2021/02/21 - 2021/02/22
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昨年の秋に中原中也の故郷である山口県の湯田温泉を訪れた際、新山口駅前で種田山頭火の銅像を目にした。小郡(現在の山口市)が山頭火にゆかりのある土地であり、出身地が防府市であることを知った。
令和3年2月、下関市から広島市方面へ行く用事があった。その機会に初めて防府市を訪れてみることにした。
防府市は、同じ山口県内の萩、津和野、山口、岩国、下関などと比べると観光地としては地味な印象である。しかし、実際に訪れて街をぶらぶら歩くと案外面白いところであった。
(2021.03.19作成開始)
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【一日目】
正午少し前の列車でJR下関駅から防府市へ向かう。下関駅 駅
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JR下関駅から10分くらい歩いた先の港のある細江町に山頭火の句碑がある。
汽笛(フネ)とならんであるく早春の白波
昭和9(1934)年2月、長府の黎々火居から海岸線を下関へ歩く途中で詠まれた句である。 -
九州では見かけない直流用の黄色い電車に乗った。
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13時35分防府駅に到着。駅構内にある観光案内所で地図を貰う。
防府駅 駅
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駅北口の広場に建っている種田山頭火の像。
新山口駅前の像はまだ新しかったがこちらは風格がある。 -
防府駅と宿泊するホテルの間にあるアーケード商店街を歩いてみる。明るい時間帯にもかかわらずシャッターを下ろしている店が少なくない。
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17時台に撮影。アーケードの下を車が通行している。
この商店街の現状を雄弁に物語っているようだ。 -
ホテル近くの石材店の前に置かれた山頭火の句碑。
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生えて伸びて咲いてゐる幸福
昭和9(1934)年、山頭火52歳の時に詠んだ句である。 -
【二日目】
この日は一日かけて防府市の中心部の観光をすることにした。幸い2月なのに晴れていてかなり暖かい。
ホテル1階にあるレストランでビュッフェ形式の朝食を取る。食後にコーヒーを飲んで寛ぐ。 -
ホテルのロビーで閲覧用の旅行ガイドブックをチェックする。
ネットで防府市のことを調べていて女優の故夏目雅子さんの墓が市内にあることを知った。幸い防府駅からさほど遠くない。
ホテルのレンタルサイクルを無料利用できることを案内されていたが、のんびり街歩きすることを選ぶ。
海外でも国内でも私の一番好きな旅スタイルである。 -
09時45分に出かける。良い天気である。
防府駅の案内所でもらった地図を手に最初に向かったのは俳人・種田山頭火の生家跡である。
(写真は生家跡の通りの反対側で撮影) -
屋根付きの石碑のある場所から奥にかけての土地に生家が建っていた。
種田山頭火生家跡 名所・史跡
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地元の人にとって山頭火がとても重要な存在であることがわかる。
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碑の前には山頭火が愛した酒の一升瓶が供えられていた。「山頭火」という銘柄をあえて選んだのだろう。
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生家跡から伸びている「山頭火の小径」はあとで歩くことにする。
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生家跡の北西にある山頭火の墓へ歩いて向かう。
観光案内所でもらった地図には「山頭火顕彰の墓」と記されている。
写真は街角に建つ山頭火の句碑。 -
「山頭火顕彰の墓」がある護国寺。山頭火生家跡から歩いて10~15分くらいの距離である。
墓の謂れについて調べてみた。以下を参考にした。
https://www.shunyodo.co.jp/blog/2018/09/santouka_03_gokokuji/
http://kajipon.sakura.ne.jp/kt/haka-topic41.html
山頭火は愛媛県松山市で亡くなった。
種田家の墓地は護国寺の近くにあったが、国道2号線の拡張の関係で市営墓地に移転することになった。
その際護国寺で一時的に山頭火の遺骨を預かることになった。そのことが後に護国寺に墓地が移されるきっかけになった。 -
山頭火の葬儀は愛媛県の松山で行われた。遺骨は息子さんが防府へ持って帰り、最初市営墓地へ埋葬された。
その後市営墓地にある種田家の墓を護国寺が引き取ることになり、護国寺境内に墓が移された。
山頭火の遺骨は護国寺に母フサと並んで眠っており、墓石には「俳人種田山頭火之墓」と彫られている。
また、山頭火の元妻サキノが住んでいた熊本市(山頭火も妻とともに熊本に住んだことがある)の安国禅寺にも分骨墓がある。
(写真は護国寺門前に建つ山頭火像。) -
山頭火の墓。左の小さな石塔が母フサの墓標のようだ。
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護国寺の境内には山頭火の句碑が複数建てられている。
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護国寺山門の脇にある山口県指定有形文化財「笠塔婆」。
貞永元(1232)年に建立された貴重なものである。 -
山頭火の生家跡まで同じ道を引き返す。来る時と反対側を通ると萩往還の碑が建っている。
萩往還はしばらく先で山陽道と分岐している。途中の一部が山陽道と重なっている。
旧萩藩の時代に現在の防府市内にある藩の船着き場から萩城までを結ぶ重要な街道が萩往還であった。 -
萩往還が山陽道と重なっている部分。写真の奥へ山陽道が伸びている。
昔の街道ということを念頭に置いて眺めると趣のある道筋に見えて来る。 -
山頭火の小径の入口まで戻って来た。路地の幅が狭い。家の並びは昔のままなのだろうか。
山頭火の小径 名所・史跡
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山頭火の小径は「山頭火ふるさと館」の裏手に面している。
平成29年3月竣工のまだ新しい施設である。山頭火ふるさと館 美術館・博物館
