コンビニエンスストアチェーン「セブン-イレブン」のある店舗が、今月25日の夜にクリスマスケーキの在庫処分のため「レジの人にジャンケンで買ったら半額にします」という貼り紙を掲示して販売していたことが話題を呼んでいる。一般的にコンビニのフランチャイズ(FC)店舗が独自の判断で、このようなユニークな取り組みを行うことは許されているのか。また、実はコンビニ本部の判断ではなくFC店舗が売上アップのために独自の判断で取り組んでいる施策というのは多いものなのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
例年クリスマスシーズンにあたる12月23~25日にかけては洋菓子店に限らずコンビニやスーパーなど多くの小売店でクリスマスケーキが販売される。なかでもコンビニは有名スイーツブランド・ショップやパティシエとのコラボ商品に力を入れている。たとえばセブン-イレブンは今年、定番の「クリスマスかまくら」(3218.40円/税込)、「ガトー・フレーズ5号」(4698円)のほか、「もこもふティラミスケーキ」(2786.40円)、「世界大会優勝パティシエコラボ ショコラ・クリスタル ドゥ ネージュ」(5918円)、「ちいかわ わくわく雪遊びパーティ」(5184円)などを販売。ファミリーマートは「ルージュ・ブランシュ監修 ガトーブランシュ5号」(4700円)、「ケンズカフェ東京監修 ショコラケーキ」(3700円)、「Afternoon Tea 紅茶とベリーのクリスマスケーキ(洋梨入り)」(4000円)などを販売。ローソンは小さめサイズの「Uchi Cafe ノエルルージュ」「Uchi Cafe ノエルピスターシュ」(ともに419円)のほか、「Uchi Cafe×GODIVA ショコラノエル 4号」(5250円)、「Uchi Cafe×HISAYA 丹波栗のモンブラン」(2560円)などを販売していた。
チェーン全体への影響
そんなコンビニの店舗では例年、25日の夜になると在庫処分のために売れ残ったクリスマスケーキが値引きされて売られる光景が定番となっているが、セブン-イレブンのある店舗が前述のようなかたちで販売し、話題となっている。ちなみに貼り紙には「※ここだけの話、レジの人はグーしか出しません」とシャレの利いた一文が添えられている。
コンビニの店舗といえば、本部の厳しい管理・指導の下で運営されているというイメージが強いが、こうした店舗独自の販促活動というのは許されているものなのか。元ローソン・バイヤーで消費経済アナリストの渡辺広明氏はいう。
「今回の件についていえば、店舗は独自の判断による施策とはいえ事前に本部に『このようなことをやりますよ』と伝えている可能性は考えられ、その前提でお話をしますと、一般的にコンビニ本部はこうしたFC店舗の動きをよくは思わないかもしれません。同一チェーン内で同一の商品について『A店では500円で売っているけど、B店では1000円で売っている』といったかたちで店舗間でバラバラの価格設定が生じると、チェーン全体でみると利益が損なわれる恐れがあるのと、他のFCオーナーの理解を得られない場合も多いためです。
値下げして利益を削ってまでも廃棄品を出さないという意味でポジティブにとらえることができる一方で、今回のケースは客寄せ的な集客目的のキャンペーンという要素も強いため、不当転売規制という法律とのからみも出てきます。ケーキの50%値引きとなると製造原価を割っているかどうか微妙なラインですが、独占禁止法では『正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給すること』が禁止されており、この法律との関係も継続ではないものの、同様な施策が増える事など本部が気にする部分かもしれません。
原則としては商品の価格決定権は店舗にあり、店舗が自由に設定できるものではありますが、それがチェーン全体の理念や方針に合ったものなのか、他の店舗やチェーン全体の利益を損ねてしまうリスクはないのか、という点が重要になってきます」
コンビニ本部とFC店舗の力関係
では、FC店舗が売上アップなどのために独自の判断でさまざまな施策を打つというケースは多いものなのか。
「多くはないでしょう。理由の一つとしては、店舗はルーティン業務としてやらなければならないことをこなすだけで精一杯なので、それ以外のことにまで取り組む余裕はあまりないためです。また、建前上はコンビニ本部とFC店舗は対等な関係となっているものの、やはり立場的にはコンビニ本部のほうが強いため、FC店舗が何か独自の取り組みしようとする場合は本部にお伺いをたてるという方向になりがちで、そうした面倒なことをしてまで独自の施策を行おうと考えるFC店舗は少ないでしょう」(渡辺氏)
(文=Business Journal編集部、協力=渡辺広明/消費経済アナリスト)