注目スタートアップのビジネスモデルを分かりやすく紹介。アイスペースはロボットと宇宙をかけあわせた宇宙ロボットを開発する。センサーを搭載した2~3キロの小型軽量探査機(モビリティ)を通信でつなぎ、収集したビッグデータを分析するシステムが売り。20年後を見据えたロボット開発を進めている。
レース優勝をねらう月面探査ローバー「ムーンレイカー」(左)、「テトリス」(右) 写真:アイスペース
優勝賞金2000万ドル(約23億円)に日本のベンチャーが近づいている。
「グーグル・ルナ・エクスプライズ」(Google Lunar XPRIZE)は、月面無人探査機の性能を競うコンテストだ。グーグルがスポンサーになっている。来年12月31日までに月面に無人探査機を着陸させ、500メートル走行させた上、指定のデータを最初に地球に送ったチームが優勝となる。
現在、無人探査機がきちんと稼働するかどうか地球上で検証する「中間賞」を開催中。世界18チームが参加する中、日本代表「ハクト」が上位5チームに選ばれた。結果は年明けにも発表されるそうだ。
「はやぶさ」技術で世界を狙う
ハクトを率いる企業はアイスペース。宇宙で使えるロボット、宇宙ロボットを専門とするベンチャーだ。無人探査機を開発し、2025年までに宇宙資源開発を狙う。代表はジョージア工科大学出身の袴田武史社長。
「軸足長く、10~20年単位での開発を進めている」(袴田社長)
日本の小惑星探査機「はやぶさ」に携わった東北大学の吉田和哉教授が中心となり、同社の小型無人探査機(モビリティ)の開発にあたっている。
強みはモビリティの軽さ。中国など競合が200~300kgなのに対し、同社は2~3kgで100倍近くも軽量だ。今後さらに研究を進め、1kg未満を目指している。
軽量化を進めるのはレース以外の意味もある。センサーを搭載するモビリティを通信網でつなぎ、収集したデータをオンラインで解析するビッグデータ分析ビジネスを宇宙・地上の両面で展開する計画だ。
地上では携帯電話用の通信インフラが使えるが、宇宙では別の通信網を用意する必要がある。どんな通信が宇宙に最適なのか同社では現在リサーチ中という。
宇宙開発はファンタジーではない
米国では民間企業の宇宙ビジネスが進んでいる。
10月から11月にかけ、米宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティック、同じくオービタルサイエンスズと宇宙船の事故が相次いだが、民間の開発競争が活発化している証左でもある。
現在、米政府およびNASAは、国から民間に宇宙開発の切り替えを進めている。
従来1~2兆円かかっていた宇宙開発を民間に委託すれば数千億円規模で済むためだ。地球周りの研究開発を民間にまかせれば、政府は火星や小惑星など未踏領域に資金を集中できる。
資本力と開発規模では米国に劣る日本だが、技術力なら勝負できる。アイスペースは「はやぶさ」で培った宇宙技術を武器に、世界に冠たる日本の宇宙ロボットビジネス実現を狙う。
「宇宙のロボットと言うと、まだまだ空想の世界に近いと思っている人も多い。しかし宇宙の世界もロボットの世界もいま実際に動いている。今後、いろんなところにアプリとして使われる基礎になるロボットを開発していきたい」(袴田社長)
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