「聡、それは嬉しいお言葉です。貴方の舌戯は最高ですからね。雄弁な舌だけではなくて、喉の素敵な締め付け具合も……。想像しただけで、もうこんなになってしまいました……」 最愛の人の薄紅色のしなやかな指が触れている個所に手を重ねた。祐樹のソコは現金な反応をみせ
コーヒーをトレーに載せた呉先生が祐樹と最愛の人を可憐な笑みで交互に見ている。「お二人っていつまで絶ってもラブラブなので羨ましいです!ウチは同居人とそれなりに仲良く暮らしていますけれど、夜中に玄関先までたどり着いて寝てしまっているところを見かけたら寝室ま
「良いですよ。何でも言ってください」 どうせロクなことは言わないだろうなと思ってしまう。外科医としての天稟(てんぴん)は祐樹が羨むほど持っている。その点は医局の中でも異論を唱える医師はいない。そしてその点は褒められている。まあ、内心やっかむ医師もいるだろう
「こうして祐樹と身体を密着させて呑むシャンパンは最高に美味しいな」 最愛の人が感に堪えたような言葉を紡いでいる。「それは全くもって同感ですね」 グラスが空になったのを見てシャンパンを注いだ。祐樹のグラスにもボトルを傾けた。早く呑みきってしまって両手で彼
「実はウチの医局員が不倫しているんじゃないかという疑念が完璧に晴れたんで、情報を解禁しても良いと思ったんだ。医局長判断で、な。もちろん医局員が不倫の当事者の場合だったらそんな呑気なことは出来ないんだが。黒木准教授が鍵の件の教授通達をしただろう?あれにも不
無事届きました!教授大好き♡様、しょうこ様、ゆき様いつもいつも感謝です!読みに来て頂いているだけで嬉しいのですが、過分なお心遣いありがとうございます。◇年末年始は公私ともに忙しいので、ブログ更新がまちまちになったり最悪、更新出来なかったりします。続きを楽
艶めいた声が祐樹の舌の動きで乱高下するのも最高にそそる。「私のためにピアノを弾いて下さった時、聴覚はもちろん曲を追っていましたが、視線はこの指とそして、大輪の薔薇のように綺麗な横顔を交互に遣っていましたね。目が二つしかないことを後悔しました。両方とも同
「……国際公開手術の情報は当事者だけに秘匿しているわけではないですよね。 情報にアクセスさえすれば、少なくとも外科医ならば知ることが出来ますよね? 田中先生に反感を抱いている外科医が意地悪く事態の推移を見守っていて、誠に残念ながら億が一の結果になった時に
横並びで大人二人がやっと通ることが出来る細い道をくねくねと歩く。ウチの大学の近くにもこんなゴチャっとしたところがあったんだなって初めて知ったんだけど。 ツクツクボウシも何だかバカにしたように鳴いている。「西崎さん」 幸樹が先を歩いている西野警視正に呼び
「それは……非常に申し上げにくいですが……、明日にでも病院中に広まりますよね……。 教授が、田中先生の手術に億が一の危惧を抱かれるのは尤もですし……」 呉先生はコーヒーカップの湯気を細い顎に当てて唇を閉ざしている。「億が一の可能性が的中すれば、病院内の祐
「飲み慣れた味だと平常心というか、いつも日本で執刀している気持ちを取り戻す一助になるかもと思って……。 もしかしたら私の自己満足だけかも知れないのだけれども……」 何だか普段と異なって訥々とした話し方が祐樹だけに聞かせるモノではなくて、彼自身にも言い聞か
「合宿の時はさ、上野の秘書役として完璧に振る舞ってたよね? カツオのタタキをさ、誰にも邪魔されないように、賄いの食事を作りに来るわかば会のパートの主婦に生チョコを予め差し入れして腹痛を起こして無理やり欠席させたり、有吉さんとか麻田さんとか料理の上手い人に
「どこのホテルに泊まるかなど家族(・・)には伝えるのが常識だと思っていました」 「家族」と発言した時に彼の笑みが大輪の薔薇よりも瑞々しい笑みの花を浮かべている。「そうだな。どうやって知ろうかと必死に考えていた時に祐樹が教えてくれたのだから。それにしても家族
