日本AMD、組み込み向け低消費電力CPU“Geode NX 1500”などの記者説明会を開催――「要するに“モバイルAthlon XP-M”です」
2004年12月15日 20時47分更新
日本AMDのリファレンスマザーボード“Falcon”に搭載された『AMD Geode NX 1500@6Wプロセッサ』 |
日本エイ・エム・ディ(株)は15日、東京・新宿の同社オフィスにプレス関係者を集め、組み込み機器向けのx86系低消費電力CPU『AMD Geode(ジオド) NX 1500@6Wプロセッサ』『同 1750@14Wプロセッサ』『同 1250@6Wプロセッサ』に関する記者説明会を開催した。現在ハードウェアベンダー向けに出荷中で、2005年3月ごろに対応マザーボードとともに店頭に並び始める見込みだという。編集部によるCPU単体の予想実売価格は、Geode NX 1500が70~80ドル程度(約7350~8400円)、同 1750と1250は60~70ドル程度(約6300~7350円)と見られる。
説明会の出席者。左から日本AMDの伊藤氏、TYANの和田氏、GMSの酒井氏 |
会場にはパーソナルコネクティビティソリューションズ本部(PCSG)テクニカルマーケティング部 課長の伊藤 信(いとうしん)氏、Geode NX対応マザーボードを開発中の(株)タヤン(TYAN)の本部長の和田 正(わだただし)氏、Geode NXを利用したビデオ・オン・デマンドソリューションを開発・提供するというゴールデン・マイクロ・システムズ(株)(GMS)の代表取締役の酒井慎一氏らが出席し、Geode NXの詳細について説明した。
伊藤氏は開口一番、「要するにGeode NXは、モバイルAthlon XP-Mである。コアには第7世代Athlonコア“Thoroughbred(サラブレッド)”を採用し、CPUパッケージは462ピン(Socket A対応)のOPGA(Organic Pin Grid Aray)。パワーマネジメント機能”AMD PowerNow!テクノロジ”と、3Dグラフィックスやマルチメディア向け拡張命令である“3DNow! Professionalテクノロジ”を搭載する」と切り出し、同CPUの性能の高さをアピールした。あえてAthlon XPと呼ばずにGeode NXと名付けた理由については、「Athlon XPがパソコン向けCPUの名称として確立しており、差別化するためにGeode NXのブランドを採用した」と説明する。
Geode NXを使ったシステムのブロック図 | Geode NXの外観とパッケージの詳細 | |
Geode NXプロセッサファミリーのロードマップ。2006年にはより高性能を追求したタイプと消費電力を抑えつつ性能を重視したタイプを追加予定 | 今回発表されたGeode NX3製品の主なスペック |
今回発表された3製品は、いずれも0.13μmプロセスルール、3700万トランジスタを84mm2のダイに組み込んだCPUコアを採用する。キャッシュメモリーは1次キャッシュが128KB、2次キャッシュが256KB(排他処理)で、FSB(フロントサイドバス)は266MHzのみ対応。消費電力はNX 1500とNX 1250が平均6W/最大9W、NX 1750が平均14W/最大25W(いずれもTDP、熱設計電力の測定値)。動作クロックはNX 1500が1GHz、NX 1750は1.4GHz、NX 1250が667MHzで、動作電圧はそれぞれ1.0V/1.25V/1.1Vとなる。TDPの違いにより、NX 1500とNX 1250はファンレス(ヒートシンクのみ)でのマシン構成が可能だが、NX 1750はCPUファンが必須。
会場に展示されたGeode NX対応マザーボード。左がAMDのリファレンスマザーボードDB1500(コードネーム:Falcon)、右はTYANのS2498AGN。なお、動作電圧などの違いにより、Athlon XPなどデスクトップパソコン向けCPUに対応するマザーボードでは、Geode NXは動作しないとのこと |
会場では、AMDによるリファレンスマザーボード『AMD Geode NX DB1500』(コードネーム:Falcon)と、TYANが開発中のGeode NX対応マザーボード『TYAN S2498AGN』が展示された。いずれもチップセットは台湾VIA Technologies社のVIA KM400A+VT8237(グラフィックスアクセラレーター機能内蔵)で、フォームファクターはDB1500がMini-ITX、S2498AGNはFlex ATXを採用する。S2498AGNは、2005年3月ごろにCPUとセットでの店頭販売が予定されており、予想実売価格はマザーボードのみで2万円程度になるとのこと。
AMDが開発したリファレンスマザーボードDB1500の概要 | DB1500のブロックダイアグラム。なお、TYANのマザーボードも構成はほぼ同等だが、Ethernetについてはチップセット内蔵機能を使うと負荷がかかりすぎるため、台湾Realtek Semiconductor社の『RTL8100C』(10/100BASE-TX対応)を搭載したとのこと |
Geode NXとTYANの対応マザーボードを使って、病院(病室内)向けのビデオ・オン・デマンドシステムを開発中というGMSの酒井氏は、「現在導入されている某社のシステムは、クリーンブートさせるために、夜中に自動的に再起動してしまい、(音がうるさくて)入院患者には不評だと聞いている。そのためファンレスで静かなSTB(セットトップボックス)を開発していたが、ほかのCPUではコマ落ちが多かった。当初はWindows MediaのCODECを採用するつもりだったが、2008年以降の有償化が発表されたため、急遽国内製のCODECに切り替えたところ、動作が重くてC3やEdenなど(組み込み機器向けCPU)では再生できず、Celeronでも2GHz級が必要だった。現在はまだ開発中だが、動作中のデモ映像(“水戸黄門”をエンコードした映像で、ビットレートは1.3M~1.5Mbps程度)を見せたところ、病院側からのオファーがすでに700ベッド分も来て驚いている」と語り、Geode NXのマルチメディア性能の高さを強調した。
GMSが開発中の、病院・病室向けビデオオンデマンドシステムのメニュー画面 | 病院関係者向けに水戸黄門の名作選をデモで紹介したところ、「最後まで見せろ!!」の歓声が上がったという | 会場で行なったストリーミング再生のデモを、トラフィックモニターで監視しているところ。平均で毎秒10KB、最大25KB程度の映像データを受信しながら再生している |
なお、説明会後の記者からの質問で、プロセッサーナンバー(1500/1750/1250)の基準となるCPUについて聞かれると、伊藤氏は「VIA C3プロセッサーです」と答えた。