Entrance for Studies in Finance

Case Study on Sony

ソニーの復活?ゲーム事業の成績改善(2017年3月期)

 携帯の普及でもう来ないと思われていたゲーム専用機のブームが再びきている。きっかけは2013年発売のソニーのPS4。おいかけるようにマイクロソフトがXboxの新機種を発売。2017年3月発売の任天堂スイッチ。任天堂のゲーム専用機としては2006年のWii(世界で1億台売ったデイスプレー)以来のヒットになりそうだ。ソニーのPS4の販売ダウンが懸念されている。今注目は2016年10月 ソニーのグループ会社SIEが発売したプレイステーションVR(PSVR)(この発売はその後好調 仮想現実ゲーム機の先駆けとなった 専用のVRゲーム VRMVも伸びている)。 

 もともとソニーの収益を押し下げていたゲーム部門の収益改善の意味は大きい。ソニーの利益を支えているのはエレクトロニクス部門の中の(画像センサー含む 画像CMOSセンサーで世界シェアの半分近く)半導体事業の収益改善(スマホメーカーから引き合い)とされる。ただどこまで収益の柱になるか?

  Sonyは2016年11月上旬に赤字の電池事業(2006年発火問題:燃えるソニーのパソコン問題起こす 収益悪化の大きな要因になる)の2017年春の売却を決めた。すでにテレビ(高単価の4Kテレビは好調。スマホは黒字化)。2017年6月有機ELテレビ発売(2007年世界に先駆け月倍開始 2010発売停止へ 背景 小型であったため販売伸びず 液晶パネルの価格低下から韓国サムソンとの合弁事業解消)。パネルを韓国LGデイスプレーから調達.国際分業を肯定 自前主義にこだわらない再参入となった。有機テレビとも今後価格の低下見込まれる。どこまで収益の柱になるか? ゲーム、映画(動画配信の影響で今後DVDソフトの発売は苦戦)、音楽は黒字が定着。

2016年3月期

最終損益で3期ぶり エレクトロニクス事業も5期ぶりに黒字転換。2018年3月期の営業利益5000億円 ROE10%以上を目標。

2016年6月 2006年に業績不振で撤退したロボット事業(1999年に犬型AIBO発売)への再参入を表明。

2016年10月 ソニーのグループ会社SIEがプレイステーションVR(PSVR)を発売(この発売はその後好調 仮想現実ゲーム機の先駆けとあんった 専用のVRゲーム VRMV)

2015年4-9月期

5年ぶりに黒字。構造改革の成果ようやく。画像センサー、ゲームが好調。リストラによるスマホの赤字額が縮小(固定費削減 前年同期はここで大幅赤字 15年3月期は初の無配転落)。純利益で1159億円(前年同期は1091億円の赤字 上期の黒字は5年ぶり)は電機6社中最多。16年3月期の営業利益予想3200億円。

2015年7月 26年ぶりの公募増資で約4200億円調達。

2015年9月 7年ぶりに技術者中心に中途採用再開 リストラは2015年3月期まででほぼ完了 中途採用は2009年3月期を最後に凍結

画像センサー CMOS(相補性金属酸化膜半導体)で世界シェア4割。ソニーの業績回復に貢献。スマホ、自動車に搭載。ロボット制御など。部品事業=デバイス事業で成功。15年度の設備投資額2100億円。2015年後半には東芝の大分工場の先端工場棟を買い取ることになった。競合はサムソン電子 オムニビジョン など。アップルのほか小米にも供給。

他の電機との違いは消費者向け事業からなお引かないこと(他社は価格競争激しい消費者向けを縮小)

2015年後半。デバイスがアップル減速(アイフォン向け 高精細技術が評価され独占状態)のを受けて鈍化する一方、テレビとスマホが利益を稼ぎ、構造改革の進展を印象付けた。

