路上で販売される雑誌、『ビッグイシュー日本版』を発行する有限会社ビッグイシュー日本には、雑誌の編集・発行だけでなく販売者を影で支える「販売サポート」という仕事があります。
その販売サポートのスタッフとして、大学生や社会人のインターンが活躍しています。
今回は大阪事務所のインターンとして1年2か月が経った近畿大学4年生の佐野瑞希さんに、インターンに応募したきっかけやビッグイシューでの仕事などについてインタビューしました。


Q: インターンに応募したきっかけは何ですか?

大学3年生の秋、周りの友人が就職活動を視野に入れて様々な場所でインターンや職場体験をするようになり、「自分も何かやらなきゃな…」と思っていたところに、梅田の路上でビッグイシューが販売されているのを見かけたのがきっかけです。

それまでも「何か掲げている人がいる…」という程度のことは目に入っていたのですが、この時はなぜか気になって「あれは何をしてるんだろう」と調べてみたところ、ホームレスの人たちに仕事を提供するために雑誌を作っていると知って、本や雑誌が好きで、社会課題にも興味があった自分にはピッタリだと思ってすぐに問い合わせました。

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Q:インターンではどんな仕事をされていますか。

●販売者の雑誌の仕入れの受け付け

販売者のみなさんは自分が売れると思う号を、自分の好きなタイミングで仕入れに事務所に来ますので、午前中はだいたいそれらの注文を受けて雑誌を卸しています。 そのとき、販売者と雑談する中で「こんな販売サポートがあるといいな」といった要望を聞くこともあります。

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私はインターンをするまでホームレスの人と話したことはなかったので、「何を話したらいいんだろう‥」って最初は緊張していましたが、販売者のみなさんは接客業ということもあって、「新しいインターンさんか」などと積極的に話しかけてくれました。思ったより話しやすい人が多いことにびっくりしました。

●販売場所への「巡回」

仕入れに来た販売者のみなさんと事務所でだけお話をするのではなく、実際の販売場所に行ってゆっくりお話しする「巡回」の機会を大事にしています。雑誌の販売状況のことはもちろん、「何か困っていることはないですか?」とヒアリングすることもありますし、自分が就職活動をしていたときは、「避けておいたほうがよい会社ってどんな会社ですか」と質問して「サービス残業させるところはあかんで」などと、人生の先輩たちにアドバイスをもらうことも多々ありました。

●販売サポート企画、販促物の作成

内勤のときは、いろんなイベントの企画やその準備、販促物の作成のお手伝いもしています。 販売促進に使うポスターをパソコンで作ったり、イベントのディスプレイを作ったり。これまで「ゼロから何かを作る」ということには苦手意識があったのですが、いろんなニーズや困りごとを聞いて、それを「こうかな?」と形にしてブラッシュアップしていくということにもだいぶ慣れてきたように思います。

●出張講義のサポート

ビッグイシューの販売サポートスタッフの社員と販売者が、高校や大学などに、ホームレス問題の解説やリアルな体験談を伝える「出張講義」に行くことがあります。そんなときにカメラマンとして写真撮影をしたり、時には少しお時間をもらって「ビッグイシューでのインターンの様子」についてお話させてもらうこともあります。

ざっとこんな感じのお仕事を、私の興味に合わせて自由にやらせてもらっていました。いまは卒論も終わったので週に2~3回入っていますが、シフトに入る曜日や時間帯の指定はなく、大学の授業やほかのバイトとも両立しやすかったです。

Q:ビッグイシューでのインターン経験を通じて変化・成長したと感じる点は?

●ホームレスの人たちへまなざし

ビッグイシューにかかわる前は、「ホームレスの人ってある程度は本人の責任なのでは…」などと思っていた部分があったのですが、たくさんの販売者の人たちと話すようになって、「リストラに遭った」とか「介護離職した」といった、自分の努力とは関係ない原因の話を聞くようになり、「本人のせいとは言えないな」、と感じるようになりました。

また、一度路上生活に陥ると、保証人も住所もない中で、もう一度仕事に就いたり家に住んだりという道がかなり険しいということも知りました。

●企画力

ビッグイシューの社員の人はみんなフランクで、課題に対してやってみたいことがあれば「いいやん!やってみたら!」と言って、ほとんどなんでもチャレンジさせてくれるので、企画を立ててやってみるという力がついたように思います。いい意味で「マニュアル」がないという感じです。 例えば釜ヶ崎にいるホームレスの人たちに、ビッグイシューを知ってもらうための映画鑑賞会を企画したり、ブックイベントへの出店企画をしたりなど、自分が興味のあることと、会社として取り組みたいことが重なりそうなところに取り組めたのは、とてもやりがいを感じました。

