石川雅之さんの傑作マンガを原作に、その世界観を見事に映像化した話題作だ。そんなアニメ化を実現したのは精鋭スタッフだ。『無限のリヴァイアス』や『コードギアス 反逆のルルーシュ』などで知られる谷口悟朗さんを監督に、アニメーション制作はProduction I.Gが担当している。
このインタビューでは、監督の谷口悟朗さんにアニメ化にあたっての工夫、オリジナル要素の意図など話をうかがった。
TVアニメ「純潔のマリア」公式サイト
http://www.junketsu-maria.tv
3月29日(日)22時30分 TOKYO MXを皮切りに最終話放送
■ アニメ化にあたって
――「監督」としてTVシリーズに参加されるのは久しぶりですが、そもそもどのようなきっかけで『純潔のマリア』に参加されたのでしょうか?
谷口
講談社さんとバンダイビジュアルの湯川(淳)プロデューサーからお話をいただきました。同じく講談社さんから刊行されている『プラネテス』も監督をさせて頂いていたので、それもきっかけの一つだったのかも知れませんね。
――はじめに原作を読まれてどう思われましたか?
谷口
これは困ったな、と。中世ヨーロッパの百年戦争末期はそもそも資料に乏しい時代なんです。しかも日本人にとって「百年戦争」は馴染みがないので、バックボーンを説明しようとしても興味を持たれない可能性がある。さらに物語やテーマ的に「キリスト教」をファッションとして捉えてはならず、むしろきちんと教義としてとらえないといけない。そうした要因が複雑に組み合わさっていたので、どうしたものかと。
――実際どうされたのでしょうか?
谷口
『プラネテス』の時と同様に、まず “勉強会”からはじめました。チーフリサーチャーの白土晴一さんを講師として招いて、当時の時代背景やキリスト教の教義、さらに服装や食べ物にいたるまで、私や脚本の倉田さん、デザインの千羽さんや中田さんにひと通り説明していただきました。
――オリジナルキャラクターの登場など、原作の石川雅之氏とどんなお話があったのでしょうか。
谷口
原作マンガでは「魔女」と「天の教会」の関係性が物語の中心でしたが、アニメでは視聴者の方により深く理解してもらうために「人間」の目線を補強させてくださいとお話しました。人間は、更に「働く人」「戦う人」「祈る人」に分類し、各グループにオリジナルキャラを配置してあります。
――原作マンガと比べると、主人公・マリアが少女っぽく描かれているように感じました。
谷口
これは「漫画」と「アニメ」というメディアの違いと、今回「人間」の目線も導入したことによる必然から、ですね。許可していただいた石川さんには感謝しています。
――キャラクターデザインの千羽由利子氏を起用されたのも、そのあたりが理由になってきたのでしょうか?
谷口
ええ、「柔らかさ」が欲しかったので。あと、本作では「品」がないと成立しないと思っていたんです。そうしたときに男性の方のキャラクターデザインでは、いらない欲が入ってしまう可能性もあった。
――いらない欲ですか?
谷口
「性欲」です。生殖に関する信仰も入ってくる可能性があったため、女性のキャラクターデザイナーさんのほうが向いていると考えまして、『プラネテス』からの流れも活かして千羽さんにお願いしました。
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