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いきなり自分語りするんですが、昨年末あたりからにじさんじにドハマリしましてね。知ってます? にじさんじ。なんかすごいたくさん人のいるバーチャルライバーグループです。月ノ美兎さんあたりはかなり有名ですよね。彼女の配信も面白いのですが、私の最推しは御伽原江良さん。新しい笑いを見つけるセンスに長けていて、顔が良くて、元気で、裏表なさそうで、精神の根本が陰で、歌声がキュートで、まあ全体的に、かわいい。札幌でライブやるってんで行きましたけどね、いや最高でした。あまり従来のアイドルというものには詳しくないのですが、何となく性質の違った存在なのではないかな、と。バーチャルライバーというものは。距離の近さというか、意外感というか。
にじさんじのライバーは生配信が活動のメインなので、毎日ゲーム実況やら雑談やらたくさんの人がやっているわけですよ。まあ時間足りないですよね。しかも基本的に全部無料で見られるんだから、そりゃあブームにもなるよな……。楽しさを創造する彼ら彼女らには感謝の念しかありません。
KADOKAWA (2018-12-12)
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で、ぬるっと漫画の紹介に行きますが、にじさんじ(原作)/富士フジノ(漫画)『起立! 気をつけ! にじさんじ学園!』はにじさんじに所属するライバーたちの配信内容や軌跡を発足当初から順々に追っていった、ノンフィクション風の作品となっています。
(1巻8~13ページ)
登場人物紹介だけでこの物量。まあ現在は90名超えてますが……。
とはいえ基本的には「JK組」と呼ばれる三名(月ノ美兎、樋口楓、静凛)の活動がメインに描かれています。つまりそれだけこの三人がにじさんじの象徴として捉えられているということですね。
(1巻18ページ)
これはバーチャルライバーファンの共通認識としてあるのではないかと思うのですが、バーチャルライバーという存在に必然的に付きまとうメタフィクション性こそが、新たなジャンルとしてのユニークな魅力といえます。月ノ美兎は設定として高校二年生の学級委員長でありファンからの愛称も「委員長」なのですが、しかし配信では彼女の年齢からしたら考えられないような過去の経験のことや、成年でなければNGであるお酒のことなどを話すことが多々あります。それに対して設定と違うと怒り出すようなリスナーはいません。むしろ定番の笑いどころとして享受しています。つまり姿の見えない「誰か」がキャラを演じていることがまず前提としてあり、それはキャラの設定や見た目とは必ずしも一致はしないということですが、しかし配信を見続けているとですね、その食い違っているはずの両者がいつのまにか混ざり合ってある種の特別な「存在」としてたしかにそこにいるのだという実感を得られるようになる、そこにバーチャルライバーの不可思議な魅力というものがあります。
(1巻31ページ)
YouTube的にNGな映像が流れてしまった際に、月ノ美兎は自分の顔(Live2D)を拡大・増殖させてそれで隠すという行為に及びます。これもメタフィクションであることを最大限に生かした笑いのひとつです。一般的になYouTuberでも物理的にはできないことはないのですが、素直にリスナーに受け入れられて笑いを取れるというのはバーチャルライバーならではのことでしょう。というかそれを瞬時に判断して実行する委員長は改めて凄すぎる……。
(1巻34ページ)
にじさんじ二期生の中には人間ではない存在すら紛れています。ギルザレンⅢ世は4000歳のヴァンパイアであり、活動もそれを前提として行われています。
(1巻64ページ)
10歳や8歳のキャラもいます。常識的に考えて8歳がライバー活動してるわけないやん……みたいな反応をする次元はとうの昔に過ぎ去っており、その現実をひっくるめて「バーチャル」として享受するという新たなステージに我々は立っている。もはやSFではないわけです。
(1巻93ページ)
「3Dになる」ことをひとつの大きな夢として掲げることのできる文化、他にあります?
*
本作はコミカライズ作品としては原作(配信等)をありのままに伝えることに主眼をおいており、その丁寧な作りが好印象です。にじさんじ初心者に「にじさんじのライバーたちがどんなことをやってるのか」を簡略化してわかりやすく伝える役割を担っています。それでありながらJK組がストーリーを作った短編も収録されていてファンサービスもばっちりですね。
少しでもバーチャルライバー、にじさんじに興味のある人はここからスタートするのも良いのでは、と思います。そして君も御伽原江良の推しになろう。
(水池亘)