広上淳一指揮オーケストラ・アンサンブル金沢のベートーベン交響曲4番
出色のベートーベン演奏であった。
広上淳一指揮オーケストラ・アンサンブル金沢のベートーベン交響曲4番(2024・9・17)。
テインパニのメリハリの利いた演奏は出色の出来であったといいたい。
第一楽章。
35小節のバイオリンのcresc.指定では、広上淳一は3つの音の真ん中からfにした。これはトマス・アデイスの解釈と一致した。
朝比奈隆は最初からfにしていた。
259小節のテインパニの解釈もユニークなものであった。
257-260小節に及ぶテインパニのffだが、259小節でトレモロを切って更に一段の迫力を持たせて打たせるよいう妙技が広上淳一にしかできない技だろう。敬服する。
広上淳一のテインパニの扱いは独特で、一定の持続がせいぜいなのだが、この人にかかると持続はどうしても中だるみをするわけだが、後半で一層の迫力を出すのだから凄い。
442-451小節の演奏も迫力があった。
第一楽章の演奏の頂点はこの箇所だ。
442小節のファゴットのクレッシェンドもよく聞こえる。450小節のテインパニは、ffから開始したクレッシェンドはfffに至るという強烈なダイナミクスで演奏された。
第四楽章。
25小節のテインパニは3種類の音符が出て来るが、広上淳一は3種類の音符を1小節の中で明瞭に打たせ分けさせている。たった1小節の中で、驚異である。
ここは実際に生の演奏を聞くしかない。驚くべき演奏である。明瞭に聞き分けられるから驚異の演奏だ。
241-244小節のテインパニの解釈も凄かった。
241小節の4つの8分音符がffで明瞭に打たれながら、242小節のffのトレモロに入るが、ダイナミクスがいささかも減量されないで打たれる。
演奏会は、メインは広上淳一のベートーベン交響曲4番の演奏だろう。ピアノ協奏曲3番のソロのファジル・サイは才人・奇才の誉高いが、協奏曲では全く異才ぶりは現れなかった。そういう解釈はなかった。大振りなジェスチャーもあったと言うが、解釈には反映されなかった。解釈で全然遊んでいないので、4番の広上淳一の異才・奇才ぶりが目立った。