8月はいつも暑いけど(寒かったら問題なわけだが)、今年の8月はほんとに毎日暑かった。海水温が黒潮側だけでなく東日本の太平洋側でもずっと高くて、こんなの見たことがないと驚いた。
そんな中、8月24日には、日本国政府が、2011年にメルトダウンして世界を震撼させた原発の処理の水を海洋に流すという決断をしてさらなる震撼をもたらした。
しかしながら、その騒ぎが起きている中、世界的な話題はBRICSの会合だった。
そんな中、8月24日には、日本国政府が、2011年にメルトダウンして世界を震撼させた原発の処理の水を海洋に流すという決断をしてさらなる震撼をもたらした。
しかしながら、その騒ぎが起きている中、世界的な話題はBRICSの会合だった。
■ BRICS拡大
BRICS、サウジなど6カ国が来年加盟 歴史的拡大と習中国主席
赤いのがオリジナルのメンバー。
青緑が今回加盟が決まったところ。黄色が加盟申請しているところ。
新メンバーは、サウジアラビア、エジプト、イラン、UAE、エチオピア、アルゼンチン
巷では、BRICSの共通通貨が出るみたいなことがやたらに言われてるけど、そういう話しではないだろうと思ったし、今も思う。
現状行われているのは、西側に債務奴隷にされないように退避して別の安全チームを作ってる、みたいな感じじゃなかろうか。
西側の機構は、IMFとか世銀を使って、途上国を債務奴隷にしているという話しは前から出てるけど、それに加えて、西側の投資資金を使うことによって制裁されて動けなくなるという大きなデメリットがある。ここで、脱ドル化(または脱ユーロ、場合によっては脱円)が重要になる。
また、ロシア1国でも大だけど、今回、サウジ、イラン、UAEが入ったことで、巨大な石油屋さんグループがここにいる。これは、資源の問題でもあるけど、実際には金融の裏側という面もある。ロシアとインドはUAEの通貨で決済したりしているようなので、その面での利便性も広がる。
また、場所としての繋がりから交易関係の円滑化という側面もあるね。イランの重要性はますます高まっていると言えるでしょう。
イランは2020年に中国との巨大な取引が成立したことがブーストになったと言っていいんじゃないかと思う。インドが開発するするといってぐずぐずしていたイラン内のインフラなどに目鼻がついたのは中国との取引のせいだろうと思う。
それによって、そのイランを通って、ロシアの貨物がサウジアラビアに行くような動きが可能になっている。今回は、南北回廊(ロシア・アゼルバイジャン・イラン)の平行線みたいなものもあるのかぁって感じ。
ロシア→カザフスタン→タジキスタン→イラン
そこから海路でリヤドに行った模様。
First Russian Direct Transit Freight Train Arrives In Saudi Arabia
https://www.russia-briefing.com/news/first-russian-direct-transit-freight-train-arrives-in-saudi-arabia.html/
https://www.russia-briefing.com/news/first-russian-direct-transit-freight-train-arrives-in-saudi-arabia.html/
ということで、大きな経済圏、そして政治勢力が拡大しつつある。
ノルウェー(多分)の学者さんが、この集団は、技術的自立、移動・輸送の自立、金融の自立を確保していってブリテンのシステムから抜け出した19世紀のアメリカを思い出すと言っていたのもなかなか良い視点だと思った。その後アメはブリテン流に帰ってしまうわけだが・・・。
(西側は半導体、半導体とうるさいが、航空機をフルに自力生産できるロシア、世界の原発の製造、燃料供給で大きなシェアを持つロシアという滅多にない存在、そして明らかな技術問題を語る人が西側では滅多にいないというのは興味深い。気づかないのか、タブーなのか)
で、これに黄色が入ったらどうなるんでしょう、というところ。
岸田がやたらに外国に行っては金をばらまいていると非難されているが、それはみんなこの勃興する巨大グループの拡大阻止、または切り崩しによる現行秩序の保持に関係していることでしょう。「インド太平洋」とかいう概念を作ったことも費用面からエライこっちゃだと思う。
