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Core i9-12900Kの性能&消費電力に驚愕! Alder Lakeぶん回しにふさわしいZ690マザーと一緒に徹底検証

Core i9-12900K+MSI「MPG Z690 CARBON WIFI」で新世代のPC自作へ text by 加藤 勝明

Intelの第12世代Coreプロセッサー、通称“Alder Lake-S”がついに発売となった。Intel初のメインストリーム向け10nm Enhanced SuperFinプロセス(正式な呼称は“Intel 7”プロセス)というだけでなく、Pコア(高性能コア)とEコア(省電力コア)という2種類の性質の異なるコアを組み合わせたハイブリッドデザインのCPUである。さらにDDR5やPCI Express Gen5の採用など、新要素山盛りの意欲的な仕様となっている。

このAlder Lake-SでPCを組む場合に絶対に必要になるのが新しいIntel 600シリーズチップセットを搭載したマザーである。Alder Lake-Sはダイの大型化に伴いソケット形状もLGA1700という新形状に変更され、チップセットもUSB 3.2 Gen 2x2をサポートした新モデルに更新されたのだ。11月4日に販売が始まるAlder Lake-Sはすべてオーバークロックが可能なK/KF付きモデルで、合わせて発売されたマザーはすべてオーバークロックに対応した「Z690」チップセット搭載マザーとなる。

今回はAlder Lake-Sのベンチマーク速報に加えて、Alder Lake-S自作の要となるマザーのうち、注目の1枚を簡単なベンチを交えつつレビューしてみたい。各社さまざまな趣向を凝らした製品を投入しているが、ここでは、スペックや装備のバランス的に“ちょうどよい”感のあるMSIのアッパーミドル製品「MPG Z690 CARBON WIFI」に注目してみた。

発売したばかりの第12世代Coreで組むにはZ690マザーが必要だ。Z690マザーはどのメーカーも趣向を凝らしたモデルが発売されているが、価格・装備・設計のバランスのよさでいくと「MPG Z690 CARBON WIFI」のようなメインストリームマザーがオススメだ

MTP 241WのCPUに負けない電源回路を備える重厚な作り

Alder Lake-SはPコアとEコアを組み合わせ、Intel製メインストリームCPUとしては初めて物理コア数最大16基に到達したCPUだが、同時に消費電力も前世代と比較してもかなり上昇している。消費電力まわりの背景を少し解説すると、Alder Lake-SではCPUが消費できる電力の評価基準が変わりっている。従来のTDPおよびPL1はPBP(Processor Based Power)と呼ばれる仕様になり、PL2はMTP(Maximum Turbo Power)と呼ばれるようになった。そして、第12世代CoreプロセッサーではMTPを長時間維持できるようなシステムが望ましいとIntelはメーカーに働きかけている。最上位のCore i9-12900KのMTPは241W(PBPは125W)と非常に高いため、各マザーメーカーはCPUの電源回路の作り込みに余念がない。

MSIもこのMPG Z690 CARBON WIFIを含め、全モデルについて1世代前のモデルよりも電源回路の構成を強化。MPG Z690 CARBON WIFIの場合は18+1+1フェーズ、75A SPS対応の強力なものを実装している。安心してCore i9-12900Kを全力で回せる設計と言えるだろう。

電源回路の構成は18+1+1フェーズ、75A SPS対応の強力なものを実装している。これならMTP 241WのCore i9-12900Kのポテンシャルを十分に引き出せるだろう
電源回路の冷却は肉厚&大型のヒートシンクにヒートパイプを組み合わせたもの。MOSFETとチョークコイルの表面をそれぞれ覆う設計だ
第12世代CoreのパッケージはLGA1700に変更されたため、ソケット形状もこれまでのLGA1200や115x系とは大きく異なる。CPUクーラーを固定する穴はLGA1200と互換性を持たせているマザーも存在するが、本機ではLGA1700対応クーラー用となっている
CPUの補助電源は(今となっては)スタンダードの範疇に入る8ピン×2構成
DDR5スロットは組み付けミスを減らすためSMT(表面実装技術)を利用して実装されている。最大DDR5-6666まで対応という話だが、検証時点ではそこまで確認できるモジュールはなかった