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建物は細長い。写真は萩往還(山陽道との重複部分)に面した表側の入口付近。
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山頭火ふるさと館を見学する。入場無料である。展示室内は撮影不可。
自由律俳人として偉大な足跡を残した種田山頭火の生涯がよく理解できる。 -
山頭火ふるさと館の隣に萩往還に面して旧本陣の建物が建っていたが、比較的最近の火災で消失した。
解説板には「宮市本陣兄部家」と記されている。宮市本陣兄部家 名所・史跡
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現在は写真の門と塀の一部が残るのみである。
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山頭火ふるさと館前の萩往還(旧山陽道との重複区間)を西へ少し行くと門前に観音像が建つ定念寺という浄土宗の古刹がある。
定念寺の観音堂に残されている「宮市三十三身観世音菩薩」については次のような謂れがある。定念寺 (宮市観音) 寺・神社・教会
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今から約四百五十年前、定念寺(当時は西念寺)の最初の住職であった心誉上人は観世音菩薩を信じ毎日観音経を百八遍読み、病気であっても欠かすことはなかった。ある日、旅の僧が一夜の宿を求め、住職と一晩中観音様のことなどを話した。夜が明けてみると、その旅の僧はすでに旅立っていた。ただ荷を置いていったので、住職は何だろうと訝りながらその荷を開けてみると三十三身の観世音菩薩が残されていた。それが今も定念寺の観音堂に残されている「宮市三十三身観世音菩薩」である。
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この後防府天満宮を参詣する(今日の最大の目的地)。
その前にやや早めのランチにする。近くの中華屋に入る。
地元客で繁盛している。ラーメンと半チャーハンのセットを注文した。 -
緑麺(!)のラーメンが美味しい。半チャーハンはご飯がややこわいが味は良い。
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防府天満宮の石大鳥居。県指定有形文化財。
長州藩初代藩主・毛利秀就が寄進した石鳥居。山口県下では最大・最古で江戸時代初期の寛永6(1629)年10月の銘がある。防府天満宮 寺・神社・教会
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石鳥居の先の青銅鳥居をくぐった先にある幕末史跡「萩狛犬」。
萩の石職人により防府天満宮・太宰府天満宮(福岡県)・北野天満宮(京都府)に奉納された。幕末の禁門の変後、会津藩士が北野天満宮でその長州ゆかりの狛犬を倒そうとしたところ突如の雷があり、天神さまの祟りと恐れた藩士が逃げ去り破壊を免れたという逸話が残っている。 -
狛犬の先の参道を進むと左手に大専坊がある。
幕末の高杉晋作にゆかりがある建物である。幼少の伊藤博文がここで起居していた記録も残っている。 -
階段を上がり切った先に立派な楼門が見えて来る。
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人だかりしている場所には疫病退散を祈るアマビエの木造が置かれていた。
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楼門の先の拝殿への参拝を終えたあと、広い敷地内を散策する。
最初に目についたのは楫取(かとり)素彦・楫取美和子(文)夫妻の銅像である(上の写真)。
楫取素彦は幕末の長州藩の志士、明治時代の官僚、政治家である。ここ防府市内が終焉の地であり、防府駅の南側に夫妻の墓がある(この後訪れる)。
吉田松陰と関係が深く、松陰の次妹の寿と結婚。寿に先立たれた後の明治16(1883)年、久坂玄瑞の未亡人であった末妹の美和子(文)と再婚している。
美和子(文)をヒロインにした2015年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」では井上真央さんが美和子(文)役を演じた。 -
アジア太平洋戦争に関係する碑もいくつか建っている。写真は予科練関係者が建てた慰霊碑。
戦争末期全国で19箇所設置された海軍飛行予科練習生の養成施設が現在の防府市にあった。今は航空自衛隊の防府南基地となっている場所である。 -
防府とゆかりの深い長州藩第7代藩主・毛利重就(もうりしげなり/しげたか)公の銅像。
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防府天満宮を訪れたのは月曜日であったが、ちょうど前日から「梅まつり」が始まっていた。
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この後、周防国分寺を訪れた。写真は周防国分寺の楼門。
萩往還は防府天満宮の石鳥居の前で右に折れ南下する。山陽道は右に折れず東の方角に伸びている。10分ほど歩くと周防国分寺に至る。 -
境内の中心に建つ金堂。
奈良の古刹を彷彿とさせる立派な建築である。 -
この後一旦ホテルに戻り休憩する。
写真は防府天満宮から南下する萩往還の途中にある「らんかん橋」(観光地図の表記による)。 -
16時20分に再び外出し防府駅の南側にある大楽寺へ向かう。
寺の入口手前の解説板に「西山家夏目雅子墓」の表示がある。大楽寺 寺・神社・教会
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萩藩水軍ゆかりの梵鐘。戦時中の供出を免れた。
防府市指定有形文化財。 -
大楽寺の境内にある毛利重就公(防府天満宮にその銅像が建っている)の分骨廟。
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解説板。「英雲」は重就公の号。
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西山家の墓はGoogle Mapで写真を事前にチェックしていたたおかげですぐに見つかった。
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27歳で亡くなった故夏目雅子さん。
墓誌には本名と戒名が記されている。 -
この日の最後に訪れたのは防府天満宮境内に銅像が建っている楫取素彦・美和子(文)夫妻の墓所である。
大楽寺の前から奥へ通じる細い道を少し入った先にひっそりと佇んでいた。
【了】
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