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HDMI「2.2」策定。96Gbpsに帯域拡大、4K/480Hzや16Kに対応

HDMI LAはHDMI 2.2を発表

HDMI規格のライセンスを担当するHDMI Licensing Administrator, Inc.(HDMI LA)は、HDMIの新しい規格である「HDMI 2.2」を発表した。「CES 2025」プレスデーに開催された記者説明会の模様を速報する。

会見したHDMI LAのRob Tobias CEO(左)と、HDMIフォーラム・プレジデントのChandlee Harrel氏

需要は回復傾向、100インチと高フレームレートが拡大

発表に先立ち、HDMI LAはHDMIの現状について、解説した。

HDMI LAのRob Tobias CEOは「対応機器は2024年に9億台以上、規格開始以来140億台が出荷された。この規模の数に達した規格は他にあまりない」と話す。

ただ、出荷ペース自体は2023年から2024年にかけて減少している。その傾向は回復に向かっており、ここから再び「ゆるやかに数量が回復する」と予測する。

昨年需要は落ちたが、ここから緩やかに回復するとの予測

中でも現在大きな潮流となっているのが「テレビ」の変化だ。2024年には100インチ近い大型製品が急速に伸びている。ゲーム向けにフレームレートも4K・144Hz製品が多く登場した。

そのため、今後は4K・240Hz製品の拡大が予測されている。同時に大型のPCディスプレイやゲーム向けテレビ市場も拡大しており、「ゲーム」を軸とした「高フレームレート化」を伴う広帯域・高解像度化が必要な状況になっている。

100インチに近い大型テレビと高フレームレートを求めるゲーム市場の拡大が需要を後押し

広帯域・高解像化へプロトコル変更

現行規格である「HDMI 2.1」が発表されたのは、2017年のCES。その後、2022年に「2.1a」、23年に「2.1b」となっているが変更は小規模なものだった。

HDMI 2.0(2013年)から2.1への変更は数字こそ0.1の増加に過ぎないのだが、中身は大幅変更といってよいものだった。その内容は、西川善司氏の以下の記事で詳しく説明されている。

HDMI 2.1は4K・HDRを軸にしたフォーマットであり、付加価値として8K/60Hzなどにも対応。伝送方式を変えることで最大46Gbpsの帯域に対応、より解像度の高い環境に対応していた。

今回発表されたのはその後継となる「HDMI 2.2」。HDMI 2.2ではさらに広帯域な96Gbpsとなり、16Kまでの解像度をサポートする。

HDMI 2.2では帯域が96Gbpsに拡大
解像度は4Kから16K(15360×8640ドット)までサポート

96Gbps伝送では次世代の「HDMI固定レートリンク(Fixed Rate Link、FRL)」テクノロジーを活用。伝送プロトコル自体変更になる。

主なサポート解像度は以下の表の通り。

主なサポート解像度と色深度

特に注目は、ゲームなどでの要請が強い「高フレームレート」と、プロフェッショナル市場も含めたニーズを満たす「高解像度」対応だ。

例えばHDMI 2.1bでは4Kの場合144Hzまでだったが、HDMI 2.2では480Hzまでがリストアップされている。5K・8Kでは240Hzまでとなる。

その他、10K(10240×4320ドット)・12K(12288×6480ドット)では60Hzをサポート、16K(15360×8640ドット)も視野に入れる。これらは大型サイネージを含めた用途を想定している。医療用ディスプレイなどでも高解像度のニーズも大きいそうだ。これらは帯域圧縮やクロマサブサンプリングなどで圧縮され、超高解像度を実現する。一方で8Kや4Kなどについては、非圧縮・フルクロマでのサポートとなる。

10Kを超える超高解像度は圧縮技術を使い、4K/240Hzや8K/60Hzは非圧縮で扱う

また、VR・ARや空間の立体情報を表示する「ライトフィールドディスプレイ」などの利用が拡大することも見込んでおり、それらで高解像度・高フレームレートを活用する基盤とする。

将来的に拡大するXRやライトフィールドディスプレイなどの利用も想定

特にVRを含むゲームは広帯域を必要としており、「10bitもしくは12bitのdeep colorの非圧縮で4K・240Hz」が求められる。この領域はHDMI 2.2での対応が視野に入ってくる。

「おそらくすぐ、NVIDIAの新しいGPUが発表されるだろう」(HDMIフォーラム・Harrel氏)とのコメントもあり、最新GPUでサポート拡大が行われるのは間違いない。

また同時に、音声と映像の同期を改善する「Latency Indication Protocol(LIP)」も導入される。

音声と映像の同期を改善する「Latency Indication Protocol(LIP)」も導入

LIPはホームシアターのように、多数の機器がHDMIで接続された状況を想定したプロトコル。テレビやAVアンプが介在し、複数機器を音声データがホップするような環境で遅延や同期ずれを解消し、より快適な視聴環境にすることを目指すという。

なお、複数の家電機器をコントロールする技術として「HDMI CEC」がある。HDMI 2.2にも含まれるが、今回のアナウンスのタイミングでは大きなアップデートはない。

「CECは優れた基盤技術だ。本当の利点は、使用する電力も帯域も非常に低いものに抑えられているという点にある。今、CECの相互運用性には確かに疑問があり、多くのメーカーは個々の問題について改善すべく作業をしている最中だ。ただ、メーカーの話し合いのもとで決まるものではあるので、消費者の元にどう出て行くかもその結果による」(HDMI LAのTobias CEO)という。

専用ケーブル策定、出荷は2025年後半

過去のHDMIと同じく既存のケーブルも視野に入っているが、HDMI 2.2をフルに活かすには「96Gbps伝送」に対応した「Ultra96 HDMIケーブル」の利用が推奨される。

HDMI 2.2に向けて「Ultra96 HDMIケーブル」も策定
「Ultra96 HDMIケーブル」のプロトタイプパッケージ

ケーブル長の最大規格などは未確定だが、プロトタイプのケーブルは20フィート(6m)のもの。素材は銅線や光ケーブルなど、柔軟性を持つ。

今後ライセンス供与が開始され、ケーブルとしての製品は2025年第3四半期もしくは第4四半期に登場が予定されているという。