4月23日、元山種証券社長の山崎富治氏が亡くなった。ビジネスマナーとして有名な「ほうれんそう」(報告・連絡・相談)の名付け親だ。
大辞林には「組織内で十分な意思疎通を図るための作法」とある。ただし一般的には、ほうれんそうは「部下が上司にするもの」と捉えられているようだ。
例えばビジネス情報共有サイト「エクスバズワーズ」の「ホウレンソウ」の解説には、「上司は部下の仕事の進捗状況を明確に把握しておく必要があるため、部下にはその伝達を行う義務がある」という一文が入っている。
同様に、ビジネスマナー紹介サイト「デジセン商事ドットコム」にも、「『報・連・相』を通してみんなから今何を考え何を行っているのか教えてもらわないと、上司も状況判断ができない」とある。ほうれんそうは「上司の状況判断に必要な、部下からの自発的な情報伝達」と解釈されているわけだ。
しかし山崎氏は、そんなことはひと言も述べていない。同氏の著作『ほうれんそうが会社を強くする』をひも解けば、山崎氏は「組織の活性化」を目的にほうれんそうを発明したと分かる。
例えば、こんなエピソードだ。ある時、中途採用した優秀な社員が他社に引き抜かれ、山崎氏は社員が去った理由を徹底的に調べた。その結果、直属の上司はその社員の置かれている状況を把握していたのか、中途入社で浮きがちな社員に対し同僚・部内の連絡はちゃんとしていたのか、プロパーの社員に気兼ねせず相談できる雰囲気はあったのか、という疑問に突き当たったのだ。
「これらがちゃんと行なわれていれば、どこかに解決の方法はあったはずだ。(中略)人と人の意思の通いあい、気持ちの通いあいが悪くては、会社がうまくいかない以前に、社長以下、働いている人自身が楽しくない」(『ほうれんそうが会社を強くする』)
つまり、ほうれんそうができるような「風通しのよい職場環境を作る」ことこそ、山崎氏が伝えたかった内容。上司が部下に「ほうれんそうがなっていない!」と一方的に叱るなど、もってのほかだ。
新入社員が入社して、そろそろひと月。「五月病」に陥らない/陥らせないためにも、部内で円滑なコミュニケーションが実現しているかどうか、点検するといいかもしれない。