民主、予算洗い直しのサンプル実施で財源確保に自信
民主党のキャッチフレーズ「政権交代」に対抗する言葉が、自民党にはなかなか見つからない。
そこで「政権交代は景気後退だ」とか言って批判するが、いまひとつ国民の心をつかめていないようだ。
郵政民営化の是非に単純化して成功した前回の小泉流選挙術の呪縛が党執行部の頭を混乱させている。
国民の目には、よほど「政権交代」のアピール度を恐れているように映るだろう。怖いものに吠え立てるだけでは、政党の主体性が見えない。
ずっと野党だった民主党の弱みは、当たり前のことだが経験のなさだろう。
野党ゆえに、省庁から得られる情報や資料も少なく、ともすれば厄介な現実を知らぬまま耳あたりのいい政策を並べるということもあるにちがいない。
だからといって、未経験者ゆえに政権を委ねないとしたら、政権交代可能な二大政党の育成を国民が怠ることになる。
政党に、利権より政策を競わせるには、政権を交代させることによって国民が主導権を握るしかない。
さて、自民党による民主党攻撃の柱に「財源の裏づけがない」という論法がある。消費税アップを封印して、社会保障の充実など、絵に描いた餅だ、などといいたいのだろう。
これに対して、民主党は無駄な事業をやめて、予算の組み換えをすることで財源を捻出できると主張する。
無駄な事業とは具体的にどのようなもので、どのくらい削減できるものなのか。自民党が突きつける疑問だ。
それに答えるのが「事業仕分け」という、手法である。民間シンクタンク「構想日本」が地方自治体の予算削減に成果を上げてきた。
予算に計上された事業の必要性や効果を公開で検証し、廃止できるもの、民間などにまわせるものなどをピックアップする作業だ。
かねてからこの手法に着目していた民主党は構想日本とともに、2009年度予算に盛り込まれた2767事業のうち、87の事業をサンプル抽出して「事業仕分け」を実施した。
その結果、87事業のうち17事業が事業廃止、8事業が民間実施、17事業が地方移管、44事業が改善すべきで、継続は1事業のみとされた。
これにより、87事業で7099億円にのぼる予算のうち、1847億円(26%)の節減が可能だという。
1847億円というのは87事業に絞っての削減数字だから、2767事業全てをチェックすれば、当然、節約金額は大きく膨れ上がる。
民主党は無駄遣い削減で9兆円の財源を手当てするという主張の根拠としたいようだ。
では、事業廃止とされた17事業の中から、いくつかの具体例をあげてみよう。
内閣府の「地方の元気再生事業」は37.5億円の予算がついている。これは総務省の「頑張る地方応援プログラム」と同じ内容だから廃止とされた。
防衛省の「国際平和協力センター」(9.7億円)は外務省のPKO人材育成事業とダブっており、ハコモノ建設が先行しているため廃止。
資源エネルギー庁の「緊急時対策整備」(2.1億円)は、石油の供給が途絶えたときの対策で、ガソリンや灯油の配給に使う「紙切符」5万箱分を30年間保管するのに必要だという。当然これは「電子化で対応できる」として、あっさり×マークがついた。
もちろん、政府や自民党執行部は「あんなもの、都合のいい事業ばかり集めて評価しているだけだ」と反論するに違いない。
しかし、「構想日本」は政党の色が全くついていないシンクタンクである。各自治体で行ってきた地道な努力を知る人はその信頼性に疑いを差しはさまないだろう。
ちなみに、6月9日の当ブログで、自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」が、「アニメの殿堂」117億円の凍結を求めたことについての記事を書いたが、この自民党PTが頼りにしているのがほかでもない、構想日本なのである。
オープンな場で議論し、必要な事業、不要な事業を選別する。この「事業仕分け」という手法をスタンダードなものにしていくためにも、今月8日の各紙朝刊に地味に掲載された“予算洗い直し”の記事に注目していただきたい。
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