「そんなのは簡単なんですよ。 ウチの小さな城に来ることが出来る患者さんは基本的に自力歩行が可能な方です。 そして、入院生活は暇を持て余していますから、人間関係も出来るのです、患者さん同士のね。 その中でも最も影響力の強い人かつ、入院患者さんにしてはという
「フリーの雑誌記者とでも紹介してくれたら。母校に行って大野と君たちが話している時、私は他人のフリをしていたからね。まさか知り合いだとは向こうも思っていないだろう」 「フリー」と「フリ」ってもしかして大阪人の真似でお笑いを誘っているんかなかぁって思ったけど
その手の先に呉先生のほっそりとした身体が大理石の壁に凭れ掛かっていた。何だか疲れた感じだったので足早に近づいた。「すみません、お待たせしてしまいましたか?」 呉先生はスミレの花のような笑顔を浮かべて自分の顔を見た後に細い眉を寄せている。「お具合が少々悪
何しろ、同じ部屋に泊まって愛の行為をしなかったのはごくごく少ない。 条件反射的に、ホテルの部屋で二人きりになったら愛の交歓をするというのが祐樹の肉体にも精神にも深く刻まれている。 例外は、祐樹の実家に二人して行き母に紹介した時が最初だった。 さほど世故(
「それはどうなのかな? ちゃんとした部活なら教授が顧問みたいなことをしているよね? ウチだって『司法試験研究会』みたいに真面目に勉学を取り組むようなトコだと、教授も応援しようって気になるらしいしさ。 でも、サークル、しかもテニスとかスキーとかそういうのを
「この文面が看護師や事務局の女性に拡散しているということですよね」 溜め息を辛うじて押し殺して確かめた。「はい。私が見聞きした限りだと、田中先生のファンの方(かた)が入っているライングループは500人ほどだそうです。 何しろ病院一のバレンタインチョコ獲得数
「私も舞踏会のことまでは知らないが、あれも相当派手な催し物だろう? 先ほどのタワーブリッジが作られたビクトリア女王時代は世界中に植民地を持っていた世界に冠たる大英帝国だったから、舞踏会も頻繁に開催されていたような気はするが、今はどうなのだろうな? 尤も祐
「ただ、テレビにも良く出ていらっしゃるので、声は分かっていたようです。電話を受けた私の部下も。 しかし、どう考えても別人としか思えなかったと。いや、テレビ局のマイクは良いモノを使っていますので、電話で聞くと声が異なるというケースは考えられますが、それにし
旧年中は遊びに来て頂いたり、ポチって下さったりコメントやプレゼントを贈って下さったりと、本当に有難うございました。本年はリアル生活・お仕事で多忙になるんですが……、ブログ更新もなるべく頑張りますので長い目で見て頂ければ嬉しいです。本年も何卒よろしくお願い
何となく並んで歩きながら聞いてみた。「いいえ、ただ『田中先生を語る会』でしたっけ? 正式名称は忘れましたがとにかく、そういう田中先生のことを語るライングループが有りまして。 私は(・)入会していないのですけれども、手術室のナースから画面を見せて貰いました
「実は……搭乗していた飛行機でドクターコールが鳴ったので、名乗り出ました」 本当はレアチーズケーキをお豆腐の冷奴と思いっきり勘違いをして醤油を掛けてしまったエピソードも持ち合わせていた。 そしてCAさんに露見するのが恥ずかしくて完食した。 しかし、ケーキも
「いや……私が付けて良いか?」 欲しいなと思っていたが、なかなか買う機会がなかったアップルウオッチだった。 相変わらず最愛の人のプレゼントは祐樹が欲しいと思っている物をピタリと当ててくる点も愛情を感じる。「勿論です。有難う御座います」 上着を脱いでワイ
だって、さぞかしいっぱい手に持っているとか台車?押し車?とにかく呼び名は度忘れしたんだけど、手で運び切れない物を載せて運ぶ企業に置いてある運び道具みたいな物を持って戻って来るかと思っていたら、何も持っていなかったのだから。 幸樹も切れ長の目を驚いたよう
「今の貴方のように薄紅色の指には良く映えると思いまして……。 これはパパラチアサファイヤという石だそうです」 瞠った目が珍しそうな煌めきを宿している。「そうなのか……?ルビーとサファイヤはコランダムだろう。紅く発色すればルビー、青くなるとサファイヤと呼ば