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映画・演劇のレビュー

宇井彩野『愛ちゃんのモテる人生』

2024-12-16 05:13:00 | その他
この手のイラスト表紙本は読むことにテレるけど、勇気を出して読み始める。やはり当たりだった。攻める。ガンガン攻めてくるからしっかり受け止めなくてはならない。同性愛者でフェミニンで自分の性状を包み隠さずあからさまに世界に伝える。配信動画でみんなに楽しんでもらう。自分の生き方を公開している。共感する人たちもいるけど、きっと気に入らないと嫌悪する人たちもたくさんいるだろう。だけど気にしないし、関係ない。自 . . . 本文を読む
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カラ/フル『熱帯夜』

2024-12-15 18:57:00 | 演劇
深津戯曲にオダタクミが挑む。何故『うちやまつり』ではなく『熱帯夜』だったのか、が気になっていた。深津篤史の代表作に取り組むのは敷居が高いとでも思ったのか。本人に聞きたかったけど、それはまたの機会にしよう。仕上がった『熱帯夜』が素晴らしすぎてそんな疑問は瑣末な話だと思う。この作品のわからなさに痺れる。桃園会の同作品以上のわからなさ。これは『うちやまつり』の前日譚として書かれたスピンオフ作品である。独 . . . 本文を読む
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演劇集団☆邂逅『000号室より愛をこめて』

2024-12-15 14:16:00 | 演劇
今年のクリスマス公演は昨年に引き続いてしろみそ企画のなかしまひろきの作、演出。彼がふだんの邂逅とは一味違う世界を見せてくれる。ファンタジーだけど、今回はあまりに等身大の人たちの群像劇でこんな邂逅は見たことがない。なかしまさんだからこそ可能だった邂逅ワールド。ここは昭和に建てられたオンボロアパート。そこで暮らす訳あり住民たちと管理人(なんと!中村多喜子が女子を演じる)のやり取りが描かれる。『めぞん一 . . . 本文を読む
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素の会『父と暮らせば』

2024-12-14 13:03:00 | 演劇
劇団大阪、シアター生駒の杉本進が演出、主演する。娘を演じるのはシアター生駒の中西康子。もちろんこれは言わずと知れた井上ひさしの傑作戯曲である。公演会場は東生駒ギャラリー宗。狭い空間が心地よい。このふたり芝居を朗読劇として見せる。原爆投下から3年後の広島。ひとりぼっちの娘のもとにあの日亡くなった父がやって来る。なんと客席と役者たちとの距離は1メートルない。こんなにも近くで芝居を見るなんて生まれて初め . . . 本文を読む
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石野晶『いつか会ったあなたと、きっと出会う君に』

2024-12-14 06:57:00 | その他
このかわいい恋愛小説(この手のイラスト表紙の本)には少し身構えてしまう。だけど勇気を出して読み始めると、まさかの出会いもある。まぁこれは稚拙だけど、確かな覚悟には貫かれているからよしとしよう。過去を書き換えてふたりがもっと幸せに出会うために。そんなドラマである。お話の仕掛け自体は悪くはないとは思ったが、整合性に振り回されてお話があまり面白くならないのがツラい。辻褄合わせは絶対必要だけど、一番大事な . . . 本文を読む
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古内一絵『最高のウエディングケーキの作り方』

2024-12-14 04:41:00 | その他
『最高のアフターヌーンティーの作り方』に続く涼音と達也のその後を描く。とうとう結婚に漕ぎ着け念願の自分たちの店を開店させることになったところから始まる。アフターヌーンティーに憧れて老舗桜山ホテルに入った涼音が11年勤めた職場を離れる。幸せの絶頂のはずだったのに違和感。が。夫婦別姓の問題がふたりの関係に翳りを与える。日本の婚姻制度の不備が若いふたりを悩ませる。昔からのやり方を頑なに守ることで既得権を . . . 本文を読む
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『はたらく細胞』

2024-12-13 18:48:00 | 映画
お正月映画。子供から大人まで楽しめるファミリーピクチャー。「翔んで埼玉」や「テルマエ・ロマエ」シリーズの武内英樹が監督する。永野芽郁が赤血球役、佐藤健が白血球。人間サイドの主役は阿部サダヲ、その娘を芦田愛菜というキャスティング。そこに豪華俳優陣が傍に揃う。永野芽郁が素晴らしい。あまり何も考えずにひたすら酸素を運んでいるだけだけど、それがいい。純粋に楽しんで仕事をしている女の子って感じ。とてもキュー . . . 本文を読む
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河崎秋子『私の最後の羊が死んだ』