オンボードの装備はバックパネル側にUSB 3.2 Gen 2x2やWi-Fi 6(設計的にはWi-Fi 6E対応)、さらにケース前面のUSB Type-C用にUSB 3.2 Gen2のヘッダを備えるなど今時の要素はすべて備えている。

またMPG Z690 CARBON WIFIは5基のM.2スロットを搭載しており、NVMe M.2 SSDだけでも大きなストレージプールを構築することができる。しかも5基のうち4基はPCI Express Gen4動作(残りはGen3)となっているため、速度面でも十分なものが確保できる。

バックパネルには4系統のUSB 2.0(黒)と5系統のUSB 3.2 Gen2(10Gbps、赤)に加え、USB 3.2 Gen 2x2(20Gbps、Type-C)を搭載。ネットワーク系は2.5GbE(Intel I225V)とWi-Fi 6(将来6Eにも対応可能)+Bluetooth 5.2を搭載。左下の小さなボタンはBIOSを更新するためのもの。パッケージにはWi-Fiアンテナが同梱
Z690マザーはZ590世代よりもさらにM.2スロットが多い製品が増えた。本機の場合Gen4が4基、Gen3が1基設置できるが、すべて大型のヒートシンク「M.2 Shield Frozr」で覆われている
CPUに一番近いM.2スロットは裏面チップ冷却用のサーマルシートにSSDを固定するためのレバーを装備。5基のM.2スロットのうち図中左下(Gen3 x4接続)を以外はすべてGen4 x4接続となる
M.2のSSDを冷却するヒートシンク「M.2 Shield Flozr」。どれも大型だがとくにビデオカードの下になる中央部分のパーツがとくに大きい。

そのほかピンヘッダの類は定番かつ必要なものを十分な数揃えている。Z690なのでCore i9-12900KのOCにも挑戦できるが、オンボードの電源/リセットボタンがない点は少々残念だ。

トラブルシュートの一助になるPOSTコード表示用LED。Corsair製LEDデバイス専用のピンヘッダを備えているのはMSI製マザーの特徴と言える
ATXメインパワーのすぐ脇にはUSB 3.2 Gen1(5Gbps)用のヘッダのほか、PCケースのフロントType-Cコネクタに引き出すためのUSB 3.2 Gen2(10Gbps)ヘッダも備える
マザー下部のピンヘッダ部分にはLEDを強制消灯するためのスイッチが。PCパーツは光ってほしくないと考える人もこれなら満足するだろう
本機の発光ギミックはチップセットクーラーの脇と、I/Oシールド部分にあるドラゴンの絵の下に隠されている
CPUのクロックなどのチェックやRGB LEDの制御には「MSI Center」を使うのはMSIマザーならでは。必要な機能だけをインストールできるのも◎
CPUのクロック(P/Eコアを分けてチェックする機能はまだないようだ)や温度、各部電圧をMSI Centerでチェックできる

初物ゆえの制約もあるがDDR5は定格どおり動作

MPG Z690 CARBON WIFIのレビューを行なうにあたり、以下のようなパーツを用意した。メモリはDDR5-5200対応モジュールだが、クロックや電圧の設定はすべてAuto任せとし、2枚挿しでDDR5-4800として運用している(後述)。CPUのパワーリミット設定に関しては近年のIntel製CPUを検証するにあたってまず頭を悩ませるところだが、MSI製マザーはデフォルト設定がパワーリミット無制限設定であるため、今回もそれに従った。比較対象としてRocket Lake-SおよびZen 3世代の現行モデルから、Alder Lake-Sの3モデルに競合するものをすべてピックアップした。マザーとメモリ以外の要素は極力同じにしている。