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●発信する力

家族や友人やバイト先の人に「ビッグイシュー日本という会社で、こんなことしているよ」と話すと、「いいねえ」と応援してもらうことがよくあります。それ以外にも、先月は大学で、受講している講義の中で30分ほど時間をいただいて、ビッグイシューでのインターンについての発表を行い、雑誌『ビッグイシュー日本版』を学生さんたちに配布して読んでもらう時間を持ちました。ほとんどの人が「ホームレスの人を見たこともない」と言っていたので、ホームレス問題への関心を持ってもらうきっかけを作ることができたように思います。

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2024年のホームレス・クリスマスパーティでは司会を務めた

●視野の広がり

大学生にとっては、どんな職場であっても、インターンの体験から初めて知ることは多いと思います。でも、特にビッグイシューのインターンは、他ではなかなか体験できないことが多いように思います。他団体や活動とのつながりも多く、とても視野が広がったように思います。

たとえば私は海外旅行には一度も行ったことがなかったのですが、「韓国に行こう!」と思い立ち、一人で手配して行ってきました。2024年の秋に韓国で開催された「ホームレス・ワールドカップ」の応援のためです。

これは世界中のホームレスの人たちが一生に1度だけ参加できる大会で、日本が13年ぶりに出場するということで、これは行かなければ!と思い立ったんです。
ビッグイシューでのインターン経験から、「いろんな人がいるんだろうな」とは思ってはいましたが、世界のホームレスの人たちは、想像以上にいろんな背景や事情があることも知り、視野がとても広がりました。
ビッグイシューでインターンしていなかったら、こんな機会に行ってみようとも思わなかったですし、世界の社会課題も知らなかっただろうなと思います。
インターンでいろんな経験をする中で、ビッグイシューでは現場に飛び込んで実際に体験することって大事という考え方や、新しいことに挑戦する勇気が身についたように思います。

Q:どんなときにやりがいを感じましたか?

自分が企画したイベントでたくさん雑誌が売れて販売者さんと喜び合うときや、工夫した販売グッズを販売者が使ってくれているのを見たときはうれしいですね。 あと、販売者が卒業(就職先が決まること)するとか、卒業まで行かなくても「アパートに入居できた」など、新しいステップを踏み出したというお知らせを聞くのは、「本当にやっててよかったな~」と思える瞬間でした。

Q:就職活動のときにビッグイシューでのインターン経験は役に立ちましたか?

はい、とても! 最近はSDGsを心掛けている企業も多いので、こういった社会課題解決の現場でのインターン経験について、面接担当の方にとても興味を持って聞いてもらえることが多かったように思います。 関西で20年続く社会的企業はあまりないですし、採用担当者の人の認知度も高かったように思います。

Q:就職先は決まりましたか?

はい。最初は出版社にも興味があったのですが、いろんな会社を訪問したり、ビッグイシューの編集部にある本を借りて読んだり、インターンで知らなかったことを学んだりするうちに、「社会課題を解決する活動には、お金が回ることが大事だ」と考えるようになってきました。それで、後半は金融機関に絞って就職活動をして、地域の金融機関に内定をもらいました。

将来はNPOなどのソーシャルセクターにお金が回せる仕事ができたらいいなと思っています。

Q:ビッグイシューでインターンするか迷っている方に向けて一言どうぞ。

やりたいことがある人も、やりたいことがまだ定かでない人も、「とにかく、すごくいい経験になるからやってみて!」と勧めたいです。私は大学3年生から始めましたが、大学1年生の時からやっておけばよかった‥と思います。

この3月で大学を卒業してしまうので、インターンももうすぐ終わってしまいますが、本当はずっとでもやりたいと思うくらいです。ビッグイシューの人たちはみんな扉を開いて待っているので、ぜひ飛び込んでみてください!

▼販売サポートインターンを1名募集しています(大阪事務所)
https://www.bigissue.jp/2024/09/24737/




『販売者応援3ヵ月通信販売』参加のお願い
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3か月ごとの『ビッグイシュ―日本版』の通信販売です。収益は販売者が仕事として"雑誌の販売”を継続できる応援、販売者が尊厳をもって生きられるような事業の展開や応援に充てさせていただきます。販売者からの購入が難しい方は、ぜひご検討ください。
https://www.bigissue.jp/2022/09/24354/


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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊500円の雑誌を売ると半分の250円が彼らの収入となります。