掲題の件、単純な個人的な疑問なんですけど。ネット専業広告代理店っていう、カテゴリーが存在します。主要なプレーヤーは、オプト、セプテーニ、サイバーエージェントなど。アウンやアイレップも、まぁ入るかな。
僕はこのカテゴライズがすごく嫌いなんだけど、就職活動なんかでも良く使われてしまうカテゴリー。クロスコミュニケーションやらコミュニケーションデザインというコンセプトが一般化してきている現在、「ネット専業」と謳うことのメリットは少ないと思うんだけど、いかがかしら?(メリットがあるとすれば、総合代理店が適当に管理しているリスティングアカウントを略奪するときのみ、みたいな)
そんななんですが、一応ネット専業広告代理店は広告代理店なわけなんですけど、所謂スタークリエーターがいない。ここで言うスタークリエーターは、業界的に名の売れたクリエイターという意味で。電通とか博報堂とか、クリエイティブエージェンシーにはいますよね、そういう人。
そういう人がどうたらこうたら、って議論をしたいのではなく、そういう人間がいないという現状についてフォーカスして話したい。
この現象って言うのは、多分各社の「必要性」の問題だと思っていて。ネット専業広告代理店に属する企業の収益の内訳ってほとんどが「(バナー広告などの)メディアバイイング」と「SEM(リスティングとSEO)」に拠っている。それぞれを売って、それぞれ定められた代理店マージンで利益を保っているわけです。
この2つの領域において、クリエイティブの肩身は狭い。悲しいほど狭い。
バナー広告1本辺り10万取れたらいいほうで、1本5万とかひどいときは無料とか、そういう世界観で戦っている。つまりはそんな価値しか感じられていない(こういう世界観を作っちゃったのは誰なんだろう・・・)。
またSEMにおいては、あまりクリエイティブな仕事だと思われていないためか、表示されるテキスト広告はほぼ無料。コピーライティング料なんて口に出したら、お客さんに怒られてしまう。きっとそんなところが現場感だと思う。
そんな環境の中、各代理店のクリエイティブDivの方々はせっせとバナーを作ったりしているわけです。それも大量に。だからいつもキャパオーバー。余裕がない。余裕がないから、どちらかというと創作ではなく、制作あるいは製造に近い仕事。創るではなく、作るの世界。だから世に言うスタークリエーターが生まれない。そういう仕事をしてないから。
でも創るの世界もあるわけです。世に言うクリエイティブエージェンシー、Widen+KennedyとかFallonとかbeacon communicationsさ、みんなすごいいい仕事してるわけです。クリエイティブ領域でいい仕事をして、そこでお金をきちんと頂いている。そういう環境がある。電通だって博報堂だって、マッキャンだってそう。
誤解のないように言っておきたいんですけど、ネット専業広告代理店のクリエイティブDivの中にも優秀な人はいるわけです。すごい企画力を持っていたり、言葉力を持っていたり。でもこういう環境だから、その力を発揮する仕事がない。もったいない。すごくもったいない。
だからこそ、この記事、この問題提起なわけで。
これは組織的な問題だと思うし、営業(所謂アカウントプランナー)の仕事だと思っていて。アカウントプランナーはそういう仕事を持ってくる、そういう仕事をクリエイティブDivの人たちにオリエンする。そういう仕事を取ってくる。経営陣はクリエイティブに対して評価を与え、人に投資、環境に投資しなければならない。そういう動きがあまりにも少なすぎる。各社とも。
クリエイターないしコンセプター的な仕事、あるいはコンサル的な仕事を持ってこれなければ、そういう仕事が出来なければ、あとはメディアバイイングのみなわけで。そんなことしか出来ない会社、つまりはメディアブローカーでしかありえない会社は、すぐに厳しくなってくると思う。だって値引き競争で勝つか、あとは人間関係的なところで勝つしかないから(電通的な政治力はネット専業系の若い会社にはないわけで)。
それくらいネット広告という領域においても(こんな言い方をしなければならないのがそもそも悲しい)、きちんとスタークリエイターを輩出できるような環境を作っていかないと。そういう仕事を意識してアカウントプランナーが持ってこないと。じゃないと、クリエイターはこのカテゴリからいなくなっちゃうよ?ホント。
僕は一応アカウントプランナーなので、最近すごく「そういう仕事を意識してアカウントプランナーが持ってくる」を意識して仕事している。じゃないと、この領域が育たない。
僕はメディアブローカーになりたくないし、そういう仕事はつまらないと思っている(誰でも出来るという意味で)ので、この点ものすごく危機感持ってます。SEMについても同様。現状人的負荷が大きく、SEMの担当者の仕事振りは過酷な場合が多く、かつ作業的なため自動入札ツールに取って代わられる日も近いと思っているため、この業界自体の仕事内容を変えていかないと。そう思ってます。じゃないと給料も上がらないしね。賛同者求む。
【追記】
アカウントプランナーが「そういう仕事」を持ってくるためには「そういう仕事」をきちんと理解しなければならない。組織的に「そういう仕事」に投資するためには、経営層が「そういう仕事」を理解し、推進していかなければならない。「そういう仕事」が出来る人を持ってくるだけでは、上記環境が整っていないため、すぐに流出してしまう。けっこう、そういう問題だと思います。
アドマン