サンフレッチェ広島のJ1初優勝おめでとうございます!
慢性疲労症候群を抱えながらもプレーを続けた森崎和幸選手には
励まされた同病者がたくさんいます。
だから復帰と優勝はほんとうによかった!とTwitter内でも盛り上がりました。
森崎選手、おめでとうございます!
※森崎選手のお名前、正式には「森﨑」(つくりが「立つ」のほう)ですが
機種依存文字で表示されない場合があるので
勝手ながら「森崎」に表記を変更させていただきます。2012.12.04追記。
集英社の スポルティーバ 公式サイト web Sportiva の
「【Jリーグ】J1初優勝を飾った、広島・森﨑和幸を苦しめてきた「病」」
にも詳しく掲載されました。
森崎選手の「理解につながれば」というお気持ちが拡散して
病名をたくさんの方に知っていただけるいい機会になったと思います。
ありがとうございます。
感謝をしつつ、記事の中で一部、もしかして誤解を招くかも?!
と不安に思うところについて書いておきます。
1.奥様の発言
(以下引用)
苦しむ和幸を救ったのは、妻の志乃さんだった。
「(和幸は)ずっと家で何もしない毎日を過ごしていて、私もこのままじゃダメだって思ったんです。 何とかしたいと思って、無理矢理、練習場に連れて行くことにしたんです。サッカーを『辞めたい』という気持ちは変わらないかもしれないけど、やることがな いなら練習場に行こうって」
(引用終わり)
・「何もしない毎日」ではなく、何もできない毎日。
やりたいことは山ほどあるのに、動けなくて悶々とする患者が大半。
・「やることがない」のではなく「できることがない」。
とにかく体力が激しく消耗していて動けないのです。
熱が出て具合が悪い、ただ横になっているだけでも動悸と息切れがする、
筋力が激しく落ちているために起き上がって座ることができない、など。
私も筋力が落ちたときは布団が重すぎて腕を抜くことができなくなったり、
寝返りを打つのが困難になったりしました。
・「このままじゃダメ」
病気の状態と時期による。
時期によっては無理矢理動くことでさらなる悪化を招く。
病気が暴れている時期は安静にするほうが快方に向かう患者が多い。
※ただ、私も介護経験があるので、
ひたすらに見守り続ける家族の辛さ、もどかしさはわかるつもりです。
何か具体的なことをしないと自分が役立たずな気持ちになったり焦ったり。
ですから奥様の言動・行動を責めることはできません。
森崎選手の場合は回復へつながったので結果オーライだと思います
2.奥様の行動
(以下引用)
チームメイトに会うのが嫌だった和幸は、もちろん抵抗した。それでも、志乃さんは引き下がらなかった。
(引用終わり)
・慢性疲労症候群は、気持ちとは裏腹に体が動かなくなる病気です。
怠けているのでもないし、ふてくされてストを起こしているわけでもない。
大好きなサッカーが辛くなり、その仲間に会いたくなくなるくらいの心境を理解して、
抵抗したら受け入れてほしい。
病状が回復して体が動き出せば、ムズムズして自分から行動を起こします。
むしろうれしさのあまり行動を起こすのが早すぎて、悪化する患者が多いほどです。
・抵抗を受け入れられなければ、家族は自分の病状を理解してくれていないと感じます。
家庭の中ですら孤独になります。家族に心開けなくなるリスクがあります。
森崎選手の場合は、タイミングがよかったか、
奥様との信頼関係が強かったゆえにうまくいったのではないでしょうか。
この記事を読まれた方、
奥様の対応がデフォルトかつベストだとは思わないで下さい。
基本的には、お尻を叩いてどうにかなるものではありません。
3.CFS(慢性疲労症候群)は乗り越えられる?
(以下引用)
「僕は本当に周りに恵まれていた。ひとりだったらきっと苦しいときを乗り越えられなかったと思う。ただ、僕がこうしてプレイを続けていることで、(慢性疲労症候群は)乗り越えられる病気だということを、少なからず証明できたと思う。僕も苦しんでいたときは、同じように苦しんでいる人のことを調べて、どうやって乗り越えたかを知り、その姿を見て勇気づけられた。今回、Jリーグで優勝した僕の存在が少しでも、同じ病気で苦しんでいる人たちの力になればいいな、と思っています」
(引用終わり)
・森崎選手、現役に何度も復帰するのは並大抵のことではありません。
ほんとうによかった。何度もたいへんな思いをなさったことと想像します。
・その上でひとこと。
CFSは誰もが乗り越えられる病気ではありません。
完治する人はごくわずか。
森崎選手ですら悪化と寛解(症状が軽くなること)を繰り返しています。
一流アスリートですら、です。
また、気持ちや努力で快方に向かう病気でもありません。
この機会に慢性疲労症候群という疾患を知って下さった方、
身近にこの病気にかかった人がいたら、静かに見守ってただ受け入れてほしい。
なぜできないんだ、なぜ休むんだ、なぜ動かないんだ、は無意味な問いです。
そんなことは当人が自責の念とともに100回も200回も自分に問いかけているし、
それでも得られない答えです。
「できないほど身体機能や認知機能が落ちているんだな」
「休まざるを得ないほど具合が悪いのか」
「動かないんじゃなくて、動けないほど苦しいのか」
と、ただ現状を受け入れて下さい。
4.まとめ
同じ事実でも、どういう文脈の中で語られたかで違う面があるのだと思います。
今回は優勝というおめでたい話に付随しての復帰・CFS乗り越えエピソード。
これがチームの話はなくて、一人の選手についての記事で、
CFSのこんな症状で選手が戦線離脱云々という話なら受ける印象は変わっていたことでしょう。
■特にご家族やお友達、職場の方、そして医療従事者の方へ。
スポ根をもって病気と前向きに闘えば、
そして
悪化したときも頑張って動いてトレーニングすれば、
「サッカーができるくらいにCFSは寛解する病気なんだ!」
…という認識はしないで下さい。
「寛解したかったら強い精神を持って具合が悪くても動け。
それをやらないから治らないのだ。
ネガティブで動かないなんて、あなたは自分で治す気がないんじゃないの?」
というような精神論で治る病気ではないのです。
患者を追い詰めて得られるものはありません。
■記事について
いろいろと書いてきましたが、
森崎選手自身もあまり振り返りたくない過去かもしれないし、
そうでなくても
重症のときのご本人の記憶はそれ自体が曖昧なことも多いものです。
また、チームの優勝に際しての記事であるために
闘病中のシビアな話を生々しく書けなかったという推測もできますし、
ご本人が取材で語ったことが記事に反映されないことはままあることでしょう。
ですから記事を書かれた方や森崎選手や奥様を批判するつもりはありません。
ある人には希望を与えるエピソードになり、
ある人には追い詰められるエピソードになる。
これはどんなことでも同じかもしれません。
ただ、有名な人、とりわけ超人的な体力の必要な職業の人が
世間に向かって病気の寛解を語るときは慎重になってほしいのです。
そうでないと
「サッカーできる人がいるのに、どうして事務作業くらいできないわけ?」
「頑張ったらできるんでしょ?」
なーんてことになりますので^^;
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