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山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

反則負け

2009-12-20 22:42:04 | Weblog
 今年の世界ジュニア選手権で「帯から下の柔道着を直接つかむことは反則とする」という新しいルールが試験的に導入された。これは双手刈や朽木倒などが多用され、ジャケットレスリングと呼ばれるようになったことを危惧したからである。試験採用では一度目が「指導」、二度目が「反則負け」となるものである。

 先日行われたグランドスラム東京大会においても導入されたが、やはり以前よりも上体が起きて組み合って技を出し合うシーンが増えた。個人的には、ルールによって特定の技に制限を加えることは如何なものかと感じていたが実際に柔道が良い方向に変化したのをみれば良かったのだろう、と感じていた。

 しかしながら、大会後にIJFから発表された新しいルールには驚かされた。それは今後(具体的には1月、韓国で行われるマスターズ大会から)は、「帯から下の柔道着を直接つかむ」をした場合に一回で反則負けとなる、というものである。相手の技に対応する場合には相手が技を仕掛けてからに限る(例えば内股は足が股に入ってからのみ掬投に変化できる)。あまりに極端なルールである。

 様々なスポーツをみても反則負けとなる行為は「危険な行為」が主なものである。柔道で帯より下の柔道着を握るという行為は危険な行為にはあたらない。柔道を良い方向に持っていこうというのであれば「指導」の反則を一回ごとに与えていくことで十分であろう。「指導」は技のポイントと違って重なっていくのでそういった技をかけないように警告を与えるには十分な効果となる。

 柔道着のズボンはある程度のたるみがあり握れるようになっている。私自身、双手刈などの技は行わなかったが、小内刈から朽木倒はよくつかった。教わらなくても柔道着の形態がそうである以上、自然的な行為で柔道着や足をつかむ技が生まれる。ということは、一般的な柔道選手は攻防の中で反射的にそういった行為を行ってしまう可能性が高い。それが「反則負け」になるとなったら・・・。

 イメージとしてはグレコローマン柔道といったところだろうか。足ばかりを取り合う柔道も面白くないが、グレコローマン的な柔道になってもある意味では面白みがなくなると思う。

 今後、このルールに対応するためには、練習でも慣れるために柔道着のスボンを持てないようにスパッツに上衣で行うのか???などと考えてしまう。

 以前にも書いたが、本当に危惧すべきは今回のルール変更という一つの現象ではない。IJFのトップ何人かによって柔道という競技を大きく変えてしまうルールがどんどんと決定されていく、それができてしまう組織に問題がある。また、こういったルール変更の説明が選手やコーチなどへ十分なされない。「双手刈なら禁止になっても許せる」と思っている人は多いだろうが、なぜ「巴投」がそうならないと言えるのか?今のルール決定のシステムでいけば、どんな技がいつ禁止されてもおかしくない。そのシステムにこそ危惧を感じるべきだ。寝技は見ていて面白くないから廃止、と言い出さないと言えるのか?

 このブログを初めてほぼ一年になる。書き始めたきっかけは、IJFの新しい法令に納得できなかったからだ。理事会のメンバーは会長指名が半数以上を占め、会長がイエスと言えば何でも通る体制となった。トップダウンで巧くいくケースも否定はしないが、この一年を振り返ってみて改めてIJFの向いている方向に疑問を感じる。
「言うばかりでなく行動を」という意見もあるだろうが、正直言って今の体制では誰が何を言っても通じないというのが現状なのである。決めるのはIJF会長である。彼に意見できる人間は誰もいない。この会長の権限を許す法令を日本を含めて多くの国が賛成して通したのである。

 唯一可能性があるとすれば選手が団結して行動を起こすことか。プロ野球の選手会や大リーグの組合のような組織があれば影響力を持つことは可能だろう。しかし、世界の選手達を一つにまとめるのは、これまた至難の技ともいえる。今年、IJFのなかにアスリート委員会が発足した。この委員会は実際に活動は始まっていないようだが、これがどのような活動をし、発言をしていくのか興味深い。

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Unknown (yzy)
2009-12-21 04:01:10
 おっしゃる通りだと思います。

 柔道の型を正すという意見と同時に面白くない技が禁止されてよかったという意見がネットでは多く見られたのに、私は納得いかない気持ちがあります。
 おもしろいなどという判断基準であれば、当然わかりやすい投げ技が重視されます。
 足技もよほど綺麗に決めない限り、タックルと同じで、転がしてポイント稼いでるだけだからダメという風に言うことも可能です。
 わかりやすいという基準で今後柔道界が進むのであれば、数十年後篠原選手の、あの内股すかしをドゥイエに投げられたと捉える人間の方が多くなりそうで恐ろしい。

 IJFは柔道の本質を守ると言っているが、具体的にどういう本質が守られたのか説明して欲しいです。同時に古来よりの伝統的な技でもあった朽木倒しなどの技を認めていた柔道は長い間、本質が失われていたと考えているのかも聞きたい。
 会長が他の競技との区別を明確にしたとも言っていますが、他の競技と比較したことで、逆に柔道の本質が失われてしまいかねない状況ではないでしょうか。
 一つの形が磨き上げられ万人に共有できる技術として伝えられた技の歴史。ルールの認められる範囲で、正々堂々そういった技を磨き活躍してきた選手。その二つに、IJFは筋の通った規制の論理を説明できない限り歴史にも選手にも敬意を払わない、無礼な行為と言われても仕方がない。私はそう思います。
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ひのまるキッズ (ひめじゅう)
2009-12-22 18:56:52
明日会場でお待ちしております。
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