CPUクーラーに関してもLGA1700に対応したものが必須になるため、同じMSI製の簡易水冷クーラー「MPG CORELIQUID K360」も用意している。

【検証環境/Alder Lake-S】
CPUIntel Core i9-12900K(8P8Eコア24スレッド)
Intel Core i7-12700K(8P4Eコア20スレッド)
Intel Core i5-12600K(6P4Eコア16スレッド)
メモリKingston KF552C60BBK2-32
(PC5-41600 DDR5、16GB×2)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 3080 Founders Edition
ストレージWestern Digital WD_BLACK SD850 WDS100T1X0E
[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]
電源ユニットSuper Flower SF-1000F14HT
(1,000W、80PLUS Titanium)
OSWindows 10 Pro 64bit版
【検証環境/Rocket Lake-S】
CPUIntel Core i9-11900K(8コア16スレッド)
Intel Core i7-11700K(8コア16スレッド)
Intel Core i5-11600K(6コア12スレッド)
マザーボードIntel Z590搭載マザーボード
メモリG.Skill Trident Z RGB F4-3200C16D-32GTZRX
(PC4-25600 DDR4 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 3080 Founders Edition
ストレージCorsair CSSD-F1000GBMP600
[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB、システム用]
+Silicon-Power SP002TBP34A80M28
[M.2(PCI Express 4.0 x4)、2TB、ゲーム用]
電源ユニットSuper Flower「SF-1000F14HT(80PLUS TITANIUM、1000W)
OSWindows 10 Pro 64bit版
【検証環境/AMD Ryzen】
CPUAMD Ryzen 9 5950X(16コア32スレッド)
AMD Ryzen 9 5900X(12コア24スレッド)
AMD Ryzen 7 5800X(8コア16スレッド)
AMD Ryzen 5 5600X(6コア12スレッド)
マザーボードAMD X570搭載マザーボード
メモリG.Skill Trident Z RGB F4-3200C16D-32GTZRX
(PC4-25600 DDR4 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 3080 Founders Edition
ストレージCorsair CSSD-F1000GBMP600
[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB、システム用]
+Silicon-Power SP002TBP34A80M28
[M.2(PCI Express 4.0 x4)、2TB、ゲーム用]
電源ユニットSuper Flower「SF-1000F14HT(80PLUS TITANIUM、1000W)
OSWindows 10 Pro 64bit版
デスクトップのメインストリーム向けCPUとしては初めて2種類のコアを状況により使い分けるハイブリッドデザインを採用したAlder Lake-Sこと第12世代Core。今回は最上位モデル、Core i9-12900Kで検証する
「CPU-Z」でCore i9-12900Kの情報を拾ってみた。右下のコア数表記が「8+8」になっている点に注目
Kingston製DDR5-5200メモリ「KF552C60BBK2-32」を使用した。今回のAlder Lake-Sローンチでは複数のマザーメーカーがこのモジュールを評価用メモリとして採用している
DDR5メモリモジュールといっても外見上でとくに変わった部分はない。ただDDR4とは切り欠きの位置が変わっているため、DDR4用のマザーには物理的に装着できなくなっている
マザーと一緒に借用したMSIの簡易水冷クーラー「MPG CORELIQUID K360」。36cmの大型ラジエータはMTP 241WのCore i9-12900Kを全力で回すためには頼もしい存在だ
Alder Lake-SはCPUが全体に大型化したため水冷ヘッドがカバーし切れないのではという懸念はあるが、MPG CORELIQUID K360ならヒートスプレッダ全体を十分にカバーできるだけの大きさがある
水冷ヘッドを固定するためのリテンションパーツ。LGA1700はソケット自体の高さがより低くなっているため、LGA1700専用のより短いスタンドオフが必要となる(ベース部分は既存製品と共通)。つまりLGA1200用のクーラーは装着できるがクーラーがCPUに接触しない
OC関係のBIOS設定ページはいつものMSIマザーといったところ
PコアとEコアはそれぞれコア単位で無効化(HTもコア単位で可能)可能。EコアはBIOS上で完全無効化することが可能だが、Pコアは設定上で全部無効化しても最低1基は残される

前述のとおり今回はMPG Z690 CARBON WIFIで動作確認がとれているKingston製のDDR5-5200モジュールが同マザーと一緒に送られてきたのでこれを使って検証に臨んだが、結論から言うとDDR5-5200で動かすことはできなかった。設定の勘所があるのかもしれないが、BIOSでXMPを有効にしただけではPOSTが通らなかった。そこでメモリまわりは自動認識設定として、その設定で適用されたDDR5-4800として運用している。

DDR5-4800ならばCPUの定格設定ではあるが、メモリコントローラがメモリクロックの半分(Gear 2相当)で動いているので、まだ伸びる余地は残されている。Alder Lake-Sでメモリの限界に挑みたい人はもう少しBIOSが熟成されるか、ノウハウが蓄積されるまで辛抱かもしれない(それ以前にモジュールの流通が少ないという噂だが……)。

