私が担当させていただいている,戸籍法上の夫婦別姓を目指した新しい夫婦別姓訴訟(東京地裁)は,平成30年1月9日に提訴を行い,今月の8月22日に,第3回期日が予定されています。

 

 

 

その新しい夫婦別姓訴訟が提起された後,平成27年12月16日最高裁大法廷判決が出された,民法上の夫婦別姓を目指す,以前の夫婦別姓訴訟を担当された方々が中心となった,第2次夫婦別姓訴訟が提起されました。第2次夫婦別姓訴訟では,①立法不作為に基づく国家賠償請求訴訟と,②外国で婚姻をされた方が,日本における夫婦関係の確認を求めた確認請求訴訟の2つの訴訟が提起されています。

 

 

 

そのように,3つの「夫婦別姓訴訟」が同時並行で進行している中,第4の夫婦別姓訴訟が,東京地裁で提起された,という報道を目にしました。

 

 

 

弁護士ドットコム/再婚・連れ子の弁護士夫妻「夫婦同姓は初婚しか想定していない」別姓求め提訴

 

 

 

報道によりますと,この第4の夫婦別姓訴訟では,互いに再婚で連れ子がいらっしゃるご夫婦が,婚姻に際して夫婦の氏を定めることを義務付けられていることで生じている不利益を訴えられている,民法上の夫婦別姓を目指した訴訟である,ということです。まさに,これまでの3つの夫婦別姓訴訟にはなかった視点から,この問題に光を当てる訴訟だという事ができます。

 

 

 

このように,1つの問題についてこれだけ多彩な異なる視点から,並行して同時に光が当てられるということは,日本の裁判の歴史の中でもなかったことではないか,と思います。それは,それだけ法律制度で苦しんでいる人が多く,またその苦しみも多様であることの現れだと思っています。

 

 

 

4つの夫婦別姓訴訟が並行して審理され,そのいずれもが最高裁での審理へと上がっていくことと思います。そして最終的には,最高裁が再びこの問題に対する立場を明らかにすることになります。

 

 

 

最高裁大法廷平成27年12月16日判決は,夫婦同氏を定めた民法750条は違憲ではないけれども,選択的夫婦別姓制度にも社会的意義が認められるのであるから,その採用は国会で審議するべき問題である,と判示しました。ところが,その判決から3年近くが経過する現在においても,何ら法の手当はされていないのです。

 

 

 

国会が,いわば社会の多数派から見たあるべき社会の姿を表現する場であるとすれば,裁判所は社会の少数派から見たあるべき社会の姿を表現する場です。再びこの夫婦別姓問題が最高裁の舞台で争われる際には,最高裁の要請に反して,国会がこの問題の解決のための審議を行っていないことに対する評価が行われることになります。

 

 

 

そしてその際には,これだけ多様な苦しみの救済が裁判所に求められていること,そして,国会が採択した法律でも,社会の多数決でも,決して奪うことができない少数派の権利こそが「基本的人権」なのだという理念の実現が,最高裁の舞台において求められることになるわけです。