来年度予算編成が政府部内で進行する中、連日のように、鳩山新政権の行政刷新会議の下で「事業仕分け」が行われている様子が、テレビを通じて報じられています。「事業仕分け」を行うチームには、民間の有識者もいますが、中心となっているのは、民主党の中堅・若手議員です。正に、予算編成が政治主導で行われていますが、これは歳出面での予算編成であり、他方、歳入の中心である税制改正は、目立ってはいませんが、次のように、同様に政治主導で進められています。
(税制調査会の一本化)
小泉政権時代に郵政民営化法案が策定される時に端的に示されたように、自民党政権下では、内閣が法案を国会提出する際には、自民党(政務調査会、総務会)がその法案を了承しない限り閣議決定できない仕組みとされていました。このような二元的な意思決定は、毎年の税制改正においてもちょっと違った形ではありましたが、同様に行われていました。
即ち、税制改正を所掌する組織として、政府内には「政府税制調査会」が、自民党内には「自民党税制調査会」が、それぞれ設置されており、前者はより中長期的な制度改正を、後者は次年度の具体的な税制改正を、それぞれ取扱うという違いはあったものの、二元的な意思決定が行われていたのです。
そこで、鳩山新政権では、「政府・与党における政策決定の一元化」の観点から、民主党の政策調査会を廃止し、政策の意思決定は全て政府(内閣)において行うことを原則とすると共に、税制改正の審議でも同様に、民主党の税制調査会を廃止し、政府の税制調査会に一本化することとしたのです。
(政府税制調査会の構成)
この政府税制調査会は、会長が財務大臣、会長代行が総務大臣と国家戦略担当大臣になっているとともに、その委員も政治家である大臣、副大臣が中心(国税を所管する財務省と地方税を所管する総務省からは、大臣政務官も委員に入っています)となっています。かつての政府税制調査会の会長や委員が、学識経験者、官僚出身者や経済界出身者が中心であったのと比べて、メンバーの構成が大きく違っています。
(税制調査会の運営)
また、税制調査会の運営も、政治家主導となっています。省庁ごとに設置された政策会議で全与党議員が参加して意見交換し、その状況を踏まえて各省庁のいわゆる政務三役(大臣、副大臣、大臣政務官)が、その省庁の判断を下して、税制調査会に各省庁の主張を持ち込みます。税制調査会には、学識経験者などから構成される「専門家委員会」もありますが、税制調査会の運営や重要な事項を審議するための「企画委員会」も、構成員は政治家である副大臣や大臣政務官です。
税制調査会の開催は、9月16日に政権交代があったために先月8日に内閣総理大臣からの諮問があり、同月中に5回開催された後、今月に入ってからは連日のように開催されており、来月中旬に「平成22年度税制改正大綱」が取りまとめられる予定です。この間、税制調査会と与党議員から意見聴取をする総務省・財務省合同政策会議では、政治家同士による協議・意見交換が行われることになっており、正に、政治家主導の税制改正が行われることになります。