先日公開した記事、「運用型広告の運用者なら押さえるべき、2019年に注目したい5つのトピックス」でも2019年にGoogleが求人事業に参入するというニュースをご紹介いたしましたが、ついに2019年1月23日(水)に、「Google しごと検索」という名称でサービスの提供が開始されました。
【参考】Google Japan Blog: Google しごと検索で、仕事探しをもっとスムーズに!
Google しごと検索は、サービス提供開始前までGoogle for Jobsという名称で呼ばれていたものです。
これまで求人といえば、Indeedを始めとする求人媒体を利用することが一般的でしたが、Google しごと検索を利用することにより、Googleの検索結果に自社のWebサイトで掲載している求人情報が表示されるようになります。求職者と企業の接点を増やすためにぜひとも導入したいプロダクトですね。
今回は、このGoogle しごと検索の概要と、利用方法について説明をしていきたいと思います。
目次
Google しごと検索(Google for Jobs)とは?
Google しごと検索(Google for Jobs)とは、Googleの検索結果に求人情報を表示させる機能です。Googleで求人に関する検索を行うと、次のように表示されます。
このように、Googleの検索結果に求人情報がリッチコンテンツとしてオーガニックにブレンドされた形で表示されます(ユーザーの目を引くポップアップや、双方向性を備えた機能を備えた「エンリッチリザルト」とも呼ばれます)。
表示されるのは上位3つまでで、この順位付けに関するロジックはもちろん非公開となっていますが、求人情報と検索語句との関連性や現在地といった様々なシグナルを元にして決まっているものだと考えられます。
求人情報をクリックすると、クリックした求人票の詳細やその他求人の一覧が確認できるページが表示されます。この画面から職種や就業場所など様々な条件を指定することで、求人情報の絞り込みもできるようになっています。
Google しごと検索に表示される情報は、テキストが中心の構成となっているため、求人サイトのようなリッチな見栄えではありません。まさに大学や高校、はたまたスーパーマーケットの掲示板に張り出されているような求人票といったところでしょう。
Google しごと検索に求人情報を表示させる方法
Google しごと検索に求人を表示させるためにはいくつかの方法がありますので、代表的なものを紹介していきます。
1. 自社サイトで対応、構造化データのマークアップを行う
構造化データとは、複数の要素を事前に決められたルールに則って整理した情報のことだとお考えください。Google しごと検索に必要な構造化データとはすなわち、職種や給与や就業場所といった情報を整理して1つにまとめたものを指します。
Google しごと検索では、求人に関する情報を「schema.org」の仕様に則って構造化、構造化したデータを「JSON-LD」という方法で記述します。
schema.org と JSON-LD という見慣れないフレーズを見ただけで拒否反応が出てしまっているみなさま、安心してください。一度でも作ってしまえばどんなものかが体感できますし、使い回しも効きますのでトライしてみましょう。
自社サイトで対応、構造化マークアップの例
<script type="application/ld+json">
{
"@context" : "http://schema.org",
"@type" : "JobPosting",
"title" : "運用型広告エキスパート(リスティング広告やFacebook広告などの運用型広告の運用、コンサルティング)",
"hiringOrganization": {
"@type": "Organization",
"name": "アナグラム株式会社",
"sameAs": "https://anagrams.jp/",
"logo": "https://anagrams.jp/logo_400x400.png"
},
"jobLocation": {
"@type": "Place",
"address": {
"@type": "PostalAddress",
"streetAddress": "千駄ヶ谷4丁目4-4 フィールド北参道",
"addressLocality": "渋谷区",
"addressRegion": "東京都",
"postalCode": "1510051",
"addressCountry": "JP"
}
},
"baseSalary" : {
"@type" : "MonetaryAmount",
"currency" : "JPY",
"value": {
"@type": "QuantitativeValue",
"minValue": 3500000,
"maxValue": 10000000,
"unitText": "YEAR"
}
},
"employmentType" : "FULL_TIME",
"description" : "<p>リスティング広告やFacebook広告を筆頭とした運用型広告の運用代行、及びコンサルティングが中心となります。(以下略)</p>",
"datePosted" : "2018-11-01"
}
</script>
JSON-LDに慣れていないかたは、これだけ見ても何がどうなっているかわかりませんよね…。
このJSON-LDの構造を図で表してみると次のようになります。
JSON-LDによる構造化データそのものだけ見ると、構造や要素の親子関係が見えにくいですが、このような図と比較してみるとなんとなくイメージが湧くのではないでしょうか?
