2018年12月20日(木)18:00
「劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel]」リレーインタビュー(1)中田譲治 言峰綺礼を“表現しすぎない”狭間を保つ
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2019年1月12日に、いよいよ公開となる「劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel]ll.lost butterfly」(以下、「Fate[HF]」と略)。ゲームやスピンオフ等、大きな広がりを見せる「Fate」シリーズで、長年キャラクターを演じてきたキャストへのリレーインタビューを全4回にわたってお届けする。第1回では、TYPE-MOON作品に縁の深い中田譲治に、言峰綺礼を演じはじめた頃の思い出や、自身のツイッターでファンと交流するときに意識していることなどを聞いた。(取材・構成:五所光太郎/アニメハック編集部)
―― 中田さんとTYPE-MOON作品の関わりから聞かせてください。いちばん最初に演じられたのは、「MELTY BLOOD」のネロ・カオス役ですよね。
中田:そうですね。その後、「空の境界」のドラマCDで荒耶宗蓮役として呼んでいただいて。原作が長大なもので驚きましたが、読みはじめたら引きこまれてとても面白く読みました。そのときには、まさかこの小説が何年か後に映画化されるとは夢にも思いませんでしたけれども。
―― 最初に、言峰綺礼役を演じたときの印象を覚えておられますか。
中田:今思えば、「きっとこうだったのだろう」と後付けのような想像はつけられるかもしれませんが、当時はそれほど明確なイメージはなかったと思います。最初のテレビシリーズを経て、その後のゲーム(※「Fate/stay night [Réalta Nua]」)の収録のときには、かなりのボリュームがありましたので、やっていくうちに言峰綺礼というキャラクターが自分のなかにしみこんできた印象があります。その後、「Fate/Zero」のドラマCDをやることで彼のバックボーンを知り、性格の補正のようなことをしていきました。
―― 綺礼を演じるとき、どんなところに気をつけているのでしょうか。
中田:綺礼は、決して感情表現の豊かなキャラクターではありませんので、声で表現しすぎないようにしています。彼は傍観者としての冷めた目をもっていて、どんなときも動揺しませんからね。あまり人間臭くしゃべったり、声のトーンに表情をつけすぎたりすると彼のキャラクターにはあわず、「あれ?」っと思われるかなと。かといってトーンを同じままにすると棒読みに近くなってセリフの裏づけが伝わらなくなってしまう。その狭間を保つ緊張感が、つねに求められているのかなと自分では思っています。
―― 普段は感情を表にださない綺礼ですが、「Fate[HF]」第1章で切嗣についてふれるときには、他の人物のときとはわずかにテンションが違っている気がしました。
中田:そうですね。そこは意識しました。今お話したことと相反するかもしれませんが、第四次聖杯戦争を経た綺礼にとって、「切嗣」や「士郎」といった言葉には、やはり彼なりに微妙な心理の動きがあるはずです。とはいえ、直接的な憎しみや怒りがあるのではなく、余裕をもって士郎を見極めてやろうと皮肉なほほえみを浮かべているぐらいの違いかなと思っています。
―― 士郎を「少年」と呼ぶことからも、かつて自分も同じようなことを経験した大人の立場から全体を見ているようにも感じました。中田さん自身が、そのように感じられることはありますか。
中田:多々ありますね。とくに桜ルートでは、これまでよりさらに一歩引いた大人の立場から、俯瞰して見ている部分は当然あると思います。また、須藤(友徳)監督をはじめとするスタッフの皆さんが、綺礼を格好よく描いてくださっているおかげで、肉体としても存在感のある、大人の感じをだしてくださっているのも大きいです。絵の魅力にも助けていただきながら、全体のなかで余裕をもって接している雰囲気がでているのではないかと感じています。
(C) TYPE-MOON・ufotable・FSNPC
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―― 大人だからこそ、聖杯戦争の監督役でありながらもルールを逸脱するところも面白いですよね。
中田:そうですね。士郎も桜も一直線で、本当にピュアですから。ただ、綺礼は彼らのピュアさにふれても、感動や共感をするようなことはないとも思います。
―― 「Fate[HF]」が劇場3部作で映像化されると聞いたとき、どう思われましたか。
中田:僕は奈須きのこさんの文体が大好きで、文章ならではの心理描写や感情の機微の表現など、皆さんが“奈須節”と言われているところにとても惹かれています。でも、それは文章ならではの表現で、映像化できないところでもあるじゃないですか。
―― そう思います。
中田:奈須さんのお仕事というのは、ある意味、アニメ化しにくい部分に魅力が隠れているのではないかと僕個人は思っています。「Fate[HF]」では、そこをどのように映像化していくのか、特に最初となる第1章は本当に難しいのではないかと思っていました。物語として映像的に見どころになるところはたくさんありますが、人と人の関係性やセリフの機微といった部分まで表現するのは難しいのではないかと……。そうした部分を、昨年公開された第1章では、冒頭の30分で桜の生い立ちを描き、見ている人に共感をもってもらうつくりにすることで見事に表現されていました。須藤監督をはじめとするTYPE-MOONへの愛に満ちた方々がつくられたからこそ、あのような素晴らしい第1章ができたのだと思います。
―― 士郎がセイバーをはじめて召喚するファンにはおなじみの名場面を、途中に入るオープニングのかたちで入れたのも秀逸なアイデアだったと思います。
中田:すごくいい演出ですよね。オープニングで描かれた場面は、僕も(綺礼の声になって)「聖杯戦争とは……」とやっていますが(笑)、ああいうかたちで描かれてスッと腑に落ちました。これまでの「Fate」を見ている方にも見ていない方にも、いいオープニングだったのではないかと思います。
―― 年明けに公開される第2章の話を、差し支えない範囲で聞かせてください。台本を読まれて、どう思われましたか。
中田:いよいよ物語が動きだすなと思いましたね。「桜つらいなあ……」と。あとやっぱり、台本の最後のページをまず見て「どこまでやるのかな?」と見てしまいました(笑)。第2章ではどこまで描かれるのかを確認して、それから頭からまた読み直して、「なるほど。こういうふうになっているのか……」と。第2章は本当にいろいろなことが明らかになりますし、面白い作品になること間違いないと思いました。
―― 第2章のアフレコは、いかがでしたか。
中田:アフレコは前半と後半に分けて行い、後半のときには事前に前半の声を入れた映像をお借りできたので、それを参考にしながら臨むことができました。第2章のとき同様、須藤監督や奈須さんをはじめとする方々がお見えになって、細かいところはディレクションをいただきましたが、第1章のときと比べて、役に関してのディレクションは減ったような気がします。「Fate[HF]」における言峰綺礼はこういう感じである、との共通認識のうえで演じることができたように思います。
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劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel] ll.lost butterfly
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