スマホ:固定費下げる従業員2000人減らし5000人体制に、14年10月に1000人減員発表 2015年1月さらに1000人の追加削減発表

テレビ事業:2014年7月分社により事業リスク下げる 11年ぶりに黒字化 ・・・ 顧客との接点として維持・・・高級化 経費削減で維持 エンターテイメント中心に 消費者との距離にこだわる 他の電機メーカーとは異なる戦略

パソコン事業:2014年7月に売却

デバイス ゲーム 音楽 映画などに投資

ROE:経営の最重要指標として位置付け 事業はいずれも分社化 本体は持ち株会社風に デジカメ 放送機器などは投資控える スマホ テレビなどリスク低減と収益改善急ぐ デバイスゲーム映画音楽集中投資 (2015年2月に発表された中期経営計画)

デジタルカメラ テレビ収益改善

高価格帯のミラーレス一眼が好調(2014年4-9月 営業利益率11%弱) テレビ米販社の人員削減による固定費削減効果 他方中核事業のはずのスマホ事業は赤字(2014年4-9月期1800億円の減損損失 拡大戦略から利益重視に転換 販売4100万台:15年3月期 計画より200万台低い 日米欧ではエクスペリアZ好調だが中国東南アで不振 中国専用モデルの開発中止背景は低価格機との競争 海外生産のため円安で収益圧迫 ⇒今後は先進国市場に注力 米ベライゾンげスマホを供給へ:従来からタブレットを供給+スマホ供給へ 先進国で高機能品を安定販売米国のスマホ市場は1億7000万台規模 アップルが4割 サムソン電子が3割 米国の販売チャネンルの弱さが積年の課題 営業赤字は9月段階で1800億円⇒2015年3月期1800億円の減損損失計上で エレクトロニクスが不振である反面 ゲーム機 画像センサー 映画 金融などは好調)

2015年3月期も2期連続最終赤字見込まれ経営トップの平井社長CEO(ストリンガー氏系で英語は使えるとのこと エンターメイント系とされる)の責任は重い。すでに勝負がついている(敗北している)携帯事業を拡大し巨額損失を作る。後任と目される吉田憲一郎CSO(最高戦略責任者)(米国流のEVA経営をソニーに持ち込んだとされる出井信之氏系とされる)が、進めたのが後述するVAIO売却やテレビ事業分社化。確かにこうした構造改革は財務上の即効性はあったとえいる(参照『選択』2014年12月号86-87)。しかし長期的な戦略をどう描けるかは疑問かもしれない。ソニーの破たんは米国流の経営による企業破たんの先例になるのかもしれない。

画像センサー(後述するCMOSセンサー)はアップル、サムソンにも供給。世界シェアも首位。こうした優位を生かすことも必要。ゲーム、音楽、映画などコンテンツ制作はアップル、サムソンにもない側面。

14年 デバイス(スマホ向け画像センサー)とゲーム(プレステ4)が好調。ネット経由サービスのブランドをPSに統一(2015年1月) 音楽配信については自前主義を転換、英スポテシィファイと提携へ(15年3月末)

AV機器は高音質なハイレゾ対応機種中心へ(2015年1月)。テレビデモ画質音質使いやすさなどで高価格帯商品目指す

エンターテイメント事業の扱いをめぐるサードポイントとのやり取り(2013年)
ソニーとその大株主のサードポイントとの間でエンターテイメント事業の分離上場をめぐって議論がかわされた(2013年5月から8月)。
提案を受けたにはソニーのエンタメ事業子会社の分離上場による価値の顕在化(5月14日)。(このあとサードはソニー株の買い増しを
進めたとされる)。このサードとソニーのやり取りは、経営の在り方をめぐる、論争として興味深い。
ハゲタカファンドが圧力 この紹介(広瀬隆雄さん)はハゲタカファンドと紹介するが サードポイントは同時期に問題になったサーベランスからの西武鉄道への株主提案に比べると明らかに違ったことをしている。長期的な経営の 有り方として、エンターメイント部門の切り離し分離上場を提案したと思われる。一つ見えることは、分離上場した方が、その部門の経営陣にとっては、自分たちの評価が市場で明確になるので、経営効率を改善するインセンテブが高まるということだ。
 背景にある問題は、ソニーのエンタメ事業の収益力そして経営の透明力のいずれもが低いことだとされている。
確かにこの問題は実はこれまでも議論されていたところでソニーは決断してよかったのではないか。

