アメリカ南部ジョージア州のアトランタで発行されている週刊誌『アトランタ・ジューイッシュ・タイムズ』の発行人で所有者でもあるアンドリュー・アドラーが、13日に「あなたならどうする?」という記事を同誌に掲載した。その中で、イランとハマスとヘズボッラーの脅威にさらされているイスラエルを守るために三つの選択があると論じた。第一はハマスとヘズボッラーに対するイスラエルの先制攻撃、第二にイランに対するイスラエルの爆撃、そして第三にイスラエルの諜報機関によるオバマの暗殺である。そして後継者のバイデン副大統領にアメリカの軍事力でイスラエルの敵を壊滅させる。


この三つ目の選択が、内外のユダヤ系と非ユダヤ系のメディアに取り上げられ大きな話題となった。特にユダヤ系の人々は、こうした無責任な言動は、イスラエルの安全ばかりでなくアメリカと世界におけるユダヤ人の地位をも脅かすと激しく反発した。批判の先頭に立ったのは、アトランタのユダヤ系市民の指導的な立場の人々であった。アドラーは謝罪し、「どのような反応があるか見たかった」と「説明し」、23日に編集長からの辞任を発表した。また同週刊誌の買い手をアドラーが探しているとの報道も流れている。謝罪や辞任にもかかわらず、ユダヤ系の人々に対する被害は既に発生した、との批判が続いている。


アメリカでは広く報道されているように、一方でイスラエルのネタニヤフ首相がイランに対する攻撃を望んでいる。だが他方ではオバマ政権が、それに反対している。またアメリカで熱烈にイスラエルを支持する層が、イスラエルをイランの脅威から救うためにアメリカによるイラン攻撃を望んでいる。そして、それに反対するオバマ政権の終焉を願っている。アドラーの記事は、そうした熱過ぎるイスラエル支持層の本音が出た場面だったのだろうか。


なお共和党の大統領候補指名を争うロムニー元マサチューセッツ知事やギングリッジ元下院議長が、イスラエルへ十分な支持を与えていないとしてオバマ政権への批判を強めている。さらには、一部の報道によれば、ギングリッジ候補に多額の寄付をしているアメリカのユダヤ系の富豪は、ネタニヤフ首相の支持者でもある。

(1月27日、記)


畑中美樹氏の主宰するオンライン・ニュースレター『中東・エネルギー・フォーラム』に2012年1月31日(火)に掲載された文章です。


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