そして、今日明日インドで開かれるG20サミットには、プーチンも習も行かない。それぞれの外相が代表を率いる。
インドと仲が悪いんだとか習近平にあれだこれだ、なんだかんだとの記事がたくさん出てる。
習氏なぜ「重視」のG20を欠席? 議長国インドと緊張関係、健康配慮説も
単純に、G20に行ったって、あっちとこっちがひっついて、孤立して、いやロシアを孤立させろ、とかいう馬鹿な話ししか出ないのは自明だから行く意味がないんじゃないだろうか。インドは対応に苦慮はしてるものの、アクロバット八方美人外交を旨としてるんだから頑張るでしょう。
■ 植民地支配が壊れるアフリカ
アフリカのクーデーターもこの現行秩序が崩れていく話しと同期していると言っていいでしょう。
7月にニジェールで、バズム政権の大統領警護隊長だったアブドゥラハマネ・チアニ将軍を首脳とするいわゆる軍事政権が出来て、国際社会はちゃんと文民政権に戻せよ、と言い、宗主国フランスは各種の脅し文句を言ってもみたが、どどこも介入せず、今日に至っている。
ニジェールは、何度目になるのかわからないほどよくクーデターが起きる国だからなのか、人々が外に出てわーわーやっていたのは本当だが、大混乱という感じではなかったのではなかろうか・・・と見えた。
ここらへん、なんか面白いよなとちょっと思う。あまりにも落ち着くと政権交代一つできない(笑)。
で、ここのところずっとフランス支配のアフリカは崩れている。アラブの春にやたらにフランスが入れ込んでいたのは、まったくの自分の利益のため。思えば、オバマは最後の頃、アラブの春の成り行きを聞かれた時、英仏があんなに下手を打つとは思わなかった、みたいなことを言ってた。どこまでどうなのか知らないけど、NATO諸国が全員一致で行動していたわけではなかったところは本当だと思う。
で、ニジェールがとりわけ注目されたのはウランの産地だからってのが大きい。フランスは原発大国でならしているが、そのフランスは超超超超安価にニジェールから原料を買い、ニジェールは多くのところに電気さえない、なんだよそれ、という批判はヨーロッパ内に地味に存在した。
フランスのウランの輸入先は、カザフスタン、ニジェール、ウズベキスタン、オーストラリア、ナミビアがトップ5で大多数を占め、後はその他各国から少量。
2014年にキエフで西側がクーデターを起こした時、フランスのオランド大統領がほとんど真っ先にカザフスタンに行って、やたらにベタベタしていたのが思い起こされる。カザフスタン、ウズベキスタンがいくらなのか知らないけど、一番高そうなオーストラリアあたりを念頭に再交渉したらどうだろう。きっとロスアトムさんが価格の評定をしてくれるでしょう(笑)。
で、現状、フランスはニジェールに対して強気のことを言って、なんでもするぞ軍事も辞さずみたいなことを言ってもみたが、ニジェールの周辺国がニジェールに手出ししたら自分たちに出されたものとして動く、みたいなことを表明したりする中、何もできていない。
アメリカの方もなんだか不透明な対応。あのヌーランドは、この事態に対応できず、ショックを受けていたという話しもある。
Shocked by Niger coup, Victoria Nuland appeared “desperate” during Africa tour
ヌーランドらの米国務省の役人たちが8月終わりにアフリカを回っていて、南アフリカのベテランの政府関係者は、
「私はアメリカ人と20年以上仕事をしているが、彼らがこれほど必死になっているのを見たことがありません。」
“In over 20 years working with the Americans, I have never seen them so desperate,”
とThe Grayzoneに語った模様。The Grayzoneはマックス・ブルーメンソールなどがやっている一筋縄ではいかない系のジャーナリストのサイト。
