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MATTのひとりごと

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新登場ウクレレベース弦にビックリ!

2011年10月17日 | 

西暦2000年ごろに当時発売中の画期的な小形ベース「フェンダー・アシュボリー・ベース」を入手しました。
実はそれよりはるか以前から日本国内で発売されていて興味があったのですが、いろいろな問題が発生したためか国内販売が中止されてしまったのです。
国内で手に入らないと知ったことで「欲しい!!!!!」状態になりネットで販売サイトを見つけるや一気に注文し入手しました。写真中央がアシュボリー、右がその後発売されたカーラのU-Bassです。

入手してみるとなるほど日本のユーザーに嫌われるだろうと思われる欠点が分かってきました。
フレットボードにフレット線が埋め込まれていない、いわゆる「フレットレス」であることは従来からのアップライトベース奏者にとっては問題にならないのですが、エレキベースやギターから入った人にとっては弾きにくい面もあったでしょう。でもこれはエレキベースにもフレットレスがありますので問題となる「欠点」とはいえません。

一番大きな欠点は1弦(G)がすぐに断線してしまう」ということでした。アシュボリーベースはシリコンゴム線を弦として採用していたのですが、シリコンゴムは引っ張った状態で表面に僅かな傷ができただけでそこから一気に断線してしまうという性質を持っています。
そして特に一番細いG弦がすぐ断線してしまうのです。

当時アシュボリーベース用の弦はG,D,A,E4弦のセットのみを販売していたために、これを何セットも購入せざるを得ず、我が家にはG弦だけが欠けた弦セットがごろごろしていました。

しばらく経ってからG弦だけを1本加えた5本セットで販売するようになりましたが、私はその後ワースが開発したポリウレタン弦に切り替えたため、二度とアシュボリー弦のお世話にはならなかったのです。

そして最近のアシュボリー弦のサイトを見てびっくりしました。
何しろ弦セットとしてG弦を2本追加し合計3本も入ったものが「標準セット」となり、さらにG弦だけを4本、6本、10本と販売するようになっていましたので。

このことはG弦の断線がいかに多いかを物語っているわけですが、たとえ10本の予備弦を持っていてもライブ演奏中や録音中に断線したら演奏家にとってのダメージは計り知れません。これほどまでにしてシリコン弦にこだわっている姿勢が私には理解できません。

2番目の「欠点」は「ピッチ(音高)が安定するまでに際限なく弦が伸びるようにみえる」ことでしょう。シリコン弦は弦のゲージが大きいすなわち太いために弦巻きのポストに巻きつくことのできる長さに限りがあるのですが、弦がどんどん伸びるためにその都度弦を引っ張っては短く切りなおしてからポストに巻きつけないとポストからはみ出して巻かれてしまうのでその修正作業が必要になります。

この欠点は上記1番目の欠点を解決したポリウレタン弦でも同様な現象があり、普通のウクレレのつもりでどんどん弦巻きを巻いていくと最後には弦巻きのメカを破壊してしまいます。このあたりは私のブログでも詳しくご紹介していますのでご覧ください。先日もこれを破損した栃木県小山市のかたに販売店から私のブログを紹介していただいたのですが、ご覧にならなかったようでもうひとつ破損してしまいアタマを抱えておられました。

3番目の「欠点」はシリコン弦の表面が極めて滑りにくいことで、演奏中に指を指板上でスライドさせようとしても弦との摩擦が大きくスムーズな移動ができないのです。
これの対策としてアシュボリーの弦にはジョンソン・アンド・ジョンソンのベビー・パウダー(天花粉)が付いてきたので一時我が家には天花粉の小瓶がゴロゴロしていたことがありました。

この欠点もワースが開発したポリウレタン弦が完全に解決してくれました。そしてその後ロ-ド・トード社から発売されたポリウレタンの「パーホエホエ(ハワイの溶岩のひとつに似ているので名づけられました)弦」も同様に解決されています。
ただshinfujiさんのレポートによるとワース弦のほうが滑りがよいとのことですが。

以上のことから、ワース弦またはパーホエホエ弦は三大欠点のうち2項目を解決して、残る1項目である「際限なく伸びる」という現象は丁寧なメンテナンスを続けることで致命的な欠点には至らないと考えますのでポリウレタン弦ほぼ理想的なウクレレベース弦になったと思っていました。

