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2021年7月23日 (金)

地球(テラ)にて

Img_2041オリンピック開会式最後の聖火点火シーンで、私の〈交響曲第2番・地球(テラ)にて〉が使われていた。

1991年に書かれCDも2種類ほど出ている曲なので、テレビ番組や映画のBGMで楽曲が使われる「選曲」と同じ扱いだが、もちろんひと月ほど前に「開会式で使いたい」という許可の申請があり、事務所を通じて了承している。ちなみに生演奏ではなくCD音源(カメラータトウキョウの私の作品集@外山雄三指揮東京フィル)である。

この曲、〈地球(テラ)にて〉という副題が五大陸を繋げるオリンピックっぽいと言えば言えるが、基本は鎮魂曲で、4つの楽章それぞれが・東(中近東~アジア)・北(北方文化圏)・西(西欧キリスト教文化圏)・南(アフリカ)という4つの地域の音の素材によるレクイエムになっている。

冒頭の第1楽章は湾岸戦争の時に書かれた暗く錯綜した鎮魂曲で始まるが、最後のフィナーレは湿っぽくならず明るく賑やかに死者を天国に送る…というアフリカ風の葬送歌。延々と繰り返されるマリンバの音型(ボレロ風)は、死者の名前を延々と読み上げてゆく追悼の儀式のイメージで、南アフリカのアパルトヘイトを描いた映画「遠い夜明け(Cry Freedom)」(1987)にインスパイアされている。そのため当初はゴスペル合唱隊を登場させようかと考えていたほどだが(もちろん予算の関係で即却下された)、何度か弔いの鐘が鳴り渡ったあと、最後は全てを肯定する「アーメン」で終わる。

そのあたりを含んだ上で「今回のオリンピックに相応しい」と思って選んでくれたのなら嬉しい(というより怖い)が、さてどうなのだろう。

ちなみに、これは全く偶然ながら、オリンピック閉会の翌8月9日(月)川崎での「フェスタサマーミューザ」最終コンサートでこの曲の全4楽章版が原田慶太楼指揮東京交響楽団により演奏される。生で演奏されるのは十数年ぶりくらいだが、オリンピックのオープニングと音楽フェスティバルのフィナーレで時を経ずして鳴り渡るという不思議な邂逅はちょっと感慨深い。

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