映画「いばらの王 King of Thorn」観ました(一部ネタバレ含む注意) | 徒然なるままに

映画「いばらの王 King of Thorn」観ました(一部ネタバレ含む注意)

TOHOシネマズ川崎で、映画「いばらの王 King of Thorn」を観てきました。
小さめのシアターが、ほぼ満員。
客層はアニヲタさん中心。男女比率は男性3:女性1くらいの割合。
「劇場版"文学少女"」と連続して観たのだけれど、だいたい同じような客層。

この作品、私はものすごいツボで、面白いと思ったのだけれど、一緒に観たほとんどの人がこの作品の良さを全然理解できなかったようだ。
もしかしたら、通常のアニメファンや若い人にはあまり向かない作品なのかもしれない。
アニヲタさんたちの読解力の問題なのか、それとも好みの問題なのか。
映画「シャッターアイランド」が好きな人や、純文学を好んで読んでいる人だったらこの映画の面白さを分かってくれるのではないかと思うのだけれど。
現実と夢(洗脳)、物語とメタ的な要素が入れ子的にどんどん多重構造的になっていく。どれが現実? どれが夢? どれが洗脳? 世界という存在の定義自体がストーリー展開の進行にともないどんどん新解釈が登場していき、どんどん展開が飛躍していき、様々な人間のえげつない悪意や欲望に人々が巻き込まれ、どんどん人が死んでいく。一見するとRPG的ゲーム世界のようなトンデモワールドだが、その裏には人間の存在や物語そのものの存在を大きく揺さぶるものを持っているのではないか。
アニメを全然観たことないという純文学好きな人に是非オススメしたい映画。
アニメだからといって馬鹿にしてはいけない。

ストーリーはかなりハチャメチャ系で突っ込みどころも少なくなく、確かに好みは分かれるとは思うけれど(好みの問題以前にまず内容が理解できないという人もいたようだけれど)、「シャッターアイランド」に通じる部分があって、「シャッターアイランド」とかの系統が好きな人は、その何倍も楽しめるのではないかと私は思うのだけれど。
設定自体は既存のネタの組み合わせ的ではあるのだけれど、既存のネタの組み合わせや、メタ的な要素や夢の存在など、一見低次元と思われがちな要素を組み込みながらもここまで面白くする、というところに私はすごく好感が持てたのだけれど。
ただ、この作品は観客に「展開についていく力」を暗に要求するところがあるのかもしれない。展開についていけず脱落してしまうと、この作品の本当の良さが分かってもらえないかもしれない。

この作品には、物語としての致命的な欠陥というのもあるのかもしれない。しかしそれでも、私はこの作品がとても優れたものだと思っているし、私の心を惹きつけてならない。物語の中盤から終盤にかけて、どんどん展開が飛躍していく様は、「シャッターアイランド」を観ていて、まだまだこんなもんじゃ足りないと欲求不満になっていた人の心を大きく躍らせるのではないだろうか。

以下、5段階評価。

■いばらの王 King of Thorn(2010年日本)
ジャンル:邦画アニメ/SF/ファンタジー/アクション/パニック/サスペンス
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★★
意外性:★★★★★
癒し:★★★★★
音楽:★★★★★
総合:★★★★★