 これに対して ソニーはこの問いかけに直接答えず、まずエレクトロニクス事業(モバイル事業含む):2013年3月期に1344億円の営業赤字。を2015年3月期に3000億円の営業黒字に転換する計画を発表している(5月22日)。これは現経営陣の問題意識があくまでエレクトロ部門の立て直しにあることを反映している。しかしこのようにエレクトロニクスの再建にだけ目がゆき、ほかの事業の低収益をチェックし切れていない点がソニーの経営の問題なのではないか。

2013年3月期のソニーは2300億円の営業黒字(前期は672億円の営業赤字)
 テレビ事業の赤字(前期1480億円)は継続(9期連続営業赤字)。ゲームパソコンの販売不振もありエレクトロニクス全体は営業赤字。
 黒字は生命保険など金融事業で多くを稼いでいるとされる(それも株高による運用益とも)
 そして問題のエンタメ部門は営業黒字ではあるが収益力の低さが問題になっている
ソニー 決算発表 発表資料から事業部門ごとの
 数値を参照。なお2013年3月期についてセグメント別の売上高営業利益率を試算したところ
 金融18.2% 音楽9.6% デバイス(半導体など)5.5% イメージ(IP デジカメ ビデオなど)4.7% 映画2.3%
モバイル(MP 携帯など)1.5% ホーム(HE テレビなど)1.2% ゲーム-17.6%
となっている。数値からあれば、ゲーム事業やテレビ事業(今後は高精細4Kテレビや 超薄型で省電力の有機ELテレビが考えられるが世界市場は縮小気味)からの撤退。金融・音楽事業への特化などがソニーに与えられるべき戦略なのではないだろうか。

サードポイントによるさらなるゆさぶり
 このあとサードポイント(運用資産140億ドル:1兆3700億円 投資額の約15%を日本向けにする有力ヘッジファンドとアクテヴィストファンドとして有名 ダニエルローブCEO)はソニー株を約7%に買い増しことを明らかにするとともに、映画音楽を中心とするエンターテイメント部門の分離上場により同部門の事業価値の顕現化を求めた(2013年5月から6月)。ソニーはこの提案を拒否するが(正式の拒否の書簡は2013年8月6日付け)、問題はソニーの業績の低迷にある。ソニーはここでエンタメ部門とエレクトロニクス部門の一体的運営(One Sony)の必要性を主張した。ソニーがエンタメ事業(CBSのレコード事業買収1988 コロンビアピクチュアーズ買収1989)はソニーのブランド価値には貢献したが、コンテンツをエレキ事業に生かしていなかったことは指摘通り。ただ素人目にも、エレクトロニクス部門を維持する理由はよくわからない。

ソニーはサードの提案に対して取締役会で審議した(2013年7月31日)ものの結論として正式に拒否した(8月5日)。
拒否回答 ロイター8月5日
 考え方としてはこれからコンテンツの重要性はますます高まる。エンタテイメントとエレクトロニクスの融合を進めることは
たとえばサムソンと比較したソニーの比較優位につながるといったところか。
 しかし
 ソニーの現在の収益構造はエレクトロニクスは構造的赤字で黒字を出せても低収益。
 エンタテイメントとくに映画は利益は出しているものの同業他社に比べて
 収益力が低いとの批判があり、稼ぎ頭は金融になっている。この状況の放置は典型的な「もたれ合い」経営ではないだろうか。
 だとすればエンタメの切り離し(売却)はソニーを再生させるまともな提案だった可能性は高い。

