現在、皇居三の丸尚蔵館では、皇室ゆかりの名品から選りすぐった、
吉祥をモチーフにした作品の数々を紹介する展覧会が開催されています。
その名も、“瑞祥のかたち”です。
まず本展の冒頭で紹介されていたのは、
正月の風物詩であったという「宝船」をモチーフにした作品。
江崎栄造による《宝船「長崎丸」》です。
江崎栄造は、べっ甲業界で唯一の無形文化財に指定された人物なのだそう。
確かに、透けて向こう側が見えるほど薄い帆を筆頭に、
随所に、人間国宝ならではの高い技術が見て取れました。
なお、この作品は、1916年に大正天皇が、
福岡県に行幸した折に、長崎県から献上されたものだそうで。
それゆえ、宝船の上には七福神ではなく、長崎県の主要な物産品27種が載っています。
それぞれに品名の札が添えられた様子は、
豪華な舟盛や高級焼肉屋を彷彿とさせるものがありました。
ちなみに、船首にデザインされているのは・・・・・
鳳凰によく似ていますが、想像上の水鳥である鷁(げき)とのこと。
もし、タイタニックの船首がこれだったら、
あの名シーンは台無しになっていたかもしれないですね。
と、それはさておき。
本展にはもちろん鳳凰をモチーフにした作品も紹介されていました。
その中には、あの伊藤若冲の《旭日鳳凰図》も。
皇居三の丸尚蔵館で若冲というと、
全30幅からなる国宝の《動植綵絵》が思い浮かびますが、
こちらは、《動植綵絵》ではない皇居三の丸尚蔵館の若冲作品です。
そんな《旭日鳳凰図》の展示は、2/2まで。
2/4から始まる後期からは、《動植綵絵》の「老松鳳凰図」が出展されるようです。
また、本展では瑞祥の生きものとして、
麒麟や唐獅子をモチーフにした作品も紹介されていました。
中でもインパクトがあったのが、こちらの《麒麟香炉》。
麒麟というよりも、散歩に連れて行ってもらえず、
悲しい表情でご主人様を見つめる飼い犬のようでした。
「くぅ~~~ん」という鳴き声が聞こえてきそうです。
そもそも麒麟が鳴くのかは知りませんが。
なお、この《麒麟香炉》は今回が初公開とのこと。
本展では他にも、10点近い初公開作品があります。
おめでたい作品に加えて、貴重な作品の数々。
「こいつぁ春から 縁起がいいわえ」と、
言いたくなること請け合いの展覧会です。
ちなみに。
個人的にもっとも印象に残っている出展作品は、《霊芝置物》。
うわ!本物そっくり!
と思ったら、本物のキノコを乾燥させたものなのだそう。
しかも、軸も作りものではなく、本物だとか。
干しシイタケ的なものなのでしょうか。
水で戻したら、イイ出汁が出るのかもしれません。
それと、もう一つ印象的だったのが、
横山大観が富士山を大画面で描いた作品です。
タイトルは、《日出処日本》(ひいずるところにっぽん)。
なんとなくですが、長渕剛の曲っぽいです。
それから、富士山と太陽の位置関係、そして、全体的にゴールドな色味。
なんとなくですが、箱根駅伝のロゴっぽいです。
┃会期:2025年1月4日(土)~3月2日(日)
┃会場:皇居三の丸尚蔵館
┃https://pr-shozokan.nich.go.jp/2024inviting-fortune/