① @context 構造化マークアップの例
JSON-LD形式はあくまでデータの記法やフォーマットを指すものであって、それ自体に意味はありません。そのためGoogleなどが認識できるように、どのような構文でデータを記述するかを最初に宣言する必要があります。
Google しごと検索では、「schema.org」で定義された構文に対応しているため、@contentには「http://schema.org」と記述します。
ピンチアウトしてご確認ください。
要素 | 概要 | 記入例 |
---|---|---|
@context | schema.orgに則った構造化データであることを示すため、"http://schema.org"を指定する | http://schema.org |
② @type 構造化マークアップの例
@typeは、このデータがどういった種類のデータを表しているのかを宣言するための項目です。schema.orgでは求人に関するデータタイプとして「JobPosting」という値が用意されていますので、これを指定します。
ピンチアウトしてご確認ください。
要素 | 概要 | 記入例 |
---|---|---|
@type | 求人を表す"JobPosting"を指定する | JobPosting |
③ title 構造化マークアップの例
titleは職種名を記述するための項目です。求人情報のタイトルではなく、「システムエンジニア」、「医療事務」のように指定します。
ピンチアウトしてご確認ください。
要素 | 概要 | 記入例 |
---|---|---|
title | 職務の名称(求人情報のタイトルではない) | 運用型広告エキスパート |
④ hiringOrganization 構造化マークアップの例
hiringOrganizationは求人を募集している企業に関する情報を指定するための項目で、いくつかの子項目が存在します。
ピンチアウトしてご確認ください。
要素 | 概要 | 記入例 |
---|---|---|
hiringOrganization > @type | 会社の情報に関する項目であることを宣言するため、"Organization"を指定する | Organization |
hiringOrganization > name | 会社名 | アナグラム株式会社 |
hiringOrganization > sameAs | 企業のWebサイト(URL形式) | https://anagrams.jp/ |
hiringOrganization > logo | 会社のロゴ画像(URL形式) | https://anagrams.jp/logo_400x400.png |
⑤ jobLocation 構造化マークアップの例
jobLocationは就業場所に関する情報を指定するための項目で、いくつかの子項目が存在します。
ピンチアウトしてご確認ください。
要素 | 概要 | 記入例 |
---|---|---|
jobLocation > @type | 就業場所に関する項目であることを宣言するため、"Place"を指定する | Place |
jobLocation> address > @type | 住所情報に関する項目であることを宣言するため、"PostalAddress"を指定する | PostalAddress |
jobLocation> address > streetAddress | 町名以降(記入例のような書き方がおすすめ) | 千駄ヶ谷4丁目4-4 フィールド北参道 |
jobLocation> address > addressLocality | 市区町村 | 渋谷区 |
jobLocation> address > addressRegion | 都道府県 | 東京都 |
jobLocation> address > postalCode | 郵便番号 | 1510051 |
jobLocation> address > addressCountry | 国コード | JP |
⑥ baseSalary 構造化マークアップの例
baseSalaryは給与に関する情報を指定するための項目で、いくつかの子項目が存在します。
ピンチアウトしてご確認ください。
要素 | 概要 | 記入例 |
---|---|---|
baseSalary > @type | 給与額に関する項目であることを宣言するため、"MonetaryAmount"を指定する | MonetaryAmount |
baseSalary > currency | 通貨単位を指定する。日本円なら"JPY" | JPY |
baseSalary> value > @type | 金額やその範囲など定性的な値の指定に関する項目であることを宣言するため、"QuantitativeValue"を指定する | QuantitativeValue |
baseSalary> value > value | 基本給の額 | 5000000(給与の範囲を指定する場合は、valueを使わず、minValueとmaxValueを定義) |
baseSalary> value > minValue | 基本給の最低額 | 3500000(給与の範囲を指定しない場合は、minValueを使わず、valueを定義) |
baseSalary> value > maxValue | 基本給の最高額 | 10000000(給与の範囲を指定しない場合は、maxValueを使わず、valueを定義) |
baseSalary> value > unitText | 単位を次のいずれかの値(大文字と小文字を区別)から選択する
|
YEAR |
⑦ employmentType 構造化マークアップの例
