グリーの決算が発表され、その勢いが注目されていました。しかし、ここでより注目すべきは、業績よりも会員数の凄まじい拡大ぶりだったと思います。
会員数を1000万人を超えたあたりで、会員数拡大の伸びは大きく鈍化するというのが、mixiやモバゲータウンの傾向でした。ところがGREEでは1000万人近くからその伸びを鈍化させるどころか急激に増大させています。
今となっては、モバゲータウンの会員数に急速に接近しており、追い越すのは時間の問題となってきました。
月ごとの純増数で比較すると、GREEの純増数がどんどん加速していることが分かります。2009年6月には、純増数が100万人を超えており、中上位クラスのサイトが毎月誕生するほどの恐ろしいペースで増加していることが分かります。
GREE、モバゲータウン、mixiの三サイトを同じステージで比較したものです。横軸に月数、縦軸に400万人突破月の数値を分母とするパーセンテージを取っています(突破月の発表数値は必ずしも400万人ぴったりではないため)。会員の伸びが頭打ちになりそうな時期に、逆に勢いを増しています。モバゲータウンが12か月で達成した会員数を、3か月ちょっとで達成しているわけであり、恐るべきものがあります。
この急増ぶりには大規模なプロモーションによる影響もあるとは思いますが、大規模なプロモーションを行ったのはモバゲータウンも同じであり、同じような成果は残せていません。それどころか、モバゲータウンが急激な勢いで拡大した最盛期を大きく超える急増ぶりであり、かつ、その勢いが持続しています。つまり、1000万人を超えるユーザーを抱えながら、モバゲータウンの成長期を超えるサイト規模の拡大が起きているということになります。単なる広告宣伝効果だけでは説明が付かないように思います。
この事実はグリーの決算自体よりも重大な意味を示しているように考えられます。
原因として考えられるのは、これまでコミュニケーションサイト(モバゲータウン、mixi)が相手としてなかったセグメントへの急激な浸透と、利用の拡大が起きているということです。
事実、グリーの決算説明会資料には、年齢別のユーザー構成が記載されているのですが、30代以上のユーザーの伸びが顕著であり、他サイトとは一線を画する内容となっています。現在4割近いユーザーが30代以上となっているようです。恐らく、釣りゲームなどのソーシャルゲームが強い求心力となって、これまで携帯SNSといったものにそれほど興味を持たなかった多くのユーザーを集めているのでしょう。単にコミュニケーションをすることのみがインセンティブとなっていた、これまでのコミュニケーションサイトとは異なる進化を遂げているように見受けられます。
一方のモバゲータウンは、今四半期で多くのユーザーを集めたものの、急激な減収となりました。新規ユーザーが多いほど、アバターに落とす金も多くなる事業構造からすれば、極めて異例な事態と言えるでしょう。
DeNAは、ここ最近広告宣伝を積極的には行っていないようであり、なぜ春頃からユーザーの拡大が続いているのか判然としない部分があります。mixiの純増数もこの時期に増加傾向にありますが、いずれもGREEが勢いを拡大した時点と符合しています。あくまで推測でしかありませんが、GREEの積極的なキャンペーンにつられて入会した人が多数いるのかもしれません。下のデータを見ると、前四半期のモバゲータウンの状況が異常であることがよく分かります。
一番下に飛び出した赤い丸が、最新のDeNA・モバゲータウン部門の売上高変化と純増数を示す点です。純増数が比較的多かったにも関わらず、売上が激減しています。過去の分布からしても特異な四半期であったことは間違いありません。モバゲータウンで近年入会したユーザーがあまり金を落とさない存在であるようであり、「GREEつられ入会説」の一つの証拠になる事実でしょう。
今回の四半期決算で、モバゲータウンにおける急減速が話題になっていましたが、アバター販売もアフィリエイトも広告関連もダウンしており、3Dアバターの買い控えの一言では説明がつかない状態だと思われます(アバター販売のみに影響するはず)。優良顧客がGREEに逃げているということや、広告営業においてGREEとの競争が熾烈なものになっていることも一因なのではないでしょうか。
