NHKnewsWatch9のセレブ目線「消費税増税いい感じ」-女性の貧困も子どもの貧困も不可視化 | すくらむ

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 昨夜(5月1日)のNHK「news Watch9」で、消費税増税1カ月の状況についてまとまった報道がありました。キャプチャーした画像とともに概要を紹介します。

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 冒頭の東京・新宿駅前での街頭インタビューは、「いざ(増税を)迎えてしまうと普通に戻った」などという消費税増税されたけれど、あまり影響はなかったという声ばかりが紹介されていました。

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 大手デパートのコメントでは、消費税増税は「想定の範囲内」で「消費としては力強い部分がある」というものが流された上に、エコノミストの「消費者も(消費増税に)慣れているし、売り手もある程度対応をとってきた」からあまり問題ないかのような解説が付け加わっていました。

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 日本橋高島屋の店員は、「いい感じで、4月に入っても増税の影響はなくお客様に来ていただいている」と話し、1着11万円の洋服などを扱っている売り場の4月の売り上げは3月とほとんど変わらなかったとして、「お客様の話を聞くと消費税は関係ない。ほしいものはほしくなるし買ってしまう」との副店長のコメントが紹介されました。

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 外食産業は堅調だとして、「お客様が食事している中で節約している様子はあまり感じられない」とのロイヤルホスト営業・企画本部の人のコメントが流され、4月に入って売り上げをのぼしたという焼き肉店では、「セレブメニュー」が人気で、「いい肉なら値段いっても、おいしいものが食べられるので気にしない」とお客さんのコメントを紹介。ぐるなび広報の人が登場し、とにかく“攻め”でいいものを高いお金で味わってもらえばOKというような解説を付け加えてこの流れを補強していました。

 報道の基調が、消費税増税は国民の暮らしにとってあまり問題がなく、企業は“攻め”の姿勢でセレブが欲しくなるような高いものを売りさばけばOK、というような感じで、8%もたいしたことなかったのだから、安倍政権が計画している消費税率10%もOKでしょ、と言いたげな報道でした。

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 NHKはいつから日本セレブ放送協会になったのでしょうか? 消費税は、貧困層が高所得層の2倍以上の負担を強いられる税金です。消費税増税で最も深刻な影響が出る貧困問題の実態を取材せずしてまともな報道機関と言えるのでしょうか?

 この「news Watch9」の4日前には、NHKスペシャル「調査報告 女性たちの貧困~“新たな連鎖”の衝撃~」で、非正規雇用の若年女性(15~34歳)の81.5%が年収200万円未満で289万人にものぼり、1人親世帯の貧困率が日本は50.8%と先進主要国の中で最悪の数字で、6人のうち1人の子どもが貧困状態に置かれ、子どもへの貧困連鎖ともなる貧困の固定化・階層化が強まっていることは、日本社会にとっても、日本経済にとっても、活力が弱まることになってしまう大きな問題だと告発していた視点は一体どこにいってしまったのでしょうか?

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 この4月1日からの消費税増税は、貧困層にセレブの2倍以上の負担率で襲いかかっているのですから、NHKは自ら取材した、ネットカフェで暮らしフリードリンクで空腹を紛らす母親と19歳と14歳の姉妹らが、消費税増税で一層過酷な貧困状態に追い込まれているのではないかと考えないのでしょうか?

 女性の貧困の大きな原因である賃金差別非正規雇用の異常な低賃金も消費税増税が激増させるという問題もありますし、子どもの貧困連鎖の問題も、生活保護基準の引き下げと連動して、いま就学援助や高校生の奨学金制度の縮小が各地で相次いでいるのですから、その上に4月から消費税増税では子どもの貧困連鎖を一層加速させることになるとNHKは考えないのでしょうか?

 また、消費税増税は自殺者を増加させる一因でもあります。昨日もJR東日本で自殺とみられる人身事故があり、電車の運休や遅れなどで約5万2千人に影響が出たと報道されていますが、鉄道人身事故マップ(下図)を見ると、昨年4月の人身事故による死亡は43人で、消費税増税となった今年4月の死亡は70人と、1.6倍に増えています。人身事故の多くは自殺といわれていますが、この4月の人身事故の増加が消費税増税とまったく関係ないとは言い切れないでしょう。

昨年

今年


 最後に、唐鎌直義立命館大学教授のインタビューの一部を紹介しておきます。

 餓死・孤立死の頻発まねく消費税増税
 脱貧困の社会保障が過労死なくす
   唐鎌直義立命館大学教授インタビュー


 貧困層に高所得層の倍以上の負担強いる消費税

 ――政府広報には、「消費税率の引き上げによる増収分を含む消費税収のすべてを社会保障の財源とする」と明記され、消費税は「社会保障の財源を調達する手段としてふさわしい税金」とまで書かれています。消費税は社会保障財源として本当にふさわしい税金なのでしょうか?

 政府は消費税を「公平な税」と言っています。確かに消費に対して誰でも5%の税を取られるというのは一見「公平」のように見えます。しかし実際に、国民のあいだで消費税5%の負担が公平に担われているかというと、そうではありません。なぜなら、総務省の『家計調査年報』から所得10分位階級別に消費税負担率(▼図表1)を試算してみると、第Ⅹ10分位に位置づけられる最も所得の高い10%の世帯の年間収入の平均は1,437万円ありますが、この階層が実際に消費する金額は、年収のうちの一部に過ぎないからです。極端な例をあげれば6割くらいしか消費しない。あとの4割は貯蓄に回すので、実収入の6割に対する消費税5%を払うことになります。そうすると、年収に対する比率は、現在の消費税率5%よりもずっと低くなるのです。▼図表1にあるように、消費税負担率は1.9%しかありません。

表


 消費税によるものは社会保障と言えない

 これに対して、第Ⅰ10分位に位置づけられる最も所得の低い10%の所得階層は、年収が280万円しかありません。そうすると280万円をほぼ全額消費に回さなければならないので、5%近い税金を払うことになります。実収入に占める消費税の負担割合は4%以上に達します。高所得の人に比べて2倍以上の負担率で消費税を納めていることになります。

 実際には、年収280万円の人はそれだけでは必要な生活費にも足りないので、今まで貯めてきた預貯金を取り崩して消費に充てなければなりません。実際の生活費として320万円から350万円くらい消費しているでしょう。その消費に対して5%がかかっているわけですから、消費税というのは所得の低い階層ほど負担が重いということです。

 単に消費支出に対して5%だから公平というのは間違いで、実際の収入に対して消費税負担率が何%になっているのかということを見なければいけないのです。そうすると、消費税というのは、明らかに低所得者ほど重い税金を取られていることがわかります。ということは、低所得者ほど重い負担がかかる構造の税金によって、高齢者や福祉の制度を支えているということになるわけで、社会保障の本来的な理念である「所得の高い方から低い方に再分配する」という機能がなくなってしまう。これはもう社会保障とは言えません。

 ですから、所得再分配できる租税メカニズムによって財源が確保される必要があり、そうしてこそ初めて社会保障たりうるわけです。消費税を財源にしての社会保障拡充とか、社会保障の維持というのは大きな誤りなのです。

(byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)