そこへきてあらたにNylgut弦でおなじみのAquila社から「Thundergut」という新開発の素材を使用したウクレレベース弦が発売されました。
まず、その大きなパッケージに圧倒されました。考えてみればエレキベース弦などもこのサイズにちかいパッケージになっているので驚くには当たらないのですが従来のナイルガット弦のパッケージ(上が最近のもの)と比べると面積で三倍以上有るように見えます。

そしてパッケージ裏面にはこの「Thndergut弦」の特徴が大きく表示されています。

いわく「ThundergutはAquila本社が開発した高密度で弾力性の有るプラスティックで、市販されているポリウレタン弦やシリコン弦に勝る特性を持っている。」
「Thundergutは調弦中に極端に伸びることが無いので、ポリウレタン弦やシリコン弦のようにあらかじめ弦を引っ張るというような退屈な作業の必要がない。」
「Thundergutの表面はシリコン弦のように摩擦が過大で無いだけでなく極端に滑りやすくも無いのでポリウレタン弦のように不用意に指板に触れて音が出てしまうことも無い。」そして結びとして
「あなたはこの弦の音質・調弦の安定性そして出力の大きさにすぐに驚かされるでしょう。」とあります。

それでは最近入手したRoad Toad社のポリウレタンPahoehoe弦の黄色(トップ写真右から二番目)と寸法を比較してみましょう。
弦 (音名)   ゲージ(弦直径)           弦全長
           Thundergut  Pahoehoe  Thundergut   Pahoehoe
1弦 (G)    2.7mm       3.2mm       798mm        525mm
2弦 (D)    3.6mm       4.1mm       784mm        595mm
3弦 (A)    4.2mm       4.8mm       777mm        639mm
4弦 (E)    4.6mm       5.1mm       786mm        631mm

なお、重量(質量)を計るハカリが1グラム単位だったために正確な数値は得られないのですが推定比重(密度)としてはThundergutが1.1、Pahoehoeが1.3とThundergutが多少軽いにもかかわらずゲージの値が小さいのはポリウレタンに比べて伸びないという特徴を現しているのでしょう。Pahoehoe弦の全長が1弦側ほど短いのも「伸びる」ことを前提にしていると思われます。

そして喜び勇んで?カーラのU-Bassにこの弦を張り替えてみました。
なるほど謳い文句どおり弦の伸びについては多少あるもののポリウレタン弦より遥かに少ない事が分かりました。そして彼らの結びの言葉「You will be soon surprised by・・・・(あなたはすぐに・・・のことで驚かされるでしょう。)」のとおり驚くべき出来事が起こりました。
なんとG弦が調弦中に断線してしまったのです。
あの評判の悪かったアシュボリーのシリコン弦でさえ張った直後に断線することはなかったのに、です。
    
たしかにThundergutの特徴として「断線しにくい」ことにはひと言も触れていないのでなにひとつウソは言っていないのですが、最初に書きましたように演奏家にとって演奏中の断線は致命的な現象ですのに、それが調弦中だったらどうすればよいのでしょうか?

もちろんたまたま入手したたった一本の弦が切れただけであって普通はこのようなことが起こらないのかもしれません、でもこのことを以ってポリウレタンからこちらに切り替えることを逡巡する気持ちが起こったとしてもやむをえないのではないでしょうか。

上記写真のように断線した弦は弦巻きのポストに巻きつけた部分が塑性変形していますし、さらにポストに巻いた部分だけが極端に細くなっているのも塑性変形と考えられます。
そして弦の表面を良く見るとポストのスリットに擦れてできたような傷が何箇所か認められます。ただし今回断線したのはブリッジ側で、ボディー内部から立ち上がった部分のエッジによって傷が付いて切れたものと思われます。(追記:下記のように「断線」ではなくストッパーから弦がスッポぬけのでした。)

世の中のウクレレメーカーもユーザーもさらには当のAquila社もご存じないと思いますが、私が個人的にクラシック楽器用の「合成ガット」Nylgutに着目してウクレレに使いはじめた ことがきっかけでNylgutが今日のようにウクレレ用弦としての一分野を確立したと自負しているとともにAquila社に対して親近感を持っていたのですが、今回のことではちょっと失望いたしました。
早い時期に製品の信頼性を取り戻して頂きたいと願っています。

とりあえずG弦だけはPahoehoe弦を張ることで「楽器」としては使えることになりましたが、いつ何時また「断線」が起こるかと思うと安心して使うことができない気持ちです。
たぶん4弦ともワースの弦に戻すのが安全かもしれませんね。


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10月24日追記

「断線」の原因が判明しました!

