
診察時にタブレットがあると便利
精神科医はカルテに主に日本語で記載している。もし100%、英語やドイツ語とか、稀にフランス語で記載しているとしたら、真にリアルには記載していないと言える。なぜなら翻訳しているわけで。
そもそも患者さんの話す内容をカルテに「てにをは」を含め100%正確に一字一句間違えずに記載せねばならないらしい。当時、スマホもない時代で録音もできるウォークマンがないと無理な話であった。
僕は、そのようなことは研修医の頃から意味がないと気づいていたので、もちろん正確には記載していなかった。(できなかったと言うのが正しい)
ただし、精神科医が患者さん(およびカルテと言う作品)にかける時間と、精神症状の改善の規模は比例しない(←重要)
カルテと言う作品と言うと大げさになるが、確かに価値があると思えるカルテが書ける精神科医がいる。それは文学的と言うのはニュアンスが違う。精神症状を正しく相応しい日本語(もちろん語彙が必要)で詳細に書ける技術を持つ精神科医である。
たぶん、ルーリードのような感性を持つ精神科医なんだと思う。
そういう人は非常に稀なので、僕は羨望を超えたリスペクトをしている。そのような精神科医が、実際に治療が上手いのかどうかも非常に興味がある(ただし確認ができない)
日本語で記載する際、漢字をうっかり忘れていたり、思い出せないのは非常に困る。これは紙カルテと電子カルテの決定的な相違だと思う。電子カルテではパソコンが簡単に教えてくれる。
最近、即座に思い出せなかった漢字
〇警察に逮捕された。(逮捕)
〇窃盗で留置されている(窃盗)
全く恥ずかしい話だが、ある時期は普通に思い出せていたものが時間が経ち思い出せなくなるのはなんなのよ?と思う。
そういう時、タブレットを診察室の机に置いておくと、すぐに調べられるのは非常に助かる。また患者さんから不自然に見えないのはなお良い。
よく、ネットでは「主治医が診察中、パソコンばかり見ていて自分の方を見てくれない」と言った不満を見ることがあるが、精神科医がパソコンに入力していると、患者さんが疎外感を持ちやすいところはある。タブレットは小さいので患者さんはそういう感覚になりにくい。むしろ、「自分のために時間をかけて調べてくれる」くらいに思う患者さんもいる。タブレットにカルテ記載はしないので。
またインターネットに繋がっているので、すぐに添付文書が検索できるのも良い。ある薬を処方するとして、何錠(何㎎)から始めるのか、何日過ぎれば増量できるのかはっきり思い出せないことがある。
初回投与時に何ミリから開始というルールを逸脱し高用量から開始していると、患者さんに不信感を持たれかねない。僕はそういうミスはまずしないが。その理由は微量から始めることも多いからである。
また稀なケースで、患者さんがネットで調べすぎて誤った理解をしていることがある。それをタブレットで検索して本人に見せることで、誤りを正すことも可能である。
過去に患者さんが間違っていた例
〇エビリファイは糖尿病に禁忌
〇リスパダールは糖尿病に禁忌
〇メマリーは腎障害に禁忌(本人ではなく家族)
などが挙げられる。即座に訂正できるのは便利である。
精神科でも電子カルテは主にクリニックでは多くなっていると思う。精神科病院ではなかなか電子カルテに移行できないものである。その大きな理由は、電子カルテについて行けない看護師がいること。
そもそも前病院で電子カルテ導入を契機にうちの病院に入職した人がそこそこいる。
電子カルテ導入でその人たちが一斉に退職してしまうと、病院が潰れるからである。