ソニーはこの間 エンターメイント事業そして金融事業と事業を複合化させてきた。複合化は収益を安定させる
効果がある半面、その連携が取れているか もたれ合いになっていないかはしばしば批判の対象となることろだ。
 サードによる批判はその意味で「まともな批判」であった。それを拒否したソニーの経営陣の経営責任は大変重い。

 債務超過のソニーエリクソンを完全子会社化(2012年 エリクソンとの合弁を解消 完全子会社化)することには社内でも異論があったが封殺された。だとすれば強行した現執行部の責任は重い。さらにスマホ事業などエレクトロニクス事業にこだわり投資を集中した責任も明らかであるように見える。14年9月に示された改革は高付加価値品への集中。展開地域の絞り込み。低価格モデルの削減。で十分説得的ではない。
進まない構造変換

  国内でドコモと携帯販売で蜜月関係 ソニー国内ではドコモにだけ主力(旗艦)モデル供給 ドコモは販売奨励金をソニーに集中 この結果 ソニー国内販売シェアを2012年の10%台から2013年20%台に拡大。しかしドコモはiPhone販売に踏み切ったことで(2013年9月)、ソニーは主力モデルをAUにも供給するように方針を転換したとのこと(2013年9月)。
 2014年1月 ムーディズがソニーを投機的等級に格付けを引き下げた(Baa3から一段引き下げた)。ムーディズは2012年11月にもBaa2からBaa3に引き下げている。これは電機事業の大部分で収益がぜい弱であることを指摘したもの。
 1月の格下げの直後だが、サードポイントが投資家むけの書簡(2014年1月21日付け)で、パソコンとテレビ事業のリストラをソニーに迫っていることを明らかにした。
 2014年2月 パソコン事業売却を決断
2014年3月 旧本社ビル(NSビル 1990年竣工)と4号館を入札により住友不動産に売却へ(品川駅南口の本社ビルに移転) 売却価格161億円 ソニーは1946年に日本橋で東京通信工業として設立 1947年に御殿山エリアに移転 すでに2007年に御殿山エリア北側を売却 今回南側を売却 歴史資料館などが残るだけになる ソニーのエレクトロニクス事業は2011年から赤字 スマホ ゲーム 画像センサーを中心とするイメージング事業を成長3分野とするが、戦略には多くの疑問が出されている。 
 2014年3月期 新型ゲーム機プレイステーション4(2013年11月発売)の販売が好調(700万台近く) 世界でゲーム機を1870万台(台数的には前年比2割減) 任天堂は1631万台で前年同期比3割減。他方米マイクロソフトは1160万台で16%増。SCEの販売台数トップは2006年3月期以来。任天堂を圧倒したものの、家庭用ゲーム機はスマホゲームに押され縮小傾向は止まらない(ゲーム機のpeakは2009年3月期)。

 2014年5月1日 14年3月期連結決算(米国会計基準) 1300億円の赤字(前期430億円の黒字) 営業利益260億円(89%減) 2014年3月期について3度目の下方修正

2014年5月 有機ELテレビの商品化に向けた開発を当面凍結 4K(フルハイビジョンの4倍の解像度)液晶に経営資源を集中(6月2日に4K試験放送が始まる。単価の高い4Kの比率を上げて採算を改善へ 他方でテレビ事業を7月に分社 収益管理を徹底+家電販売の人件費を2割以上削減 15年3月期にテレビ事業の黒字化目指す 他社に比べて大きな販売会社のコスト⇔消費者向けが多い 4Kの使用は2014年のうちにビデオに加えてスマホが加わった。2015年には監視カメラにも拡大されるとのこと)。テレビの販売は地デジ移行の2011年を控えた2010年がpeak(2519万台)。以降激減(13年は前年比16.7%減の537万台)。地デジ開始は2006年。以降の買い替え需要がそろそろ。