弦の端末がブリッジ側の穴から抜けないようにするためにThundergutではCable Tie (束線バンド)をつかっています。

しかし束線バンドという部品は複数本のワイヤーをバラバラにならないように束ねる機能を持ち、この部品のヘッド部に内蔵された緩み防止の爪とそれに対向するバンドに施されたセレーション(ギザギザ)の働きで束が緩むことが無いように設計されていますが、それぞれのワイヤーが束から抜ける方向の動きには何の効力もありません。

今回の弦ではそれぞれの弦の端末を加熱しながらこの部品で「きつく」締め付けることで弦の抜け止めの機能を持たせる設計と思いますが、これは部品本来の使いかたではないとともに、いくらきつく締め付けても弦が張られていくに従って直径が小さくなった場合にはもはや締め付けの効果がなくなり弦はスッポ抜けてしまいます。
今回たまたまG弦で発生しましたが、ほかの弦でも発生する可能性は十分に有ります。

おそらく開発者はこの抜ける事故を承知していてそれの対応策としての加熱方法や締め付け力のガイドラインも作成していると思いますが、もともと原理的にムリな設計に近いので大至急対策を行わないと全世界で同様の事故が多発することは間違いないでしょう。

ワースの高橋さんが端末処理に大変苦労された結果採用したアルミの部品は、カシメ工具により弦に大きく食い込むように処理できるので「弦が抜ける」という事故は皆無となったと思われ、後発のRoadToad社の「Pahoehoe弦」も同じ構造を取っているのに対し、AquilaがなぜCable Tieという安易な部品で対応したのかが分かりません。たとえCable Tieを採用したとしても金属製のものもあり、さらには接着や溶着という補助手段もあったでしょうに、加熱以外には何の形跡も見られないのは残念です。


なおKALAから2010年に米国製ソリッドボディーのU-Bassが16機種も一気に発売されました。ボディー色が4種類、そしてフレット付きとフレットレスさらには4弦と5弦という広範囲なバラエティーで、しかもmi-si(マイサイ)のバッテリーレスのアクティブピックアップという最新技術も搭載したもので大変意欲的な品揃えとなりました。なにしろmi-siピックアップはわずか1分充電するだけで8時間の連続使用が可能という画期的なシステムで、2011年のAcoustic Guitar Player’s Choice BRONZE AWARD を獲得したスグレモノです。

さらに2011年になるとパッシブピックアップ搭載の中国製のソリッドU-Bassも米国製の半額近い安値で登場しました。
AquilaのThundergutはこの流れに乗せて発売したはずだったのですが、ちょっと残念です。

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14 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おしいなぁ。。。 (もりぞー)
2011-10-25 00:42:05
トップの写真を見て、「おっ!アクィラからウクレレベース用の弦が!」と期待したのですが…
ウクレレベース側の仕上げの問題もあるかとは思いますが、ちょっと傷ついただけで切れてしまうのでは実用的ではありませんね。
アクィラ社には今後の改良を待ち望みます。

切れてしまったG弦はともかく、音の感じはどんなモノでしょう?
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私も残念です。 (MATT)
2011-10-25 02:14:22
少し前からこの弦の話題が流れていたので、入手したときには喜び勇んで張ったにもかかわらずこの結果となったのでがっかりしました。
あまりがっかりしたのでアンプにつなぐ気も起こりません。
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Unknown (ろい)
2011-10-26 15:07:05
弾けもしないのにroad toadのウクレレベースを6年前衝動的に購入しましたが、赤いナイロン製の弦がついていました。
その後黒いパホエホエ弦が出来た時、これに交換しました。
練習不熱心で使用頻度が低いのかもしれませんが、4本とも何のトラブルもなく今でも元気で活躍してくれています。
そのような中、今年はじめaquilaの白弦を知り交換してみようかと問い合わせたのですが、取り寄せが難しいとのことで諦めたことがありました。