グリーについて見てみると、売上の伸びがメディア等で取り上げられていましたが、純増数と比較するとまだまだ控え目の伸びとも言えます。これまでとは違ったセグメントのユーザーが増えることで、儲け方にも徐々に変化が生じているものと思われますが、逆に言えばまだまだ改良をしていく余地がありそうです。プロモーション費用は莫大なものになることから、儲け方の仕組みを先に整えてから、宣伝をしていくことも当然考えられるところでしょう。あえてそうしないのは、ユーザーを急激に囲い込み、営業上の優位性を確立することで、追撃するDeNAとの間で決定的な差を作るステージだと考えているのようにも見えます。
もちろん広告宣伝費用ばかり浪費し、新規ユーザーには支持されず、結果としてサイト全体の求心力を失う事態は避けなければなりません。サイト規模の拡大を図りつつ、新しいセグメントのユーザーにも支持されうるコンテンツを開発し、収益化していくという難しい舵取りを迫られることになります。これに失敗すれば一気に頭打ちになってしまう恐れもあります。
DeNAは、無料ゲームを集客の餌にして、最終的にアバター販売で収益を得るというビジネスモデルのまま今日に至っており、3Dアバターを強調している点からしても、その路線に大きな変化は無いようです。アバターは、コミュニケーションに付随するアイテムでしかなく、「アバターするならモバゲー」と銘打ってもそのサイトへ行こうとは思わないでしょう。つまり主力商品であるはずのアバターが、集客の道具として使えないという点で、キラーコンテンツを抱えるGREEに比べて大きなハンデがあります。
3Dアバターを導入したところで短期的な業績の改善はあったとしても、中長期的にはグリーに対する優位性にはつながりそうになく、先の問題は残り続けます。両者の成長の差を縮める要素に乏しく、このままでは若年層向けのマイナーサイトに転落する恐れもあるでしょう。グリーには無いコマース向けのサイトやシステムを保有しているにも関わらず、モバゲータウンの抱えるユーザー層やユーザーの行動パターンが噛み合わないのは如何ともしがたく、このあたりは抜本的なM&Aをしない限りは短期的には解決しないかもしれません。
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20397412,00.htm
DeNAが減収減益、「モバゲー」3Dアバター導入の遅れで (CNET Japan)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0907/29/news078.html
グリーが破格の急成長、前期営業益は8倍・83億円 今期はPCサイト刷新(IT media)
会員数を1000万人を超えたあたりで、会員数拡大の伸びは大きく鈍化するというのが、mixiやモバゲータウンの傾向でした。ところがGREEでは1000万人近くからその伸びを鈍化させるどころか急激に増大させています。
今となっては、モバゲータウンの会員数に急速に接近しており、追い越すのは時間の問題となってきました。
月ごとの純増数で比較すると、GREEの純増数がどんどん加速していることが分かります。2009年6月には、純増数が100万人を超えており、中上位クラスのサイトが毎月誕生するほどの恐ろしいペースで増加していることが分かります。
GREE、モバゲータウン、mixiの三サイトを同じステージで比較したものです。横軸に月数、縦軸に400万人突破月の数値を分母とするパーセンテージを取っています(突破月の発表数値は必ずしも400万人ぴったりではないため)。会員の伸びが頭打ちになりそうな時期に、逆に勢いを増しています。モバゲータウンが12か月で達成した会員数を、3か月ちょっとで達成しているわけであり、恐るべきものがあります。
この急増ぶりには大規模なプロモーションによる影響もあるとは思いますが、大規模なプロモーションを行ったのはモバゲータウンも同じであり、同じような成果は残せていません。それどころか、モバゲータウンが急激な勢いで拡大した最盛期を大きく超える急増ぶりであり、かつ、その勢いが持続しています。つまり、1000万人を超えるユーザーを抱えながら、モバゲータウンの成長期を超えるサイト規模の拡大が起きているということになります。単なる広告宣伝効果だけでは説明が付かないように思います。
この事実はグリーの決算自体よりも重大な意味を示しているように考えられます。
原因として考えられるのは、これまでコミュニケーションサイト(モバゲータウン、mixi)が相手としてなかったセグメントへの急激な浸透と、利用の拡大が起きているということです。
