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HYBRID W-ZERO3をちょっとだけ触った

2009年11月15日 21時00分更新

文● 行正和義

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 国内でも種類が増えてきたスマートフォンだが、ウィルコムの「W-ZERO3」シリーズが日本国内での普及のきっかけとなったのは間違いないだろう。

 そのウィルコムが2010年1月に発売するのが「HYBRID W-ZERO3」だ。昨年発売された「WILLCOM 03」では省かれていた“W-ZERO3”のブランドが復活したことから分かるように、シリーズの原点に立ち返ったスマートフォンだ。

 発売はまだ先だが、ウィルコム本社で試作機に触れることができた。週アスPLUSのフォトレポート記事と合わせて読んでほしい。

HYBRID W-ZERO3の活用記事:
 ・HYBRID W-ZERO3のブラウザーを変えてみる
 ・HYBRID W-ZERO3を買ったら最初にすること
 ・QWERTYレスでも大丈夫? 「ケータイShoin」のツボ
 ・HYBRID W-ZERO3、ハイブリッドの本当の意味
 ・HYBRID W-ZERO3が、超・スマートフォンである理由(PC接続編)
 ・「HYBRID W-ZERO3」は来年1月28日に発売~実質3万円台中盤
 ・発売直前! HYBRID W-ZERO3のおいしいところを知る
 ・HYBRID W-ZERO3をちょっとだけ触った


通信はハイブリッド、全部入りスマートフォン登場

 詳細スペックなどは、すでにニュースとして取り上げている(関連記事)ので省略するが、HYBRIDの名のとおりPHSに加えて3G(HSUPA)も利用でき、通信エリアやデータ通信速度がPHS主体の従来機から大幅に強化されている。

縦スライド+テンキーという形式は従来のW-ZERO3から大きく変わった点と言える。賛否両論ありそうだが、テンキー入力が文化として強く根付いていることを意識して採用に踏み切ったという。

WILLCOM 03との比較、サイズ的には03よりもわずかに大きい印象だが、厚みは1mmほど薄くなった。HYBRIDの側面(カメラとして構えたときの上面)には500万画素カメラのシャッターボタンも用意される。

 さらに、SIMカードを差し替えればば海外でも利用できる点も大きな魅力だろう。SIMフリー端末であるのに加え、GSM圏での利用も可能だ(サードパーティオプション)。

今回お話をうかがったウィルコム データ通信企画室の石塚樹氏

 基本的にPHSは通話用、3Gはデータ通信用という役割分担がなされており、音声通話はPHSのみでしかできない(Windows Mobileのダイヤラーを叩く際に、W-SIMに対するATコマンドしか発行しないとのこと)が、データ通信に関しては複数のプロファイルを持てるので、Windows Mobile上で設定すれば3G/PHSの両方が使える。従来同様、無線LANとBluetoothを備え、GPSも内蔵するなど、最近の高機能ケータイの機能を網羅。スマートフォンとしての可能性も高そうだ。

 最大の変更点と言えそうなのが、QWERTYキーボードを持たないことだろう。いわゆる“普通の”携帯電話のように縦スライド+テンキー入力となっている。

 シェアを分析したところ、ユーザー層が、いわゆるPDAファンなどから一般の非マニア層へとユーザーも移り変わりつつあること、WILLCOM 03も市場から好印象を受けていること、一般ユーザーの抵抗感が少ないテンキー入力に対応することで、新しい市場を開拓したいといった意図が込められているそうだ。

 旧来からのPDAファンやガジェットマニアの立場に立てば、いかにもスマートフォン然としたQWERTYキーボードの廃止は惜しいところではある。とはいえ、テンキー入力時の予測変換の快適さ(筆者の場合、QWERTY入力時には不思議と予測変換を使わない)、ソフトキーボードやBluetoothキーボードなど選択肢もないわけではない。さほどスライド式QWERTYキーボードにこだわる必要もないだろう。試作段階ながら、IME(モバイル書院)は変換候補の表示が非常に高速で、サクサクと入力できた。

 OSに最新版のWindows Mobile 6.5を採用した点も注目だが、GUIにシェルを被せて、独自のインターフェースとしているのも面白い。

 Windows MobileにはToday画面(いわゆる待ち受け画面)があり、従来のW-ZERO3でも基本機能アイコンが並んだ「ホームメニュー」とすることができたのだが、本機では時計表示を中心とした待ち受け画面の下にウィジェット風の機能アイコンが並ぶという独特なものになっている。