MATTさんのお話のように、もしそのような状況になったら小生にはとても手に負えないので、結果として諦めて良かったと思っています。
スペアの弦が未だ2セットありますので、無くなったら次はワース弦へ交換がベストのようですね。
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ろいさん (MATT)
2011-10-26 16:04:20
Thundergutを4本とも張った状態にすることができず残念ですが、ほかの3本の弦の音は大変魅力的です。
ただこれでもう一組入手して4本揃えたとしても、いずれの弦もがバクダンを抱えているようなものですので安心して弾くことができないと思います。
Aquila社が何らかの改善を施してから入手されても遅くはないと思います。
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ということは… (もりぞー)
2011-10-26 23:53:51
切れたのではなく、抜けたのですから
アクィラを張る前に、あらかじめケーブル・タイの部分は切ってしまって
電気屋さんで買ってきたカシメに交換しておけばすっぽ抜けは防げるわけですね。
さらに結びコブを作っておけば尚安心。

音も大変魅力的ですか!!
問題は、今のところ日本での取り扱いが無いことでしょうか。
ネットで検索しても見つからないだけで、お店にはあるのかも知れませんが、
足で探すには…
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そのとおりです (MATT)
2011-10-27 01:02:58
私もその方法が最適と思っていますが、問題は専用のカシメ工具を購入しないといけないことで、ペンチやプライヤーですと不完全でしょうから。
音はポリウレタンよりもしっかりとしていますし指の感触も謳い文句どおりですので、改良できるのであれば使いたいところです。
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ちょっと残念! (Boo!)
2011-10-27 22:54:40
以前、MATTさんのウクレレ・ベース紹介の記事を読みましたので関心を持っておりました。しかし、欠点が多いということなので、改良品がでるのを待ちました。まだ克服できていないようで、購入はまだやめたほうがいいようですね。

もし完成品が出ましたらご報告ください。カラオケ作りにいいかなと思っているのです。ハワイアンはやはり電気よりもウッドベースに近い音が良いようです。
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いえいえ、 (MATT)
2011-10-28 04:16:53
今販売されている製品で十分信頼性がある組み合わせができます。
すなわちKalaのU-BassにWorthのライトゲージのウクレレベース弦を張れば大丈夫です。
これだけでウッドベースの音色が得られますし、ときどき弦の手入れをしてやればペグの問題も発生しません。
さらに最近は今までのバリトンボディーを持ったエレアコに加えてソリッドボディーのU-Bassも安価に入手できるようになりましたので選択肢が広がっています。

完璧なものを待っているとBoo!さんもすぐに60歳になってしまいますよ。(現在が40歳代と言われていたので・・・)
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在庫切れ? (もりぞー)
2011-10-29 07:51:09
自分でも試してみたくて、Aquila(Italy)のOn Line Shopに発注してみました。
そうしたら「注文を受けました」のメールの7時間後に

We are sorry to inform you that as Bass Ukulele strings are a new product and we have a problem in the supply of raw material, we are not able to send your strings today.

We will do our best in order to produce them and send to you as soon as possible.

We do apologize for any inconveniences this may cause you.

というメールが。
残念ながら在庫切れのようです。
2セット注文したのがいけなかったのかな?(それはないと思いますが…)

まだ予備としてパーホエホエとWorthが1セットずつ在るので、ゆっくり待つことにします。

そういえばウクレレ・ベースの弦は換え時が解らないです。
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新製品なのに (MATT)
2011-10-29 08:36:17
在庫がないというのはおかしいですね。
まあ慎重に販売開始したのでしょうけど・・・・

もしかすると事故多発のため回収しているのかも。
・・・・と勝手な想像をめぐらせています。

昨日電気用のスリーブ部品を探しに出たのですがひとつのサイズしかありませんでした。
もし日本にあるようでしたら実験してみていただけますか?

もちろん弦の現物が届いてからですが・・・

ポリウレタン弦の「替え時」は特にG弦がどんどん伸びてとても細くなってしまった頃を見計らって4本とも同時に替えるのが良さそうです。

なにしろG弦は可哀そうなくらいやせ細りますから。
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