事実、グリーの決算説明会資料には、年齢別のユーザー構成が記載されているのですが、30代以上のユーザーの伸びが顕著であり、他サイトとは一線を画する内容となっています。現在4割近いユーザーが30代以上となっているようです。恐らく、釣りゲームなどのソーシャルゲームが強い求心力となって、これまで携帯SNSといったものにそれほど興味を持たなかった多くのユーザーを集めているのでしょう。単にコミュニケーションをすることのみがインセンティブとなっていた、これまでのコミュニケーションサイトとは異なる進化を遂げているように見受けられます。
一方のモバゲータウンは、今四半期で多くのユーザーを集めたものの、急激な減収となりました。新規ユーザーが多いほど、アバターに落とす金も多くなる事業構造からすれば、極めて異例な事態と言えるでしょう。
DeNAは、ここ最近広告宣伝を積極的には行っていないようであり、なぜ春頃からユーザーの拡大が続いているのか判然としない部分があります。mixiの純増数もこの時期に増加傾向にありますが、いずれもGREEが勢いを拡大した時点と符合しています。あくまで推測でしかありませんが、GREEの積極的なキャンペーンにつられて入会した人が多数いるのかもしれません。下のデータを見ると、前四半期のモバゲータウンの状況が異常であることがよく分かります。
一番下に飛び出した赤い丸が、最新のDeNA・モバゲータウン部門の売上高変化と純増数を示す点です。純増数が比較的多かったにも関わらず、売上が激減しています。過去の分布からしても特異な四半期であったことは間違いありません。モバゲータウンで近年入会したユーザーがあまり金を落とさない存在であるようであり、「GREEつられ入会説」の一つの証拠になる事実でしょう。
今回の四半期決算で、モバゲータウンにおける急減速が話題になっていましたが、アバター販売もアフィリエイトも広告関連もダウンしており、3Dアバターの買い控えの一言では説明がつかない状態だと思われます(アバター販売のみに影響するはず)。優良顧客がGREEに逃げているということや、広告営業においてGREEとの競争が熾烈なものになっていることも一因なのではないでしょうか。
グリーについて見てみると、売上の伸びがメディア等で取り上げられていましたが、純増数と比較するとまだまだ控え目の伸びとも言えます。これまでとは違ったセグメントのユーザーが増えることで、儲け方にも徐々に変化が生じているものと思われますが、逆に言えばまだまだ改良をしていく余地がありそうです。プロモーション費用は莫大なものになることから、儲け方の仕組みを先に整えてから、宣伝をしていくことも当然考えられるところでしょう。あえてそうしないのは、ユーザーを急激に囲い込み、営業上の優位性を確立することで、追撃するDeNAとの間で決定的な差を作るステージだと考えているのようにも見えます。
もちろん広告宣伝費用ばかり浪費し、新規ユーザーには支持されず、結果としてサイト全体の求心力を失う事態は避けなければなりません。サイト規模の拡大を図りつつ、新しいセグメントのユーザーにも支持されうるコンテンツを開発し、収益化していくという難しい舵取りを迫られることになります。これに失敗すれば一気に頭打ちになってしまう恐れもあります。
DeNAは、無料ゲームを集客の餌にして、最終的にアバター販売で収益を得るというビジネスモデルのまま今日に至っており、3Dアバターを強調している点からしても、その路線に大きな変化は無いようです。アバターは、コミュニケーションに付随するアイテムでしかなく、「アバターするならモバゲー」と銘打ってもそのサイトへ行こうとは思わないでしょう。つまり主力商品であるはずのアバターが、集客の道具として使えないという点で、キラーコンテンツを抱えるGREEに比べて大きなハンデがあります。
3Dアバターを導入したところで短期的な業績の改善はあったとしても、中長期的にはグリーに対する優位性にはつながりそうになく、先の問題は残り続けます。両者の成長の差を縮める要素に乏しく、このままでは若年層向けのマイナーサイトに転落する恐れもあるでしょう。グリーには無いコマース向けのサイトやシステムを保有しているにも関わらず、モバゲータウンの抱えるユーザー層やユーザーの行動パターンが噛み合わないのは如何ともしがたく、このあたりは抜本的なM&Aをしない限りは短期的には解決しないかもしれません。
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20397412,00.htm
DeNAが減収減益、「モバゲー」3Dアバター導入の遅れで (CNET Japan)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0907/29/news078.html
グリーが破格の急成長、前期営業益は8倍・83億円 今期はPCサイト刷新(IT media)