日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

我慢できない大人の為の社会科見学 犬島アートプロジェクト「精錬所」

本レポートでは時間を決めた『ツアー制』になっていますが、2010年4月以降、自由に見学できるように変更されています。その他、時々で変更になっている可能性がありますので、公式のwebもよくご覧ください
http://www.benesse-artsite.jp/seirensho/index.html


直島からの船が港に辿り着くと、すぐにチケットセンターの建物が見える。ここは何かのテーマパークなのか

犬島は岡山市にある島で、宝伝という港から僅かに5分で辿り着く。1909年に銅の精錬所が作られ、一時は3000人以上の人が暮らした島だけれど、銅の価格の暴落により、精錬所は10年で操業を終えた。そして今、島に残るのは、60人の島民と、遺された精錬所の跡。

この精錬所の遺構を利用して、またしてもアート空間を作っちまおう、というのが、ベネッセなわけであり、直島福武美術館財団なのであります。森ビルの森稔“しゃちょう”とベネッセの福武總一郎会長は、アートのお大尽やー。
この『精錬所』を見学するには、事前に予約して案内してもらう必要がある。訪れる際には、1日4回の見学コースを予約するのを忘れずにいきましょう。船を下りてすぐにチケットセンターに案内されて、チケットを購入。体に貼り付けます

まだすこし、開始まで時間があるので、昼ご飯。綺麗な海を眺めながら、チケットセンターの食堂で買った『まつり寿し』美味しゅうございました

さて、13時35分の回で見学がはじまります。

見学コースは3つのグループに分かれて、それぞれガイドさんに案内される。このアートプロジェクト『精錬所』は主に2つのパートからなり、一つは、近代化産業遺産として、かつてのまま、90年前から時が止まっている精錬所跡。もう一つは、ほぼ完全な形でのこる煙突を利用した、三分一博志による建築と、柳幸典によるアートワーク。
前者は撮影可能、後者は撮影不可。『精錬所』の看板がかかる扉を通り過ぎる段階で『カメラをしまってください』とキツク申し付けられて、一眼レフ率の馬鹿みたいに高い集団、堪え切れないといった風情で渋々カメラをしまう。我々のグループは最初、後者の屋上に案内された後、前者へと誘われたんだけれど、そこで案内のお兄さんが『ここからは撮影可能です、ただし建築部分と、そこに利用されている煙突は撮影禁止です』といい終わるかおらないかのうちに、大撮影大会がはじまります…



お兄さん、この精錬所のことについて、島のことについて、銅を精錬する際に残滓から作られる『カラミ煉瓦』について、熱心に説明しながら案内してくれるんだけれど、そしてみんな聞いてはいるんだけれど、それよりも撮影に忙しいのです…



ここはラピュタか、シュワの墓所か。後ろのほうから『目が、目がぁ!』とお約束の台詞が聞こえてくるのに苦笑しつつ、しかしどこを見回しても画になる光景に、みんなシャッターを切るのに夢中です



いまにも倒れそうな煙突、トロッコの跡、カラミ煉瓦に囲まれた空間、案内されながら歩かなければいけないので、一旦撮影し逃したらもう戻れない!そう思うと、いやが上にも撮影熱は高まる高まる



最初は撮影する人たちを適度に待っていたお兄さんも、やがて、もう諦めたのか、適度に説明しながらずんずん進むようになって。それがいいです、待ってたらキリがないです、それにしても、ふんとにもう、辛抱たまらん…



大興奮、我慢できない大人たちの大撮影会が終わり、三分一博志による建築物の中へ。遺構の煙突を使い、自然の空気の流れを利用して、夏は土の力で冷却した空気を、冬は太陽の力で暖める空気を流すようにした、非常にコンセプチャルで面白い空間。鏡を利用した空気を暖めない採光の仕組みが、同時にトリックのような不思議な通路になっていて、さらに、同時に、三島由紀夫をモチーフにしたアート空間になっている。
煙突の真下の空間には、三島由紀夫の家から移設した木材を利用したアート。お兄さんはこれらも説明してくれるのだけれど、その空間の説明、利用された材木や石材の説明、アートの作品説明、それらが渾然一体となっていて、複雑な意味を持つ空間ならではの、まあ、かなりしっかり聞いて理解する気が無いと混乱しちゃうような複雑な説明が展開されます。難しいこと抜きにしても、これはこれで楽しめる仕掛けなので、まあ、とにかく訪れてください、というわけで
一通りの案内が終わると、そこで自由に。皆さん、名残を惜しむように写真をばしゃばしゃと撮りまくり





ガイドしてくれたお兄さん、シーカヤックが趣味で、海の上から見る精錬所は最高ですよ、…なんでこんな天気の日に仕事してるんだろうって思います…なんて言っていたけれど、そうだろうなあ…。さあ、もう船の時間だ。出なければ…



去り際に見掛けた、これは島にある神社?だろうか

なにやら気になる。精錬所ばかり見てしまって、それ以外を散策することもなかったけれど、島自体も風情のある島のようだ。matsukazutoさんが書かれていたように…
時間の流れが止まった島・犬島に行ってきた - ポンパドール・パラソル:野望編
宝伝の港に向かう船に乗り、島を離れる


また来たい島だなあ、犬島