実際問題、ニジェールのクーデターは、発生の現場はよくわからないが状況的には衆人環視で、しかも、フランスの植民地主義の延長が汚らしく、ニジェールの人だってそりゃ怒るだろう、当然だな、みたいな感触が世界中に広がる中、ここで軍事力オプションってどんな感じなの・・・と誰しも戸惑うばかり。一応米軍は何年か前に滑走路を作って前よりアクセスしやすくはなってるけど、誰も見ていないなら軍事政権を皆殺しにして、すまして傀儡政権を戻すということも成り立っただろうが、今は見えすぎる。
まして、マリにしても二ジェールにしても、そこら中に、ロシアの旗持ってロシア万歳を言うアフリカの人たちがいて、それはそれなりに理解されているという状況がある。ソ連時代から植民地時代と変わらず支配しようとする欧州諸国と喧嘩してアフリカの多くの国を庇いに入っていたのはソ連だというのは、多分東アジア以外では結構知る人の多い話しではなかろうか。
東アジアって、統一協会=勝共連合による、ソ連(共産主義)は悪魔という、阿呆みたいな「教義」に、信じられないぐらい影響されてるからなのか、それともそれが日本の国是だからなのか、とにかく、各地でそれはそれなりに西側との緊張関係で未熟な国を支える力になっていたソ連という像が全然見えてない。これは「馬鹿の素」だと思う。
■ 終われない朝鮮問題
日本の国内では、9月1日の関東大震災の日が、今年は100年というタイミングだったからなのか例年より話題になっていた。9月1日は大震災を教訓に各地で防災訓練を行う日というのが私の世代の普通の認識だったんじゃないかと思うが、最近はストックしてあった写真にカラーを施したりしてよりリアルな現実よ、みたいにして見せるのが流行っている模様。
そして、その際に起きた朝鮮人等の虐殺事件をなかったと言い出す人とか、全員被災者だから一緒に追悼しますとかいって特定の追悼を止めた小池知事がいるここ何年かの現状に対する1つのカウンターとして、「福田村事件」が映画化された。
私は多分見ない。なぜなら、そういうことじゃないわけよ、この話しは、って思う方だから。この話は、知れば知るほど国家の統治機構の問題だわなと思わざるを得なくなった。
小池さんには感謝した方がいいかもしれない。こんなことがなかったら、こうまでいろんな書物や資料がネット上に転がることもなかったでしょう。
さはさりながら、映画「福田村事件」を拒否などというつもりは全然ない。私を含めた年取った人にとっては驚きのへんちくりんな言論が流行った時代が20年以上あって、そこで生まれ育った人にとっては、このぐらいのレベルの、過去にはこんなに酷いことがあったのね、でさえも立派な教育なんだろうと思う。
実際には、この話は、
1918〜22年 ロシア領切り取り画策(シベリア出兵)
1919年 三一独立運動鎮圧
1920年 間島出兵
1919年 三一独立運動鎮圧
1920年 間島出兵
という事象の後に発生した。この頃の日本政府は朝鮮の鎮圧に力を入れていて、それは必ずしも楽な展開ではなかった。というより、本人の主観では一生懸命で、その時は日本側の勝ちに見えても、そもそも日本の支配に従いたくない人たちが抵抗しているわけだから、殺される側に正当性を与え、それに同情する、共感する人数を増やすようなことをしていたとも言えるでしょう。
ちなみに、この数年後には山東出兵が来て、満州事変へと続く。
1927〜28 山東出兵
1931 満州事変
1937 日中戦争(支那事変)
1941 アジア太平洋戦争(大東亜戦争)
1931 満州事変
1937 日中戦争(支那事変)
1941 アジア太平洋戦争(大東亜戦争)
日本というのは、もうね、間断なく軍が出張ってた。しかも、日中戦争、アジア太平洋戦争以外は軍vs軍とは言えないような事態だから、対人では非常に惨い。これが現在失念されていると思うな。ある日突然唐突に真珠湾みたいな描き方をしてきたツケは大きすぎ。
ということで、この流れの中で起きた、特定民族を狙った(他の人も含まれるが)この事件を偶発的なものとみるのは、あまりにもかわいらしい見方なのではなかろうか。
そもそも、亀戸事件、大杉栄とその密接関係者の殺害をみれば、日本国政府の中には、大災害で多くの人たちが明日をも知れず震えるその中に、よーしチャンス!と思って殺害を企てた人がいたことははっきりしている。
そして、大杉栄とその関係者を殺害した憲兵隊司令部の甘粕正彦大尉が、10年もたたないうちに満州の支配の一角にいる。
