iPodやHDDレコーダーに私的録音録画補償金(補償金)を適用するかどうか──。ここ数年、文化庁にて議論されているいわゆる「iPod課金」問題は、ネットでも関心の高いトピックのひとつだ。
今まで「適用すべきだ」「いや、縮小すべきだ」と意見が分かれて、なかなか落としどころが決まらなかったが、8日に開かれたこの問題を話し合う文化庁の「私的録音録画小委員会」の第2回会合では何か進展があったのだろうか?(関連記事1、2) 第2回会合に出席した、ジャーナリストの津田大介氏に話を聞いた。
私的録音録画補償金
日本の著作権法では、著作物を個人や家庭内で楽しむ場合に限って「私的複製」を認めている(第30条)。一方で、CD/DVD/MDなどのデジタル方式の録音録画に関しては、記録メディアに「補償金」を上乗せして回収し、権利者に利益を還元するように定められている(第30条2)。法律が決まったあとに、iPodなどのデジタルオーディオプレーヤーやHDDレコーダーといった新しい録音/録画機器が登場して主流になったため、現在、補償金の範囲を拡大するかどうかが議論されている(関連リンク)。
議論がこう着して、時間切れに
── 以前、文化庁は「将来的に補償金を廃止する」という案を出していましたよね(関連記事)。なぜいまさら「iPod課金」という逆の話を蒸し返してきたんですか?
津田 外野から見ると「蒸し返した」ように見えるかもしれませんが、この小委員会をずっと追ってきた人であれば、蒸し返したのではなく、小委員会の議題では当然の流れだったということが分かると思います。
── もう少し詳しく経緯を教えてください。
津田 昨年、私的録音録画小委員会においては、著作権法第30条の範囲を変更する「ダウンロード違法化」(関連記事)の話が目立ちましたが、iPodに代表されるメモリーオーディオを補償金に含めるかどうかということについても、ずっと話し合っていました。この委員会のいちばん大きなテーマは補償金ですから。
私的録音録画小委員会は、2006年4月に立ち上がったものです。元々は、2005年8月の文化審議会著作権分科会の法制問題小委員会で、iPodに課金するかどうかの意見が専門委員の間で真っ二つに割れてしまったために結論が出せず、「この問題について議論する専門の場を作ろう」という話になって作られたという経緯があります。
私的録音録画小委員会は、政府の知的財産戦略本部から「廃止を含めた抜本的見直し」を要請されていましたから、本来は「今の制度を続けてiPodなどの機器を対象に含めるのか」「それとも補償金制度そのものをなくすのか」という2つの選択肢を軸にして議論をするべきだったのでしょう。しかし、権利者側とメーカー/消費者側で意見が分かれ続けて、結局、昨年の12月に時間切れを迎えてしまったみたいな部分があります。
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