トーストをくわえながら「ちこくちこく」という主人公は“実在”するのか

私のバイブルの一つである「サルでも描けるまんが教室」第1巻の「Lesson9.ウケる少女まんがの描き方」に以下のようなコマがあります。

（サルでも描けるまんが教室（１）　相原コージ・竹熊健太郎 著、小学館、P88 1～5コマ目）

この、「遅刻しそうになってトーストをくわえながら走る少女（たいていの場合主人公）」というネタは「よくあるネタ」として人口に膾炙されているように見えます（だからこそ「サルまん」でも取り上げられたと思う）
また、Googleにて「少女漫画　トースト　くわえ」という語句にて検索すると以下のようなページを発見できます。

• http://www.lollin.com/diary_0201.html(2002年1/1の記述)
• http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/gcomic/1147179951/6

いずれも「そーゆう少女漫画ってよくあるよねー」という感じの記述です。
しかし、ここで皆さんにも考えてもらいたいのですが、私はそういう漫画を、少女漫画だけでなく少年漫画等も含めてですが、今までその具体的な実物を実際に見たことがありません。
また、こういう「遅刻しそうになってトーストをくわえながら走る少女」について語られる際に、具体的な作品名が上げられることもほとんどないように見えます（前述のGoogle検索結果のページにも具体的な作品名が出てきているものがない）
よく語られるネタなのですから、少しは具体的な作品名が示されてもよさそうなのですが、それがないことに前から不思議に感じておりました。
本当に「遅刻しそうになってトーストをくわえながら走る少女」（長いので“遅刻ト”）が出だしに出現する漫画は実在するのか。それとも、都市伝説的なものなのか。これを確認すべく、本日すこし時間をとって調査（といえるほどのものかどうかわかりませんが）を行いました。

とりあえずBOOKOFFにて調査

遅刻トが”出だし”に出現する漫画（今回は少女漫画に限る）が本当にあるのか、今日 寄ってみたBOOKOFFの多摩付近の某店にて調査しました。
（←いちおう店名は伏せました）
（はじめにお断りしますと、時間の都合で雑な調査しかできませんでした）

調査方法

1 BOOKOFFの某店の少女漫画の棚に行く
2 その中の、シリーズものの漫画の「1巻」をとりだし、その先頭の漫画（すなわち、連載ものの漫画の連載第1回と推定されるもの）を見て、遅刻トがいるかどうか確認する
3 1~2を、疲れるか飽きるか店から追い出されるまで繰返す
（少女漫画の中には結構 巻数の多いものもあり、それら全巻を調査するのは無理と考え、さきのサルまん引用コマの「出だし」のところだけ見ようと考えた。なお、シリーズものでない漫画（読みきり）は除いた）

結果

で、そのBOOKOFF某店にて、手始めに105円の棚（状態のあまり良くない本が出版社ごとにまとめて置かれている）の「白泉社」のところから調査をスタートしました。
（←作者名が「あ」で始まる箇所から
（「わ」の作者のところまで調べた。冊数はざっと400冊くらい
しかし、結果からいうとそこでは見つかりませんでした。前述のとおりシリーズものでない本は除き、2巻以上ある単行本の1巻を手にとっては最初の回を眺め、を繰返したのですが、全然遅刻トが出てくる漫画がない。
てゆーか、私自身最近の少女漫画に詳しくないため、少女漫画といえば学園ものの恋愛話ばっかだと思っていたのですが、実際に見てみるとファンタジーものとかギャグ度の強いものとか、ひとくちに少女漫画といってもいろいろあるようで、当然そういう「学園ものでない」作品は学校自体が作品中に存在しないので「遅刻」なんて行為もない。
トーストをくわえる少女はおろか、ちこくちこく言いながら学校に駆け込む主人公自体見つかりませんでした。
（この中で唯一みつけたのが 花ざかりの君たちへ(1)(中条比紗也 著、白泉社)という漫画でして、トーストはくわえてないが、遅刻しかかった主人公が男の子とぶつかって……というシーンが第1回にあった）
で、調査開始から40分ほどして、前述の105円の棚中の白泉社の漫画について見終わったところで、時間の都合でその店から離れざるを得なくなり、とりあえずそこでやめました。
（あと、自分のような30代男（しかもキモオタ系の外見）が少女漫画の棚周辺にいると女性からの視線が痛くていたたまれなくなってきたのもある）
メモ等を取れなかったので調査した正式な冊数は不明ですが、およそ40冊前後は見たはずでした。しかし、それらの単行本収録の最初の回にて遅刻トは見られませんでした。
こうなってくると、本当に遅刻トが存在する作品があるのかどうか怪しくなってきました。

原因

ただ、今回の調査では明らかに不完全であります（以下理由）
1 特定の出版社しか調べていない
2 最近の作品しか観ていない（BOOKOFFに売られているのは比較的最近の本に限られる）
3 シリーズものでない単行本を抜かしている
4 出だし以外の回にて遅刻トが現れている可能性がある
5 1冊1分弱のペースで見ていたため、じっくり見ておらず、見落としがあったかも
しかし、以下わたしの推測ですが、最近の少女漫画では実は「遅刻しそうになってトーストをくわえながら走る少女」というネタ自体がじつはほとんどないのではないか？それは「そーいう漫画がある」という（架空の）認識が大部分の読者に共有されているだけではないのか？という仮説が成立するのではないか、という気がしております。
やや昔（80年代～70年代）の少女漫画のほうは今回調査できなかったため、今度どこかの漫喫にこもって昔の少女漫画を念入りに調べてみようかと考えておるでごんす。（←何人だおのれは
（もし「遅刻しそうになってトーストをくわえながら走る少女」が出だしにいる少女漫画（他のジャンルでもOK）の具体的な作品名や巻数等ご存知の方は是非ご連絡をお願いします）