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1万円台の国産腕時計で話題をさらった腕時計ベンチャーKnot。4月28日には初となる機械式腕時計「AT-38」(4万8600円)を発売した。機械式参入の理由、そして今後の方針を遠藤弘満代表が語る。
手にとりやすい機械式腕時計を作りたかった
AT-38は、メイド・イン・ジャパンのデザインと品質に優れた機械式腕時計をエントリーモデルとして広げたいと考えて始めたものです。機械式は価格やメンテナンスの面からハードルが高いイメージがありますが、若い人も高品質な機械式腕時計にふれるきっかけをつくりたいと。
いま日本の機械式腕時計は世界的にとても高く評価されています。そのため「機械式」「メイド・イン・ジャパン」という2つのフレーズが合わさると、どんどん値上げができてしまう。しかしそうなると、どんどん若い人は手が出ないものになってしまい、腕時計離れが進んでしまうのではないか。
そこで日本最高峰の腕時計を作っているところと組み、手が届く価格の機械式を作れないかと考えたんですね。AT-38は純日本製。腕時計の主要3パーツ、ムーブメント、ケース、そして文字盤がすべてメイド・イン・ジャパンです。
とくにめずらしいのは、インデックス(時間をあらわす数字部分)の植えつけ。これがめちゃくちゃ難しい。もともと日本でつちかってきた技術なんですが、コストの問題で多くが中国に“輸出”されていた。それを秋田の老舗腕時計製造工場セレクトラにもちこんで、「もう一度、日本で植えつけができないか」と。
4万8600円で名のある老舗が手がける1本
セレクトラはKnot創業期からの時計製造パートナーです。Knotが世界を目指し、日々成長を遂げる一方で、大切なパートナーにも技術革新が必要です。
主要部品を日本製にこだわったAT-38は、時計の顔である文字盤もメイド・イン・ジャパンでなくてはなりません。失われたインデックスの植え込み技術などを日本で復活するためのパートナーはセレクトラ以外には考えられませんでした。
ケースは老舗の林精器がザラツ研磨を施したものです。バックスケルトンで、風防はサファイアガラスの無反射コーティング。
林精器は国産機械式時計ケースを製造している、世界屈指の金属加工工場。AT-38開発のテーマ「部品1つに至るまで、限りなく日本製にこだわる」を実現するために不可欠なパートナーでした。
機械式で難しいのは薄くつくること。ケース幅を38mmにおさめながらも10mmの薄さを実現するため、シチズンMIYOTAの9015という人気のムーブメントを採用することになりました。毎秒8振動のハイビートムーブメントです。
市場には、3万円程度の中国製から、数百万円する高価な舶来品まで、さまざまな機械式時計が幅広く存在しています。
AT-38が“高品質な日本製機械式時計”であることをユーザーにしっかり伝えるためにも、ハイビートムーブメントを使用したこと、そして“高品質な機械式時計ケースを手がける林精器”がケースを製造することは、大きな価値がありました。
傘生地を使ったストラップを
ストラップも追加していきます。今まで栃木レザー中心に国内製造をしてきたレザーストラップに、この春から姫路レザーを追加します。
ブランド素材ストラップでいえば、栃木レザー、京都・昇苑くみひもに次ぐ『MUSUBU PROJECT』第4弾を予定しています。次のテーマは「傘生地」。山梨県富士吉田市にある、槙田商店という慶應2年創業の洋傘・傘生地・服地製造会社とコラボレーションして、傘生地と栃木レザーのコラボベルトを作るつもりです。
生地モチーフは“とんぼ”。とんぼは前にしか飛ばないため「勝ち虫」と言われる縁起のいい虫です。武将が甲冑の内側などにとんぼ柄を使っていたんですね。傘生地なので、もちろん撥水素材です。このコラボベルトを今までのナイロンベルトに代わる形で展開していきたい。価格は5000円、発売は28日予定です。
開発でとくにむずかしいのはボンドでした。傘の生地と革をボンドで接着させないといけない。ストラップのボンドというのは、実はストラップをつくる工房が独自にブレンドしているものなんです。最初はシワが入ったりと、苦労しました。
4月には横浜・元町に工房を併設した新たなコンセプトの“ファクトリーショップ”を出しています。広いお店なので、槙田商店さんに傘の即売会をやってもらってもらってもいいかなと考えています。直近では28~29日に「槇田商店の職人による傘作りワークショップ」「長澤ベルト工業の職人による『甲州槇田傘ジャガード織りストラップ』カスタムオーダー受注会」を開催する予定です。
腕時計屋がただ腕時計を売っているだけではお客さんの幅が広がりません。モノだけでなく、体験を提供していきたい。腕時計を1つのきっかけとして、日本全国にいる職人が生みだしている上質な素材を体感してもらいたいと思っています。
Knot横浜・元町店 インストアイベント
傘素材ベルト 製造実演(5/28、5/29)
横浜元町ファクトリーショップ独自のコンテンツである工房スペースで、ベルト作りを実演。
傘作りワークショップ(5/28のみ)
「中綴じ」という生地を傘の骨に固定する作業を実演、来店客が一部体験できる。
傘素材ベルト カスタムオーダー受注会(5/28、29)
今回発売開始となる「甲州槇田 ジャガード織りストラップ」を、通常のラインナップにはない組み合わせで「生地」「レザー」「ステッチ」を選び、オリジナルのストラップがつくれるスペシャルイベント。
※両日とも2回(2日間合計4回)受注会を開催。それぞれ先着25名様、合計100名様限定。
28日(土) 11:00~13:00、16:00~18:00
29日(日) 11:00~13:00、15:00~17:00
※2日間は槇田商店オリジナルの「傘」ポップアップショップも開催。
盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ、記者自由型。戦う人が好き。一緒にいいことしましょう。Facebookでおたより募集中。
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