BtoB Online誌:Hewlett-Packard社の新CEO、Mark Hurd氏は、前職はNCR社のCEOだったことはニュースなどでよく知られていますが、その前はどんな仕事をしていたか、御存知ですか? Mark Hurd氏はその前はNCR社のワールドワイド・マーケティング&全米セールス担当の副社長を勤めていたことは、あまり知られてはいません。
HP社も同様で、同氏に注目したのは彼がCEOとなってNCR社のビジネスに転換をもたらした2003年以来からだと言います。
■BtoB企業でCMOはキャリアの終着地点か?
BtoBの業界—特にテクノロジー系業界では、一般的にCMOやマーケティング部門のトップという位置は、CEOのポジションには直結しません。それどころか、そうした経歴はCEOへの野望の足かせにすらなるのです。「CMOはゴール、ジョブキャリアのひとつの終点です」と断言するアナリストすらいます。
とはいえ、いつまでもマーケティング役員が、執行役員、財務系役員、技術系役員の後塵を拝するだけではなく、マーケティングの経歴がCEOへの一歩となる兆しや追い風も吹きはじめています。
■BtoB企業でも遅まきながらマーケティングの立場向上
例えば前述のHP社では前CEOのCarleton Fiorina女史-彼女もマーケティングのベテランでしたが—のもとHPブランドの強化が重点的に行われました。そしてHPの最大のブランドだった女史が去った今また、HPブランドの強化が求められています。マーケティング自体がHP社のこれからを占う最大の事業課題となっているのです。
こんな調査結果もマーケティング部門の地位向上を証明しています。Institute of International Researchの最近の調査によれば、多くのビジネスリーダーにとって゛リーダーとなるために、マーケティングのスキルは絶対に欠かせないと信じられています。
1300人の回答のうち「マーケティングは必須事項」と答えたのが31%。オペレーション(20%)、財務(16%)、販売(11%)、技術(6%)をおさえ、堂々の第一位です。
近年、マーケティングの知識と経験が経営者にとって絶対必要なスキルである、と語られる機会が増えてきました。実際にCMOからCEOに出世する例も数少ないながら現れはじめています。
■職務経歴書では目立たないが、みんなマーケ担当者
申し分のない経歴を持つBtoB企業のエグゼクティブのなかには、マーティング部門で経験を積んだキャリアを持っている人もいます。しかしその経歴は経歴者の中では大きなスペースが割かれることはありません。
General Electric社のCEOであるJeffrey Immelt氏もマーケティング部門を担当したことがありますが、そのことを語ることはありません。
またUnited Parcel Service of AmericaのCOO- John Beystehner氏はかつてワールドワイド・マーケティング&セールスの上級副社長を勤めたほどの経歴ですが、語られる経歴は航空貨物分野における華々しい活躍ばかりです。
Office Depot社は05年3月に、新CEOとしてSteve Odland氏を起用しました。同氏の前職はAutoZoneのCEOで、その前はQuaker Oatsでキャリアを積んできました。Office Depot社が同氏をCEOとして迎え入れた理由として、マーケティングとマーチャンダイジングの経験が決め手になったとされています。
またIBMのAbby Kohnstamm女史は、将来BtoB分野のCEOになるための習得の一貫として副CMOを執務中です。
■小売り部門や小規模ビジネスではマーケティングは必須
同じくBtoB企業でも、小売り業を主にしている企業-例えばオフィス製品-は他のBtoB企業に比べると、マーケティングの経験に対して重きを置く傾向にあります。これは中小規模費ビジネス相手の商売が消費者相手のビジネスにきわめて近く、マーケティングが売りあげを決めるからです。
■これからはマーケティングの経歴は必須と、CEOは口を揃える
マーケティングのバックグラウンドを持ったエグゼクティブがBtoB企業のトップに上った例をもう少し紹介しましょう。
3ComのCEO、Bruce L. Claflin氏はかつてIBMでセールス部門にいましたが、1970年代にCadillacやPurinaの重役がスピーカーを勤めたマーケティングセミナーに参加してショックを受けたといいます。「70年代のIBMフェローと言えば傲慢きわまりないカラーを持っていたものです。ですから車メーカーや猫用ベッドを売っているような企業の話で何か得るものがあるか、と不満でした。ですが、たいへんたくさんのものを得ることができました。私はマーケティングの力というものに大変に感銘を受け、マーケティングのなんたるかを学ぼうと一から始めたのです」。
同氏は、マーケティングの経験は、現在の地位を得るうえで大変に重要な役割を果たしてくれたと語ります。「マーケティングはCEOの地位を得るための正しい方法のひとつだったと確信しています。強いマーケティング役員は、全社横断的な強い役割を果たすことができます。そしてそれは何かを創り上げる時にあたってはかり知れない価値をもたらしてくれるのです」。
Bill Campbell氏-Intuit社の現CEO-はマーケティングは、CEOになるための素養のひとつであると断言します。Cambell氏の経歴はColumbia Universityのフットボール部のヘッドコーチ、J. Walter Thompsonの重役、Apple computerのマーケティング副社長、と多彩な遍歴です。同氏が強調するのは、CMOの仕事の中にばマーケティングの知識を活かして新製品の開発に携わることが必ず含まれており、それが将来CEOになるために役に立つということです。「もしCMOが單純にマーケティング・コミュニケーションのみを行うものだと定義するのだったら、CEOへ道が続いているとは思いません」と同氏は言います。
SAPのMartin Homlish氏は、同社のセールス役員であるLeo Apotheker 氏に報告する立場にあるにも関わらず、ブランディングだけではなく、広い
権限を持っています。同氏の担当業務はセールス部門の管理、顧客のコンサルタント&教育も含まれますが、その最も重要な業務は顧客の声をフィードバックして、新製品開発に役立てるということです。
同氏は彼の仕事はSAPというグローバル企業の端から端まで及ぶと語ります。マーケティングは今や企業活動全般をコントロールするほどの力を得るに至っているわけです。彼は言います。「マーケティング部門は、暗号解讀リングみたいなものです。こうした仕事をそつなくこなせるスキルを持った人は、より大きなテーブルを得ることができるのです」。
*BtoB Online誌:Can CMOs make the transition to CEO?
http://www.btobonline.com/article.cms?articleId=23836