また、DDR5-4800動作になったのはDDR5モジュール2枚挿し時のみで、同モジュールを4枚挿した場合はDDR5-4000動作となった。Intelの資料でもDDR5-4800動作には2枚挿しが必要と明言されているので、メモリを盛りたい人は注意が必要だ。ただし今後BIOSが熟成されればこの制約がより緩くなる可能性は十分にある。

今回用意したメモリはDDR5-5200と4800のプロファイルがそれぞれ入っていたが、どちらを選んでもPOSTに失敗。時間の制約も厳しいためBIOSの自動認識に任せることにした
「CPU-Z」でDDR5メモリのXMPプロファイルを確認したところ
メモリの設定をBIOSおまかせにした場合、メモリコントローラのクロックはメモリクロックの半分、Rocket Lake-Sで言うところの“Gear 2”動作相当になる

Core i9-12900Kを定格でブン回すと……

今回はテスト時間も筆者の体力も限られているため、CINEBENCH R23をはじめいくつかのテストのみをチェックする。CINEBNCH R23のテスト方法は10分ウォームアップの後に計測するデフォルトの計測方法だ。

CINEBENCH R23の計測結果

マルチスレッドで26,000ポイント以上、シングルで1,980ポイント以上というのはRyzen 9 5950Xを大きく上回るものとなった。Core i9-12900Kは論理コア数(もっと言えば性能の出るPコア数)ではRyzen 9 5950Xより少ないが、マルチスレッド性能は勝っている。MTP 241Wと大きいだけに後述する消費電力では圧倒的にRyzen 9 5950Xよりも大きくなるものの、パワーでライバルをねじ伏せた形だ。

一方Core i7-12700KやCore i5-12600Kもなかなかよい働きをしている。12700KはRyzen 9 5900X以上、12600KはRyzen 7 5800X以上のパフォーマンスを見せている。

IntelはAlder Lake-Sを最強のゲーミングPC向けCPUであるとしているので、ゲームの性能も見てみよう。Intelが発表回などで推すリーグ・オブ・レジェンドやMount&Blade II Bannerlordといったタイトルもよいが、あえてここはAMDの肝いりタイトルである「Far Cry 6」で試してみたい。解像度はフルHDの一通りとし、画質は“最高”、レイトレーシングやFSRは無効とした。ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを計測する。

「Far Cry 6」、1,920×1,080ドット時のフレームレート

Core i9-12900KがRyzen 9 5950X/5900Xを平均fpsはもちろん、最低fpsも大きく引き離すという結果には驚くしかない。Core i7-12700KよりCore i5-12600Kのほうがよい結果を出している(12700Kがやや低い)のはデフォルトのMTPが190Wと低いCore i5-12600Kがパワーリミット無制限環境に置かれた結果という推測と、Windows 10環境でのテストゆえにPコアとEコアの使い分けが(今回の計測のタイミングでは)Core i7-12700Kでうまくいかなかった、という推測が立ち上がる。ただ今回はどちらが正解なのかを見きわめる時間が得られなかった。あくまで今回の検証環境ではこんなもの、という紹介程度にしておきたい。

ゲーム時におけるPコアとEコアの負荷をチェックすると、非常におもしろい状況が観察できる。ゲームアプリ本体の処理はPコア、しかもHyper-Threadingで増えた論理コアでないコア(本来のコア)に集中し、EコアはほとんどOSやドライバの処理(カーネル時間)を引き受ける。すべてのゲームがこういう割り当てになるわけではないが、貴重な計算資源であるPコアを処理速度が必要な処理に優先的に割り当てるというAlder Lake-Sの設計(とくにそれを司るIntel Thread Director)は奏功していると言えるだろう。

なお、11月5日(金)21時開始のライブ配信ではさらに詳しいレポートをお届けするので、ぜひご覧いただきたい。

Far Cry 6プレイ時のCPU負荷。左上から右下へPコア0、Pコア0の論理コア、Pコア1……Pコア8の論理コア、Eコア1、Eコア2……となるが、Pコアの論理コアにはほとんど負荷がかかっていないこと、Eコアの負荷はほぼカーネル時間で埋まるなど、これまでのCPUにはないタスクの割り当てが行なわれている