2024-12-12 18:08:00 | その他
カバーのイラストからこれはなんだかかわいい小説ではないか、と思って読み始めたら、なんとまぁこれは小説ではなく、河崎秋子が羊飼いだった頃の話。というか、彼女は作家になる前は羊飼いだったのだ。大学卒業後、羊飼い修行をしてやがて2匹の羊からスタートする15年の軌跡を描く。これはそんな彼女が羊飼いを止めて専業作家になるまでのお話でもある。だからこれは小説なんかではなくノンフィクションなのである。丁寧にこれ . . . 本文を読む
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藤野千夜『また団地のふたり』

2024-12-11 22:48:00 | その他
まるで『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』の世界。なんでもない日常のスケッチだ。あのまるであれらの短編アニメを見ているよう。1話10分くらいのスケール。(読んでたらもっと短いけど)毎日の日々が綴られる。特別なことは何もない。先日TVドラマ化された『団地のふたり』の続編である。小林聡美と小泉今日子が主演して話題になった。なっちゃんとノイチ、ふたりは52歳。この団地で生まれ育った幼なじみ。大人になって . . . 本文を読む
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壁井ユカコ『不機嫌な青春』

2024-12-11 20:20:00 | その他
『2.43清陰高校男子バレー部』の作者が贈る青春小説。4篇からなる中短編集。いずれも中学生が主人公である。時代を超えてあの頃と今をつなげる作品がふたつ。最初の『零れたブルースプリング』はお互いを偽って文通する男の子たちの話で、あまりに可愛くて笑える。昔こんな映画やドラマがあったような気がするけど。それくらいレトロ調お話。風船で届いた手紙から始まるふたりの往復書簡。怜を女の子だと勘違いした満夫。仕方 . . . 本文を読む
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『同じ下着を着るふたりの女』

2024-12-10 20:18:00 | 映画
2021年の韓国映画。新鋭キム・セイン第1回監督作品。こんな映画をよく作った。そして僕も最後までよく見たものだ。2時間20分。苦痛の時間。だけど目が離せないし、気がつけばラストまで見ていた。えっ?もう終わりなの、と驚くばかり。ここで突き放されてもオロオロするばかりだ。これは母親と娘の戦いの記録である。団地に住むふたり。娘はもう20代後半になるのに、母親のもとから離れられない。だが彼女は母を心から憎 . . . 本文を読む
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まはら三桃 他4人『くらくらのブックカフェ』

2024-12-10 09:31:00 | その他
シリーズ第4作。短編連作で5人の作家による共作。1話完結だけど、しりとり式でお話が展開していく。まはら三桃から始まって廣嶋玲子、濱野京子を経て、菅野雪虫、工藤純子に至る。現代児童文学の最前線を走っている彼女たちがタッグを組んで子どもたちに向けて本を読むことの喜びを伝える。  今回は図書館や本屋ではなく、ブックカフェ。しかも古い倉を改装したカフェである。今回も読書を通してさまざまな出会い . . . 本文を読む
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吉田修一『罪名、一万年愛す』

2024-12-09 20:18:00 | その他
今回の吉田修一はエンタメ作品。絶海の孤島で起きた失踪事件を描く本格ミステリに挑んだ。ミステリはあまり好きではないが、吉田修一なら喜んで読む。だけど最初の100ページほどはいささか苦痛だった。なんだこれは!と思うようなあからさまによくある安易なTVドラマ。2時間もののサスペンス劇場を見る気分。あるいは『犬神家の一族』かなんかを見ている気分。孤島に招かれた探偵と老警部(元警部)。招いたのは88歳になる . . . 本文を読む
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坂井希久子『赤羽せんべろまねき猫』

2024-12-09 17:22:00 | その他
東京に行った時、赤羽のホテルに2泊したことがある。JR赤羽駅から続く商店街にはおびただしい飲み屋が確かに続いていた。この作品の舞台はそんな既知の光景だ。なんだかそれだけで身近な気分。もちろん赤羽はとてもいい町だと思う。滞在中はいつものように朝にはフラフラ小一時間街歩きをした。荒川河川敷にも行ったし、かなりの範囲をぶらぶらした。楽しかった。知らない町のなんでもない日常の時間。  そんなこ . . . 本文を読む
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王様企画『雲の糸』

2024-12-09 03:57:00 | 演劇
このタイトルを読んだだけでは気づかないだろうが、このタイトルを音で聞いたらなら「これはもしかして、」と思うことだろう。もちろんそうである。これは芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を下敷きにした作品である。(と思う) とは言っても、まるでお話は違う。芥川をリメイクしたわけではなく、蜘蛛も雲も出てこない。ただ手を差し伸べるものに縋りたいという想いは共通する。僅かな細い糸にでも縋りつきたい。だけど叶わない。 . . . 本文を読む
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