ソニーの4Kシェアは66.4%(2013年 国内出荷額ベース 2位はシャープ17.5% 世界出荷額でも23%とtop 2013年の世界出荷額ランキング ソニー22.9% 創維集団14.4%  サムソン電子11.9%  海信集団10.2%  長虹電器9.7%  TCL集団9.2% LG集団7.8%  その他13.9%)。薄型TV全体ではシャープが34.4%でトップ。ソニーは20.2%で2位。4K戦略には力がはいっている。パネルは台湾メーカーから調達(友達光電 群創光電など)。2014年の4KTV販売台数予想は前年比8倍弱の1930万台。サムソン電子や中国メーカーはソニーの半値以下の値段で対抗するとみられる。

2014年5月14日 15年3月期500億円の最終赤字と発表 翌15日株価は失望売りで一時前日比147円安 終値1695円 3ケ月ぶりに1700円台割れ スマホで前期比3割増 テレビで2割増という甘い今期(15年3月期)予想に懸念高まる

 2014年7月 パソコン事業(1996年からVAIOブランドで。2011年度以降低価格品、スマホヤタブレットとの競争 ウインドウズ8の不振 新興国景気低迷などから次第に販売不振へ)を売却 パソコン新会社VAIO(日本産業パ-トナーズ95%   ソニーが5% ブランド権はなおsony ) 育てるのではなくリストラのための独立分社。従業員規模240人。親離れして自己変革.低価格モデルは台湾などでEMS生産。上位モデルを本社工場で。

 ソニーはテレビやスマホなど消費者向け製品が多く企業向け取引への拡大が遅れている(パナソニックは自動車と住宅にシフト  日立はデータセンター向け機器など社会インフラ 東芝はスマホ向け半導体 三菱はファクトリーオートメーションと中核を定めた) 日立は重電部門など安定収益部門に軸足移す。パナソニックはプラズマテレビ撤退や半導体工場売却など構造改革実施。ところがソニーはゲーム、スマホなど事業利益たかだか200-300億の事業にこだわり続けている

2014年7月から8月 賃金制度を改定 年功要素を廃止して役割に対する報酬 8月にも労働組合と団体交渉 2015年度からの導入目指す

          テレビ事業の分社化(ソニービジュアルプロダクツ)

 7月末 スマホの販売台数計画を4300万台(前期比10%増)に修正(従来5000万台)

 2014年8月1日 4-6月期の好決算で株価1887円まで上昇(高値)

 2014年8月13日 PS4の販売台数が1000万台突破(ゲーム事業は4-6月期に黒字回復)

      8月15日 自動車のカメラ用センサー(自動運転技術の中核)への参入報道で株価一時1883円50銭 ソニーはCMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサーで世界首位(2013年世界シェア33%)。車載用では米アプテイナ、米オムニビジョンが先行。ソニーのセンサーは現在の一般的センサーより感度が10倍ほど高いとのこと(CMOSこれまでの電荷結合素子CCDに比べて高速で読みだせる上に消費電力が少ない 画質の性能を左右する アップルiPhone向けにソニーが供給しているとされる)。このほかソニーはiPad向けに電池の供給もしている。。 

 2014年9月17日 15年3月期見通しを下方修正 スマホで1800億円の減損処理(完全子会社化したスマホ事業の帳簿価値を引き下げ) 1958年上場以来の無配を発表 スマホ事業7000人の15%にあたる1000人程度を削減 販売地域 機種の絞り込み 1350億円程度の構造改革費用 最終赤字は2300億円程度(当初見込み500億円程度から拡大)

ソニーのフェリカ(非接触ICカード規格)とブルートウース(近距離無線通信)とを組み合わせることで認証装置にかざすことなく、入退室管理ができるシステムが2014年度中にも実現化される見込みだ。これはほかの認証用途にも応用可能。また2015年にはウエラブル機器にフェリカを搭載するとしている。

 サードがソニー株全量売却(2014年10月判明)  サードの売却益は20%程度。映画、音楽の分離、米国での上場迫る。ソニーは提案を拒否するが他方でエンタメの情報開示拡大。コスト削減打ち出す。2014年に入り パソコン事業の撤退。テレビ事業の分社化など構造改革加速。