次にCore i9-12900K環境で「OCCT Pro v9.1.4」を使い「OCCT」テスト(エクストリーム&負荷一定モード)を20分実施した際のCPUクロックや温度などを見てみよう(12700K/12600Kは時間の都合上割愛させていただく)。MTP 241WのCPUをパワーリミット無制限で回すと発熱的にかなり大変なことになりそうだが、実際はどうなのか検証してみたい。温度やクロックの追跡には「HWiNFO Pro」を使用した。

Core i9-12900KでOCCTテストを実行した際のPコアおよびEコアのクロック。それぞれ8コアずつあるので平均値をとっているが、実際はP/Eコアそれぞれでほぼ同じ値を示した
Core i9-12900KでOCCTテストを実行した際のPコアおよびEコアの平均温度。これも8コアずつの平均値だが、コアごとに微妙に異なる
Core i9-12900KでOCCTテストを実行した際のCPU Package Powerの推移
Core i9-12900KでOCCTテストを実行した際のCPUパッケージ温度ならびにMOS/VR VCC温度の推移

まず動作クロックはすべてのPコアがほぼ常時4,888MHzを、Eコアは3,691MHzを維持しており、MPG Z690 CARBON WIFIがCore i9-12900Kのパフォーマンスを十分に引き出せていることが見て取れる。その際のP/Eコアの温度は70℃〜80℃で変動しているが、OCCTでフル回転させているせいかPコアのほうが若干コア温度が低いようだ。ちなみにCPUのPackage Powerは212W前後で安定し、サーマルスロットリングに入ったコアはない。36cmラジエータを備えた簡易水冷、かつ定格動作でこれか! と感じるかもしれないが、プロセスルールのシュリンクで得たアドバンテージをすべて性能に振ったのがAlder Lake-Sと考えれば、MPG Z690 CARBON WIFIはAlder Lake-Sの持ち味を十分引き出していると言えるだろう。

CPUだけで210W以上食うようなシステムだとCPUの電源回路部分の発熱が気になるが、HWiNFOで観測できるMOS温度ならびにVR VCC温度ともに75℃(20分後の値)とかなり高め、若干頭打ち傾向が見られるが上昇傾向は続いているため、運用する際はCPU周辺の空気をしっかり回すようにファンを配置する必要があるだろう。

最後にラトックシステム「RS-WFWATTCH1」でシステム全体の消費電力を計測してみた。アイドルとはシステム起動10分後の安定値、OCCTとは前述のOCCTテスト開始時10分後の安定値を見ている。

システム全体の消費電力。OCCT中の消費電力は一瞬だけ350W近くまで振れることはあるが、維持できずにすぐ低下する

Ryzen 5000シリーズがせいぜい250Wで収まるところをCore i9-12900Kは300Wを大きく超えているので、P/Eコアを全開で使う前提なら決して省電力なCPUとはいえない。この大食らいなCPUを確実に安定動作させるには、MPG Z690 CARBON WIFIのようなマザーが必要になるだろう。

“盛れば勝てる”Alder Lake-Sのポテンシャルを十分に活かせるマザー

第12世代Coreについては賛否両論があることは確実だが、これまでどんなにクロックや電力を盛ってもマルチスレッド性能でRyzenに大敗していたIntel製CPUが、MTP大盛りの状況ならしっかり勝てるようになった。この点は高く評価すべきだろう。

P/Eコアを完全に使いこなすにはOSやアプリもある程度選ぶ必要があるが、まずはCPUに大電力を安定供給しハイパフォーマンスシステムを構築できるマザーが必須だ。その点でこのMPG Z690 CARBON WIFIは思い切ってAlder Lake-Sを全力運転できるマザーと言える。Alder Lake-Sで組む際はマザーの選択肢にいれてみてはどうだろうか。

改造バカ&KTUがAlder Lakeをライブで詳細解説!

【11月5日(金)21時より、Alder Lakeこと第12世代Coreを徹底解説するライブ配信を実施します。前世代モデルやライバルAMD Ryzen 9 5950X/5900Xとの比較結果、Z690マザーボードの紹介も交えて、今自作派が知りたい情報をお届け。解説は“KTU”加藤勝明氏、番組のホストは新CPU発売には欠かせない”改造バカ”こと高橋敏也氏です。(番組終了後は録画版を視聴可能です)】

[制作協力:MSI]