業務委託契約の悩みポイントとして、なによりも重要で頻繁にある問題は、そもそもどこまで書いてあればいいのか、何と何が規定されていればリスク予防となるのか、といういわば理想的規定範囲の問題である。
担当者の本音として「この世のどこかに十分な契約書、完璧な契約書というのがあってほしい」という夢や期待があるし、それと同じか、ある程度近いものをつくりたいというニーズがどうしてもある。
けれど、仮にすべての要素を完全に満たした業務委託契約書があるとしても(それを便宜的に「完備契約書」とでも名付けたとしよう)、はたして完備契約書をつくるのにはどれくらいのコストをかけなければならないのか。
理論的に完備契約書を作成するには、そのビジネスから生じうるすべてのリスクをあらかじめ調査しなければならないだろうから、最低限その調査コストが発生する。だとすればそのコストをまかなってもあまりあるほどのメリットがないと、いわゆるコスト割れを起こすのだから、現実には完備契約書をめざすべきではないことになる。
つまり、作成にかけられるコストや、その業務委託契約から生じるリスクの大きさ、深刻さの度合いにもよるが、完璧な契約書だけをゴールだと信じてしまうと、いつまでも契約書が完成しないし、ビジネスとして合理的でもないだろう。
ならばどうすべきかであるが、ある程度スピーディに起案でき、それでいてリスクの要点はおさえてあるという落とし所をみつけておく作業が大事である。(もちろんその基準が高いに越したことはないが、そこは常に理想と現実のバランスの問題としかいいようがない。)
そこで、落とし所をみつけるための手順を確認しておきたい。