小沢一郎の対米ニヒリズム
小沢一郎が草の根の活動と称し、議員、支持者640人を引き連れて北京もうでとしゃれ込んだ。あまりの仰々しさから、さっそく「大名行列」などという新聞見出しが躍っている。
89年以来続けている民間交流「長城計画」の一環らしいが、メディアの子供っぽい理屈からいえば、危機に瀕する日米同盟に一段の悪影響、となる。
いま、鳩山政権に米国から強烈なプレッシャーがかかっている。政権交代を奇貨として、これまでの隷属関係を変えられては、米国にマイナスだからだ。
日本にはこれからも言いなりになってもらわねば都合が悪い。とくにマネーの供給者として、日本には従順に働いてもらわねばならないのだ。
日本が買い込んでる米国債は総額で68兆円といわれる。実は来年、30年もの米国債の償還期限が三度、やってくる。来年11月の償還額は30兆円にのぼるという指摘もあるらしい。
もちろん、財政難にあえぐ米国は、日本に新たな米国債を買ってもらってしのぐしかない。
日本に言うことを聞かせる、アメリカの伝家の宝刀は、日米同盟だ。中国や、北朝鮮の脅威にさらされている日本の現状は米国にとって不利益ではないはずだ。
普天間基地移設問題で、日米合意の履行を強く促し、新政権に恭順の意を示させる。これが米国の至上命題となっている。
日本への圧力にひと役買っているのが、日米双方の通称、安保マフィアといわれる外交・防衛通だ。たがいの情報交換を通じて、日米同盟の危機という幻想をつくりあげ、メディアに垂れ流す。
メディアの情報源は主としてこの保守的なクラブの面々であり、彼らに気に入られるジャーナリストが、この世界では大きな顔ができる。逆に言えば、専門家を自認する人物ほど、安保マフィアの言説に乗せられやすいわけだ。
さて、胡錦濤に民主党の議員のツーショットを撮らせてもらい、小沢一郎がにんまりして礼を述べている風景は、あまり筆者の趣味に合わないが、そんなことはどうでもいい。
小沢の対米観からみて、今回の訪中絵巻は興味深いものがある。
小沢は「90年代の証言」(朝日新聞社刊)のインタビューでこのように言っている。発言の時期は2005年ごろと思われる。
「アメリカのエスタブリッシュメントというのか指導層は、日本人に対して同じような不信感をもっていますね。だから僕は今でも警鐘を鳴らしているんです。日米同盟が大切だ、なんて言っていても意味がない。アメリカの支配層の連中は、日本人を本気では相手にしていない。だからきちんと自分の主張をせねばならないということです」
小沢の対米ニヒリズムは、危険をはらむ一方で、本質をついている。
米国は日本人の気持ちなど考えず、ビジネスライクに中国重視姿勢を強めている。恫喝すれば日本はついてくると信じている。
日本も、中国やインドなどアジア新興国の経済成長に頼っていかざるを得ない以上、その核となる中国との関係をより深める必要がある。
日米が経済的利益をねらって、鞘当てを演じているわけだが、その一方で、軍事的脅威を広げる中国への、防衛上の共通目的もある。
この微妙な三角関係を、どうやってうまく使いこなし、国益につなげていくかが外交の要諦だろう。
単純に、米国君の言うとおりにして仲良くしなければ、中国嬢に大切な米国君を奪われてしまうぞ、というような種類のものではない。
むしろ、中国に近寄る素振りで、米国の嫉妬を引き出し、日本の大切さを再認識させる方法も、一人前の大人なら考えるだろう。
メディアでは洋の東西を問わず、漫画のようにわかりやすくした子供の論理が幅を利かせている。記者も、評論家も、電波芸者と揶揄される方々も、お互い食っていかねばならぬ。
ただし、それが昂じて世の中がおかしくなることがある。そうなっては元も子もない。メディアからの情報を受け取るわれわれの側が、あまり煽られないように心がけておくしかなさそうだ。
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