遅すぎる決定 顧客への配慮
ソニーがパソコン事業(出井伸之氏が始めた事業 2013年1-9月の世界出荷台数シェアはわずか1.9% 14年3月期は2012年3月期以来2期ぶりに最終赤字見込み 背景にはパソコン市場の縮小があり、パソコン出荷台数のpeakは2011年で2年続いて市場はスマホやタブレットの台頭で大きく縮小している ソニーの販売台数のpeakは2010度で870万台。2012年度760万台。2013年度は500万台程度まで縮小)の売却(相手は日本産業パートナーズJIPという実態のないファンド) テレビ事業の分社(分社により経営破断のスピードを高める 高精細高画面など高付加価値のテレビに移行) 人員削減などの合理化策を発表した(2014年2月6日)。(もともとソニーはシェアよりは採算を重視するところがある。たとえば付加価値の高い大画面に商品を絞り込むなど)
 しかしソニーの再生を期待する声は小さい。パソコンやテレビは赤字事業。やや信じがたいのはスマホ(大画面スマホのエクスペリアZ 2013年2月発売 2013年7-9月の世界シェアはこれもわずかに3.5& 世界ではサムソン電子31.4% アップル13.1% 華為技術4.8% レノボ4.7% LG電子
4.6% 酷派4.1% そのほかの筆頭がソニーで3.5%)、ゲーム(プレステ4 2013年11月発売)への経営資源集中方針だ。競争の激しいスマホでの中国、米国への本格参入(スマホで今後とも台数を伸ばすの至難)。そのスマホとの競合が激しいゲームで収益を稼ぐことを構想が示されたからだ(ゲーム機は誰がみても過去の遺物だ)。
 2012年以来経営Topを勤める平井一夫氏(就任直後1万人の従業員削減を発表 2013年12月には国内家電でリストラを発表 今回の2014年2月もリストラを発表した)は、赤字のエレクトロニクス部門を、スマホやゲームでいたずらに延命させているように見える。収益を稼げる金融部門にシフトするべきだろう。
 パナソニックが自動車や住宅分野の強化で次の柱を見つけていることと比較すると、ソニー経営陣が次の成長分野を詰め切れていないことが目立つ。ソニー株のPBRは版年以上1倍割(2月7日現在0.77倍)
 
資産売却による営業利益かさ上げ
 ところで2012年から13年。ソニーはNYそして大崎でビル売却など資金回収進めた。
 しかしこれは営業利益のかさ上げにつかわれてもいる。
2013年1月18日NY本社ビル11億ドル(987億円)で売却を発表。3月末までに手続き。うち6億8500万ドル(615億円)を営業利益に組み込む。資産売却益を営業利益に組み込めるようにしているとのこと。
2013年3月1日 ソニーシティ大崎の売却が正式に発表された。売却価格は1111億円。譲渡益410億円はやはり営業利益に組み込むということ。
 他方でソニーは多額の投資もおこなっている(携帯合弁会社の完全子会社化 ソネットの完全子会社化 オリンパスへの出資など)
 資産を売却 営業利益をかさあげするテクニックに利用。入手した資金で投資。資産のくみかえをしているともいえる。

転換社債発行の意義
 他方で手元資金が多額にある(2012年9月末で4000億円)としながら1500億円の転換社債発行を発表している(2012年11月)。しかし手元資金があるとしながら、転換社債発行をするのは、やはり必要な投資額に比べて、自己資本の不足が意識されているのではないか。

08年3月期決算:V字回復? (2008年6月稿の再録)


 ソニーの決算の08/03期決算が明らかになった。03年3月期に予想より大幅に下回る決算で市場に「ソニーショック」を起こしてから5年。ソニーは業績のV字回復を達成したともされる。しかしその数値は実態を示すものだろうか。数字上では利益は回復しているのだが。また同時に06/3-08/3 3ケ年の構造改革が終わり、工場の統廃合、人員削減、資産売却など目標がおおむね達成されたことも明らかにされた。