従来からのホームメニューに相当する基本機能アイコン表示。指でタップしてスライドすると流れるようにスクロールする。

 機能アイコンは液晶面のタッチパネル、もしくはアドエスにも入っていたXcrawl(エクスクロール)と呼ばれる円形のカーソルボタン周囲を指でなぞるように回すことでアイコンが流れていく。従来のホームメニューのようなランチャーも、指でスクロールする仕掛けだ。iPhoneを意識したかのような操作系(というか意識していない最近のケータイはないと思うのだが)である。

新たに装備された待ち受け画面。時計機能をメインに下側にアイコンが並び、横にスクロールする。

 個々の機能自体はWindows Mobileのインターフェイスで、ランチャーや待ち受け画面でも左上にいわゆるWindowsスタートのアイコンがある。従来からのWindows Mobileユーザーにとっても、それほど違和感なく使えるのではないだろうか。

テンキーにはWindows Liveキーが用意される。キー部分を閉じた状態でも利用できる円形カーソル「Xcrawl」は通常の上下左右入力のほか回すように指でなぞることでスクロール操作を行える。

 テンキー部分に、Windows Liveキーを用意している点も注目したい。モバイルユーザーにとってメールやPIM機能をクラウド化する利便性はかなり高い。実機はLive機能を呼び出すソフトウェアがインストールされていないものだったが、予定ではこのボタンを押すことで、Live関連サービスを呼び出すためのアイコンが一覧表示されるという。

 マイクロソフトはWindows Mobile 6.5とともにWindows Liveのサービス拡充を進めているそうなので展開に期待したいところだ。Market Placeなどに関してはまだ海外でも登録が少ないが、国内ベンダーからも積極的な参加があるだろうか?

 現状では、まだパフォーマンス・チューニングの途中ということで、今後の改善がまだまだ進むものと考えられるが、アプリの起動、データ通信をしながらのウェブ表示、スクロールなどの素早さはなかなかのものだった。CPUはARM11ベースで、クロック周波数も528MHzと取り立てて速いわけではないが、通信速度の向上だけだけではなく画面書き換え速度なども大幅に向上している印象だ。「W-ZERO3でのウェブアクセスは遅い」というイメージが払拭できるぐらいの速度を製品版では期待したい。

液晶解像度は480×854ドットと高精細。ブラウザ(IE)によるウェブ閲覧もほぼ問題ない。

 なお、組み込みのブラウザーはInternet Explorerのみで、Operaなどの導入は予定していないという。Internet Explorerの機能が改善され、PCサイトの閲覧にも問題は少ないという判断のようだ。Windows Mobile 6.5に変わったことで、Windows Mobile 6.x対応ソフトがどのぐらい動作するかも気になるところだが、おおむね利用できる見込みだ。ただし、今回液晶ディスプレーの解像度がワイドVGA(854×480ドット)となっているため、背景画像などにレイアウトの崩れが発生する可能性はあるとのこと。特に長辺の54ドット分が足りないケースが散見されるという。

 当初は“データ通信といえばPHS”としてCEベースのスマートフォンの立場を確立したW-ZERO3だが、通信環境の変遷のなかでやや時代遅れ的な印象が強まっていた。今回のHYBRIDは、単に3Gによる高速データ通信というだけでなく、現代の通信環境に合わせて作り直された“次世代のW-ZERO3”と言えるはずだ。

HYBRIDの背面部は金属パネルに細かくヘアライン仕上げがなされており、従来からのW-ZERO3からはなかったデザインだ。試作を何度も繰り返したそうで、溝の深さから本数までこだわったという。

 国内スマートフォン市場は、iPhoneが牽引し、Android端末も登場している。これらのプラットフォームに対するWindows Mobileの利点としては、10年近い歴史の中で登場したローカルのアプリケーションが非常に豊富な点があるだろう。このあたりの資産や、法人向けのソリューションに関しては一歩リードしている感がある。

歴代のスマートフォン(右から初代、es、Advanced、03、HYBRID)を並べてみると、かなりコンパクトになっているのが分かる。

 HYBRID W-ZERO3は作りも非常に精緻で質感も高く、所有する満足感も得られそうだ。1月の市場投入を期待して待ちたい。


HYBRID W-ZERO3でウェブブラウジング

 高解像度の液晶ディスプレーに加え、Internet Explorerは拡大縮小にも対応するので、PC用のウェブサイトも見やすく使えそうだ。Xcrawlのイルミネーションやスクロールも楽しい


QWERTYではなく、テンキータイプに変更

 スライドタイプのテンキーを装備している。予測変換の速度は試作機ながら、かなりキビキビしていた。

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