2008年6月10日、パシフィコ横浜で開催された「Google Developer Day 2008 Japan」。その模様をDebian公式デベロッパーの武藤健志氏からお伝えしてきたが、今回がその最終回となる(関連記事1、関連記事2)。ここでは、午後に開催されたセッションの後半部分をご紹介しよう。(編集部)
「Google Maps API for Flash」Googleを驚愕させた日本のFlash技術
基調講演ではデモンストレーションを披露しそこねたGoogle ソフトウェアエンジニアの加藤定幸氏だが、この講演では見事その雪辱を果たすことができた。
Google Maps API for Flashは、既存のJavaScriptでGoogle Mapsを操作するAJAX版の代わりに、FlashのネイティブなActionScriptでの操作を実現するものだ(APIはAJAX版に準拠している)。Flashの作成には、Adobe Flex Builder 3またはAdobe Flex SDKの使用が推奨される。Adobe CS3や携帯電話で使われているAdobe Flash Liteには現時点では対応していない(Flash Liteの場合には、通信量制限やバージョンの差異の問題があるとも加藤氏は述べた)。実際の利用にはさらにGoogle MapsのAPIキーおよびインターフェイスライブラリ(Google Maps API for Flashのページの「Download the Google Maps API for Flash SDK」)が必要だ。
最初のFlashアプリケーションとして加藤氏は、パシフィコ横浜にHello Worldのマーカーを置くというサンプルを作成してみせた。Maps API for Flashはイベントドリブンであり、たとえばこの地図を開くにはMAP_READYという地図の準備ができたことを示すイベントを受けて表示座標を調整している。
さて、基調講演で聴衆を沸かせるはずだった、あんどうやすし氏作のフライトシミュレータの登場だ。このFlashアプリケーションは、Google Mapsの航空写真上をまるで実際に飛行機で飛んでいるかのように次々と表示し、ただ見ているだけでも楽しいものだ。このアプリケーションはカーソルキーで操作できるが、JavaScriptを使うAJAX版に対するGoogle Maps API for Flashの利点の1つとして、加藤氏は(Flashのセキュリティモデルで許されている限りの範囲で)ローカルのデバイスやリソースにアクセスできることを挙げる。その実例として、加速度センサーを塔載した基板をUSBデバイスとして接続し、左右に傾けることで飛行機の方向を自在に操作してみせた。
加藤氏は、Google Maps API for Flashを公開するやいなやこのAPIを使った完成度の高いFlashアプリケーションが日本で発表されたことを挙げ、Google社内で「情報リークがあったのではないか?」と騒動になったというエピソードを笑い話として述べた。日本のFlash技術は世界有数であり、注目も集まっている。その高い技術を世界に紹介するためにも、簡単でよいのでREADMEファイル(アプリケーションの概要や使い方を記した文書)を英語で記述して添付してほしいとも語った。
質疑応答では実際にFlashアプリケーション開発を行っていると思われる技術者から多数の突っ込んだ質問があり、加藤氏をたじたじとさせる場面もあった。その中で加藤氏は、オーサライズツールのAdobe AIRやAdobe Flash CS3の対応への要望は非常に強いことを認め、積極的に検討中であると答えていた。
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