甘粕が殺したのではなく憲兵隊が暴走していたため彼が罪を背負って犯人となり、だからこそ軽い刑期でフランス留学になったのだ、といった説もあるけど、どうなのかよくわからない。フランスで何をしていたのかもよくわからない。
解明できてないことばかりの近現代史だけど、このあたりの1920年代はとりわけ無茶苦茶だと思う。
そして、このブログでは何度も書いてますが、1945年のソ連軍の位置付けができないのも、この無茶苦茶の延長なんだろうなと思う。
今年も書きました。
個人レベルでは、満州からの引き上げが悲惨な体験だったりして。
— ribrib (@ribrib010) August 15, 2023
しかし、俯瞰で見ると、侵略者の撤退なんですよね。
そして今年は大変すばらしいリプライをいただきました。
そうなんです。日本人の主観では、満州からの引き上げ体験の悲惨さが真っ先に来るとしても、大きなピクチャーで見れば、侵略者の撤退なんです。でもって、侵略者の撤退が穏やかなんてことは通常ない。エリートたちの政治的な言辞としてはあり得ても、多くの人は怖いから侵略者に従ってただけで、その恐怖がなくなれば、独立万歳!になる。反射的に、しばらくは今まで威張ってた奴らが憎くなる。これは時間をかけて和解していくしかない。
上の方で書いたフランスの現在も要するに同じことですね。
世の中って変わる時には変わるものなんだと思う。陰謀論的にするっとした話しを書く人は上の方が考えて指示するとなんでも簡単にできると想定しがちだけど、ピーポーの多数が納得しないことってそうは長持ちしないものだと思う。それは別に今風の民主主義でも、古代の政権でもそう変わらないと私は思う。
■ オマケ
しばらくすると国慶節の前の「烈士記念日 」が来る。こっちも理解の枠組みがあるとはいえないんですよね。
日中戦争なるものは、よーいドンで始まったわけではなく、言ってみれば第一世界大戦の時から日本は中国に対して侵略行動を取りっぱなしだというのが、この人(黒柳徹子さん)もわからないんだろうなぁとか思った。
これらの日本人孤児を育ててくれた中国人の養父母達。ネトウヨからすれば「どうせ働き手が欲しかったんだろ」と言うことだろうが、でも、これの逆ってあるかな。日本に取り残された中国人孤児を引き取って育てる日本人っているかな?そういう人間としてのおおらかさ日本人にあるかな?
引き揚げてくるまで、ずっと中国人に匿われながらだったとの事。「家の子供になれ」という中国人もいたが、「自分はどうしても日本に帰らなければならない」と言ったら、理解してくれたそうです。
有名な漫画家の方も、自分の身の危険も顧みず匿ってくれた中国人がいたとの事。
俳優座を創った千田是也氏は、関東大震災の時、朝鮮人が襲ってくるという情報を聞き、自衛団に入って朝鮮人をやっつけてやろうと家を出たら、自衛団の連中に朝鮮人だと言われ、もう少しで殺されそうになったそうです。自衛団の中に出入りの酒屋の小僧さんがいて「伊藤さんちの坊ちゃんだ」と言われ、何とか助かったとのこと。
お兄さんはバレエダンサーの伊藤道朗、舞台美術家の伊藤熹朔、父親は有名な建築家。千田是也の芸名は「千駄ヶ谷のコリアン」という意味だそうです。娘たちが幼い時のバレエの先生が伊藤道朗の門下生だったので「千田是也さんは弟さんですよ」と教えてもらいました。日本人なのに朝鮮人と言われて殺された人たちも結構いたみたいで、本当に怖ろしい。
大杉栄の件だって、6歳の少年まで殺害するなんて。
甘粕正彦の関りも分からないまま。森繁久彌なんか、良い人みたいに言ってたし。李香蘭も。
さてイスラエルを除く中東諸国がこれからBRICSにどういう反応をするだろうか?
もし中東のすべての国がBRICSに加盟するのであればドル体制は崩れるだろう。
何といっても中東諸国のオイルマネーは無視できない。
ロシアと北朝鮮の共同声明らしきものが出てきた。気になるのはロシアから人道問題という項目が出てきた。これについいて解説している日本の大手メディアはない。
具体的には北の一般住民・朝鮮系ロシア人だろうがプーチンは後者についてはよく知っている筈だ。
何やかや言っても、中国東北・北朝鮮はソビエト軍が解放したが、未だにその実情は日本では報道されていない。