「奇跡のリンゴ」について聞かれたら | あなたも農業コンサルタントになれる

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  わけではない / by 岡本信一









日本全国の「毒」農薬(←この言葉を使って罵られた経験あり)を使用して農産物を栽培している皆様、映画「奇跡のリンゴ」上映が始まりました。


この映画のヒットの具合によっては、消費者の方と会った時に、農薬を使用していることをなじられる場合があります。


消費者の方は、ほとんど現場のことを知りませんから、無農薬でできるはずなのに危険な農薬を使用するのは、何故ですか。環境にも人体にも悪影響を与えるのに使い続けるのはおかしい、と単刀直入に聞いてきます。さて、ここでうろたえているようでは、プロ農家として失格ですね。


今回は、「奇跡のリンゴ」について聞かれた場合の対処方法について、考えたいと思います。




へりくだる


開き直る


攻撃する


説明する




という4つのパターンを考えてみましたので、それぞれについてみてみる事にしましょう。




へりくだる


相手の方が、到底何も受け入れてくれそうもない場合がありますが、この場合は、ほとんど議論が成立しませんので、黙って受け流したほうがよいです。


例:私の栽培技術が低いために農薬を使用しないと、栽培できないんです。今後は、努力して無農薬を目指します。




開き直る


へりくだるなんて出来ないという場合は、開き直ることもできますね。


例:農薬は使用していますが、残留農薬がないようにきちんと使用していますので、消費者の方にはなんの心配もないです。ですから必要な時には農薬を使用しています。




攻撃する


冗談じゃない、そんなことをいわれて黙っていられるのかという場合には、木村さんの無農薬・無肥料について事前に勉強し、攻撃することもできます。


例:木村さんの無農薬というのは、法律的に考えると無農薬栽培とはいえないし、法律違反だ。木村さんの例を上げて無農薬と考えるのはおかしい。


まあ、これは、基本的に避けたほうが良いでしょう。ケンカになるからです。ただ、相手から人格攻撃を受けるなどして、我慢できない場合にのみ使用することをおすすめします。




説明する


相手の方が素朴に質問されてきている場合には、やはり丁寧に現状を説明するのがいいですね。


堂々と農薬使用を語り、消費者の方への危険が少ないこと、過去の農薬に較べると格段に危険が小さいことなど、理路整然と消費者の方に語るべきだと考えます。必要ない農薬は、農家がコスト、手間の点から考えても使用したくない。ということを消費者の方に教えるべきだと思います。


農薬の安全性については、Food Watch Japan の連載の前半でかなり書いていますので、そちらを参考にしてみてください。


私は、農薬を使用するべきだとは思っていませんし、経営的な観点から考えても、不必要なものを使用するべきでないと思っています。


ですが、もし、お客様である消費者やバイヤーから質問された場合、きちんと答える義務があると思います。不安や疑問に思うお客様は多いのです。その疑問に対して、きちんと答える義務がブロの農家ならば、あります。もし農家の方がお客様の疑問に答えることが出来ないのであれば、不安に思うのは当然です。「毒」農薬を使用する皆さんは、明確に答えなければなりません。


素晴らしい解答といえるものが先日、Facebookに掲載されましたので、許可を得て転載させて頂きます。


元記事は、こちら。https://www.facebook.com/up.applefarm

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奇跡のりんごが大変有名となりましたが、同一地域でりんご生産をしている同業者として考えを述べさせていただきたく思います。




木村秋則氏の努力によって、りんごは無農薬で生産する事は出来ない。という事は確かに覆されましたが、それは彼の園地でのみ成立した現象であって、それをもって他の園地、青森県全般のりんご生産が無農薬へと転換出来るのかと考えますとそれは不可能であり、現状でも彼の園地でのみ成立するいわば実験室内での成功という域を出ていない代物で、今後もその状況が変化する見込みはありませんので我々は無農薬りんごの生産に期待を掛けていません。




そもそも、彼が無農薬生産に踏み出したのは38年前の1975年。昭和40年台後半に奥さんが農薬により皮膚に炎症が発生するなどの薬害を患ったのがきっかけという事ですが、それはその当時の農薬にはそのような害を齎す効果があったという事であり、その後農薬は進化しそのような害に見舞われ苦労をするという事も無くなった。という事は多くの方が知っておくべき事実であると思います。農薬試験の厳しさがどのぐらいのものなのか、ADI(一日許容摂取量)の設置基準がどれだけ安全を配慮したものなのか、世の中のほぼ全ての農産物が農薬を使用していて、ベトナムの枯葉剤による奇形児の出産やカネミ油症事件などのような社会的化するような大規模な問題は発生していない事実、むしろ殆どの方が農薬利用によるメリットを享受している(大規模な農業生産の安定・低コスト)状況などなど、現実をしっかり見て、状況の変化を認識し、40年以上前の基準をベースに考える農薬の恐ろしさ、農薬=害というようなステレオタイプな古い発想からの脱却を図るべきと思います。