employmentTypeは雇用形態を記述するための項目です。フルタイム、パートタイムなどの選択肢の中から適切なものを指定します。
ピンチアウトしてご確認ください。
要素 | 概要 | 記入例 |
---|---|---|
employmentType | 雇用形態を次の値(大文字と小文字を区別)から1つ以上選択する
|
FULL_TIME |
⑧ description 構造化マークアップの例
descriptionは職務、資格、スキル、業務時間、学歴に関する要件、経験に関する要件などといった詳細説明を記述します。記述はHTML形式で、いくつかのHTMLタグを利用することができます。
ピンチアウトしてご確認ください。
要素 | 概要 | 記入例 |
---|---|---|
description | HTML形式で求人について詳細に説明する(職務、資格、スキル、業務時間、学歴に関する要件、経験に関する要件など)
|
<p>リスティング広告やFacebook広告を筆頭とした運用型広告の運用代行… |
⑨ datePosted 構造化マークアップの例
雇用主が求人情報を投稿した最初の日付をISO 8601形式で記述します。
ピンチアウトしてご確認ください。
要素 | 概要 | 記入例 |
---|---|---|
datePosted |
雇用主が求人情報を投稿した最初の日付をISO 8601形式で記述 例:
|
2017-01-24 |
構造化データマークアップ時の注意点など
ほとんどのケースで、この表をもとに構造化データのJSON-LDを書き換えていただくだけで大丈夫ですが、今回ご紹介した項目以外にも求人内容によって別で必要になってくる要素もあります。下記のドキュメントも参考に進めてみてください。
参考:しごと検索 | 検索 | Google Developers
完成したデータは求人情報が記載されているWebページのソースに埋め込みます。(実装する位置に指定はありませんが、いち早く読み込めるようにできるだけソースの上の方に実装しておくのが良いかと思います)
構造化データは人力で書き換えてもよし、データベースと連携して必要な情報を動的に書き換えるでも良し、規模やリソースに応じて対応ください。
Googleからは構造化データ テストツールも提供されているので、テストツールを使って確認しながら作成してみましょう。
このような構造化データを作成し、求人ページにマークアップする過程を経ることで、Googleがクローリングによって求人データを把握できるようになります。
注意点として、求人に関する構造化データは、1件の求人とそれに関連する詳細情報を記載した最も詳細なページに適用することと定められています。そのため、構造化データは求人一覧のページではなく、求人の詳細ページにマークアップする必要がありますので、Webサイト上で各求人についてページが分かれていない場合は、先にGoogle しごと検索に対応できるようにサイトの改修が必要になるケースもあります。
これ以外にも、Googleが定めるガイドラインに対しても準拠している必要がありますので、こちらはGoogle しごと検索に取り組む前に確認をしておきましょう
2. Google しごと検索に対応した採用管理システム(ATS)を導入する
採用管理システム(Applicant Tracking System)の中には、求人を公開することでGoogle しごと検索の掲載にも対応しているベンダーがあります。
既にATSを利用されている場合は、サービスを提供しているベンダーにまずは相談してみましょう。
現在導入を検討している場合は、Google しごと検索の対応も可能かどうか考慮した上で、サービスの選定を進めてみてはいかがでしょうか。
3. Google しごと検索に対応した求人サイトに掲載する
サードパーティの求人サイトに求人を掲載することにより、Google しごと検索へ求人情報を表示させることも可能です。
日本国内でも、大手の求人媒体で対応が進んでいる様子ですので、前述の採用管理システムのケースと同じ内容になりますが、Google しごと検索の対応可否は利用している求人媒体に確認をしてみましょう。
これから求人媒体を選ぶという段階であれば、事前にGoogle しごと検索に対応しているかも考慮して選定を進めてみましょう。
状況に応じて適切な選択肢を取ろう
Google しごと検索は1求人ページに対して1つづつ構造化データのマークアップを行う必要があります。従いまして常に多くの求人情報をWebサイトに掲載している場合、これをすべて人力で賄うことは難しいです。
そのような場合は、自社で仕組み化して自動生成を行うか、対応した求人サイトや採用管理システムを利用するかという選択肢になってきます。その場合はリソースや費用なども考慮して手段を選びましょう。
これは筆者の体感値ですが、殆どの企業が何らかの求人サイトを活用しているかと思いますので、多くの求人において特にアクションを起こさずとも求人サイトを経由してGoogle しごと検索にも表示されるのかと思います。
しかしながら、Google しごと検索は求人サイトのようなサードパーティ経由だけではなく、自社ドメインからも求人情報をGoogle しごと検索に掲載することも可能になっている(ただしURLの正規化が必要ですが)ので、自社サイトへトラフィックを集めて、採用コストを抑えるということもできそうですね。
Google しごと検索のような新しいプロダクトが登場すると、検索ユーザーとの接点が増えますが、そこに掛けるリソースやコストも増やさざるを得ません。前述の通り、Google しごと検索への掲載自体はATSや求人サイトを経由しても掲載が可能です。それぞれのメリット・デメリット・インパクトを十分考慮した上で、どう対応していくか決めていきたいですね。