部門別営業損益 単位:億円 構造改革費用など込み

部門 06年3月期 07年3月期 08年3月期
電機 -309 1567 3560
ゲーム(SCE) 87 -2323 -1245
映画(SPE) 274 427 540
金融 1883 841 226
ソニー全体 2264 718 3583



08年3月期決算
 まず数字は関連会社のものが連結されているので、実態を読み取りにくい。数値では資産売却など特殊要因も影響している。今回は後述するソニーSFH上場の問題(07年10月11日)も気になる(調達額3780億円)。

部門別の概要
 主力のエレクトロニクス部門で利益が回復 営業利益1500億円→2倍3560億円となった。売上ではデジカメが対前期比6割増。液晶テレビ(ブラビア)は世界シェア1位。ところがサムソン、シャープに収益性で劣るとされ、その主力の液晶テレビで巨額の赤字が拡大している(投資を拡大しているためであろうが収益の低さも影響している)。なお有機ELテレビで先行 (07/12商品化 08/01 米国で売り出し)が注目される。 
 ゲーム部門では営業赤字が縮小した。2000億円→1000億円程度。プレステ3の販売は対前期比2.7倍。ソニーはPS3のセル生産で2000億円の量産投資をしてその後苦戦した。ゲーム部門の戦略の影響は現在も深くソニーの経営を苦しめているといえるが、時間の経過とともに赤字は縮小するだろう。果たしてブルーレイで勝利するためには正しい戦略だったかを判定するにはもう少し時間が必要だろうが、ゲームソフト開発が伴わなかったためにゲーム機としてPS3の影は国内ではすっかり薄くなっている。
 こうしてソニーは数字としては2008年3月期に営業利益で3744億円。純利益3694億円を計上している。

投資計画
 再建が軌道にのったとして2008-2010年の3年間で1兆8000億円の投資をするとした(08/06/26)、9000億円をデイスプレーや電子部品。液晶パネル工場(with Sharp) 有機EL用パネル量産体制 など。

SFHの上場(2007年10月)の回顧
 かつてソニーが行った金融事業部門の上場。
 ソニーは金融統括会社のソニーフィナンシャルホールディングス(SFH)を東証1部に上場した(07/10/11)。上場時、時価総額9000億円。主幹事は国内が野村證券、海外がJPモルガン証券。ソニーの金融事業はソニーの営業利益の3割を稼ぎ出すまでに成長した。業務多様化による収益の分散・安定化効果は出ている。上場に伴いソニー保有株の3割を売り出し処分することになった。この上場については、SFHの独立性が軽視されていることに批判がある。
 SFHの利益の中心はソニー生命の保険料収入と資産運用収益。なおソニー銀行は資産運用が中心で独自性があったが、ジャパンネット銀行やイーバンク銀行も資産運用業務を強化しつつある。
 SFH上場公開は2007年最大のIPO(新規株式公開)。主幹事は野村證券とJPモルガン証券。2006年11月の「あおぞら銀行」(3800億円)以来の大型案件となった。この上場によりソニーは、SFH株の40%を売り出し3180億円を調達。これを電機部門に振り向けるとした。この戦略的資金の調達が、今回の上場の大きな目的。その意味では成功だった。

ソニーの金融事業の事例:ソニー生命 ソニー銀行

営業開始 社名 状況(2008)
1981 ソニープルデンシャル生命としてスタート 1991 現社名になる ソニー生命 主力の個人保険好調 契約高で業界9位
1999年 ソニー損害保険 ネットによる自動車保険販売の中堅
2001年6月 ソニー銀行 ソニーFH、三井住友Bが出資 資産運用に軸 低手数料の外貨預金・投資信託 ネット専業のなかでいち早く黒字化


Originally appeared in Aug.17, 2008
Corrected in February 14, 2014
Revised in Oct.1, 2016

分類:Case Studies

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