昔と違い農薬の安全性が高まり店頭に並ぶ頃には農産物に農薬成分が残っておらず。食べる人にとって農薬利用作物は危険は殆ど無いという事が科学的にも立証されている状況であえて無農薬での生産をするメリットは何処にあるのでしょうか?それは簡単に言うと、「高付加価値で高く売れる。」無農薬栽培のメリットはその一点に尽きるのです。実は無農薬栽培をすることで病害に侵され、りんご自身が害虫・病害に対する危機を感じ、農薬成分を自分で作り出して防御してしまう事が研究の結果わかっています。それは人間にとってアレルギーの原因となる物質で、健康な方には問題とはなりませんが、アレルギーを持っている方には毒になる可能性が考えられる物質が通常の3~5倍も含まれています。(果物アレルギーの方は無農薬りんごは避けてください)それは奇跡のりんごは腐らない。という有名な現象に現れていて、防腐剤に相当する成分が含有されているから腐らないだけなのに、それが何か生命力が強いような素晴らしい事のように喧伝されていますが全くそのような素晴らしい事ではない訳です。このようなイメージを振りまき、農薬を使ったりんごよりも安全では無いものを安全と説明し、高く販売する、購入する側も安全と思い込み、喜んで高価に購入する。という図式が成立してしまっていますがこの図式は無農薬商品を高く売りたい業者にとっては好都合でありますが、一般消費者には何一つメリットが無い事は説明するまでもないでしょう。




木村秋則さんの作った無農薬りんごは美味しい。という声がメディアからよく聞こえてきます。無農薬は味を高める技術ではありません。木村さんの生産は当初無農薬無肥料という事が話題だったのですが、今は無肥料の3文字が抜け落ちています。無農薬無肥料では味を損ねる。これは生産者であれば周知の事実ですし、市場関係者の間でも奇跡のりんごは味が悪いという評価がたちました。昨年とあるメディア関係者の方が奇跡のりんごを入手したとの事で、当方のりんごを送り比較していただいたのですが、味の良さは当方のりんごに軍配が上がりました。木村氏のりんごは「一口目には甘さは感じるもの二口目には普通のりんご、こんなものか。」という評価となりました。無農薬無肥料、自然栽培では味は良くならず貯蔵性も落ちる。消費者にとって、良いことは何一つありません。




農業全般がそうですが、著しい高齢化と担い手不足(というより担い手消滅)という現実にどう対処していくべきかが現場の大きな課題になっています。その為にはお客様に評価される良い価値を生産し提供するという事を生産側がしっかりやらなくてはなりませんが、その方法として木村式無農薬生産を選択する事例が多々あるようですが、木村氏の園地でのみ成立し、機械化も出来ない実験室レベルの成果に生産現場にすぐフィードバックできる技術は存在しませんのでいい結果には結びつかないでしょう。僕は奇跡のりんごの後を追っても消費者に良い価値を提供出来るようにはならないしりんご生産の後継の育成、産業構造の改善を行うべき最後のチャンス、残り僅かの時間しか残されていないこの時期に地域の多くの方(生産に携わった事の無い方々)研究機関、金融機関が奇跡のりんごを崇めたて、あのやり方に将来があるかのような、ミスリードを誘発させる事は地域にとって大きなマイナスを生む事にしかならないと思っています。行うべきは慣行農法の生産合理化・徹底した食味の向上と、美味しさを良い鮮度で届ける流通の改革。感動ストーリーを生むことのない地道な改善が今は現場に必要な事なのです。




奇跡のりんごストーリーは感動の物語です。大変良い話だと思います。しかし、もはや30~40年も前の過去の話であるという事を、多くの方には今を理解していただかなくてはいけないと思います。そして生産の側も現状の奇跡のりんごに学んではいけないと思います。あくまでもストーリーを時代劇のような過去のお話として楽しむだけにしていただいて、消費者の方は極々普通に販売されている美味しく手軽に利用できる農産物を利用されると良いでしょうし、生産者は感動ストーリーに惑わされ農薬の利用云々にばかり拘ったりする事なくより高く評価される良い価値の生産や経営改善・流通改革など多くの消費者によりメリットを提供できるよう当たり前の努力工夫を重ねれば良いのではないでしょうか。無農薬だから・安全性云々で頭でっかちに知識を食わせる農作物よりも、極々普通に美味しくなるように作った旬の完熟の方が体は正直に反応します。体が欲しいと思うものが正しいのだと僕は思います。


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